【日本S】昨年は坂本、今年は岡本… 鷹バッテリーが徹底した“キーマン封じ”の意図は?

ソフトバンク・甲斐拓也(左)と巨人・岡本和真【写真:荒川祐史】

野村克也氏の教え「4番が恥ずかしい打ち取られ方をすると、チーム全体に伝染する」

■ソフトバンク 5-1 巨人(日本シリーズ・21日・京セラドーム)

2年連続でソフトバンクと巨人の顔合わせとなった「SMBC日本シリーズ2020」。21日に京セラドームで行われた第1戦は、ソフトバンクが5-1で先勝した。ヤクルト、日本ハム、阪神、横浜(現DeNA)で21年間も捕手として活躍した野口寿浩氏によると、昨年は坂本勇人内野手を徹底マークして功を奏したソフトバンクのバッテリーが、今年は4番の岡本和真内野手に照準を合わせたことがうかがえたという。

昨年はソフトバンクが巨人を4勝0敗で一蹴。勝因の1つは、レギュラーシーズンで打率.312、40本塁打、94打点と打ちまくりMVPに輝いた坂本を、シリーズ4試合で13打数1安打、打率.077に封じたことだった。

野口氏は「昨年は第1戦から徹底した内角攻めで坂本を潰し、4試合寝かしたままにすることに成功しました。今年はどうするのかと注目しましたが、第1打席の空振り三振では、4球中、内角に来たのは最後のフォークだけ。第2打席は5球中4球が外角で四球。中前打の第3打席も、投げ損ないの逆球はあっても、意図して内角を攻めた球はなかったと思います」と分析した。

代わって今年、徹底的にインコースを攻められたのは、今季31本塁打、97打点で2冠に輝いた岡本である。第1打席は初球の154キロの内角球でバットをへし折られ捕邪飛。第2打席の四球も、8球中7球が内角だった。結局2打数無安打2四球で、快音は聞かれなかった。

「私はヤクルト捕手時代、当時監督の野村克也さんから『4番が恥ずかしい打ち取られ方をすると、チーム全体に伝染する』と教わりました」と野口氏。実際、この日も「1回に内角の速球で岡本のバットをへし折ったことによって、巨人の他の打者にも『俺にも来るのかな』という意識が生まれた。特に(6番DHでスタメン出場した)亀井は、ほとんど内角には来なかったにも関わらず、外の球にも踏み込み切れず、4打数無安打に終わりました」と指摘するのだ。

今季の坂本は、区切りの通算2000安打は達成したが、体調不良の時期もあり、打率.289、19本塁打、65打点にとどまった。代わってソフトバンク側から、巨人で最もナインに影響を与える選手と認識された岡本は、ある意味名誉ともいえる。もちろん、岡本が打たない限り、巨人が昨年のリベンジを果たす可能性は極めて低くなるということだ。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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