「心の復興」も支援 災害ボランティア、活動多彩に

水害に遭った写真を一枚一枚丁寧に洗浄し、乾燥させるボランティア=1日、川崎市高津区

 昨年10月の台風19号で被災した人々の生活再建を後押ししてきた災害ボランティアが、活動の幅を広げている。広範囲に浸水した川崎市内の多摩川流域では、「心の復興」も支えようと水に漬かった思い出の写真を洗浄。土砂災害が相次いだ相模原市を拠点に活動する団体は、メンバーのスキルアップを兼ねた初心者向けの講習を初開催し、裾野の拡大を図っている。

◆写真洗浄 思い出守る 川崎

 表面に付着した汚れや土を丁寧に水で洗い落とし、洗濯ばさみで一枚一枚つるしていく。旅行に結婚式、記念写真。ずらりと干された写真は、画像の一部が失われていても人物の顔など大切な部分が残っている。

 今月1日、多摩川に近い川崎市高津区の会館。20人ほどのボランティアが集まる中、指導役の「ねこの手」代表の大久保卓勇さん(50)が、東日本大震災の津波に漬かった写真の洗浄を手掛けた経験を踏まえ、作業の要点を解説した。「写真をぬれたままにしておくとバクテリアに侵食されてしまうが、乾燥していれば基本的に劣化しない」。乾燥後のアルコール消毒では細部の仕上げに綿棒を使うなど、根気のいる作業だ。

 この日取り組んだ写真は、「ねこの手」とともに洗浄会を主催した「多摩川災害支援チーム」代表の今田るり子さん(39)たちが、近くの被災住宅で床下を清掃した3月に見つけたものだ。「床上90センチぐらいまで浸水した室内は壁紙がめくれ、カビが生えていた」。台風19号から半年近く過ぎていたが、その後コロナ禍が深刻化。思うように現場で活動できないまま、月日がたった。

 だが、作業に協力した写真洗浄ボランティア「課外のあらいぐま」副代表の松浦亜希子さん(50)は強調する。「被災直後は写真どころじゃないという意識があると思うが、水に漬かった写真でも諦めないでほしい」。2018年の西日本豪雨で大きな被害を受けた岡山県倉敷市真備町では「今も写真洗浄のニーズがある」という。だからこそ大切な思い出を守るため、一枚一枚に手間をかける。12月も活動を続ける予定だ。

© 株式会社神奈川新聞社