長崎県五島市で不登校やひきこもりに悩む子どもたちを支える団体「フリースペースつくしんぼ」は29日、市内で「五島子どもサミット」を開催する。パネルディスカッションでは、県立五島南高に通う男子生徒2人をはじめ、かつて不登校を経験した若者らが体験や社会への思いを語る。新たな夢を追い掛ける2人の歩みをたどった。
タツヤ(18)とシンジ(18)=いずれも仮名=は五島南高3年生。それぞれ県央地区で生まれ育った。学校との“距離”を感じたのは、中学生の頃だった。
■居づらい教室
「学校に行く意味が分からなくなって、授業を受けていても違和感しかなかった」。タツヤは中学1年の後半、そう感じ始めた。持病で体調が優れず、物に当たり、家族や友人にきつく接した。学校には「行ったり行かなかったり」。理由は説明できず、やり場のないイライラ感が増した。
苦手だった勉強も、休みがちでさらに遅れた。「なぜ学校に来ない」と思われている気がして、教室には居づらい。夜に友人らと外を出歩いて「羽を伸ばす」ことが唯一の息抜きで、何とか自分を保った。
■負い目感じず
鉛筆画が好きで動物などをよく描いていたシンジ。芸術を学べる学校への進学を考えたが、中学2年の頃に考え抜いた末、その道は諦めた。そんな時に担任教諭から「芸術系に進めば」と言われ、腹が立った。どうして軽々しく言うのか、自分の気持ちを分かっていない-。反発を感じ、教室から足が遠のいた。
3年生まで学校にはあまり行かなかったが、自分で運動をしたり、塾に通ったり。「学校へ行かないことに負い目はなかった」
■個性的な仲間
2018年春。2人は教諭や親の勧めで、学校になじめなかった生徒らを受け入れる五島南高夢トライコースに、離島留学生として進学した。入学前、宿泊体験の際に見た島の自然も決め手に。新たな道に進むきっかけをつかんだ。
シンジの場合、同じ留学生として学校や下宿先での生活を共にする仲間との出会いが、道しるべとなった。こだわりが強く失敗してもわが道を突き進む人、消極的な性格だけど他人に優しい人-。「人間的な弱さも含め、個性や人間性を表現できる方法はないかな」。そう考え、写真という表現にたどり着いた。
卒業後は専門学校に進学し、写真を学ぶ。「嫌いになった」という絵画も、表現力を磨く手段として続けている。「結局は芸術の道に進む。中学の先生に感謝するわけではないけど、軽い気持ちで言ったんじゃないと、今なら思える」
■自分で決める
タツヤは、高校で「挑戦が怖くなくなった」。少人数授業は分かりやすく、体育祭や文化祭、弁論大会などに全力で取り組んだ。2年の冬にはタイで道路整備や教育支援のボランティアを経験。親元を離れた下宿生活も、自立心を養った。
「自分で決められることが多くなった」。そう実感を込めて語るタツヤ。幼い頃からものづくりが好きなこともあり、溶接工を目指して専門学校に進む。
=文中敬称略=
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五島子どもサミットは29日午後1時から、五島市三尾野1丁目の福江総合福祉保健センター。高校生らによるパネルディスカッションの他、不登校の子を育てた母親の講演などもある。当日参加も可能。問い合わせはフリースペースつくしんぼ(電0959.74.0235)へ。
29日に五島子どもサミット 「つくしんぼ」開催
- Published
- 2020/11/22 23:51 (JST)
- Updated
- 2020/11/23 23:51 (JST)
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