長崎・高校生ダム転落死 禁止区域で釣り人の姿 たびたび目撃 注意喚起強化へ

男子高校生が転落して死亡する事故があった中尾ダム。魚釣りや立ち入りを禁止する看板を掲げている=長崎市田中町

 長崎市田中町の中尾ダムで、釣りをしていた男子高校生(17)が転落し、死亡する事故が14日に発生した。現地では釣り人の姿がたびたび目撃されていたが、立ち入りや魚釣りが禁止された区域。以前から危険性を指摘する声が上がっていた。ダムを管理する長崎県は、看板を増やすなどして注意喚起を強化する方針。
 長崎署によると、事故は14日午後5時ごろ発生。亡くなった男子生徒は、男子高校生2人と共に釣りをしていた。足を滑らせて貯水池内に転落したとみられ、通報を受けた警察と消防が捜索。約1時間50分後に引き上げられたが、搬送先の病院で死亡が確認された。死因は水死。当時の水深は約6メートルだった。
 2001年に供用を開始した中尾ダム。水面近くまで行ける所もあり、転落防止のため、貯水池の周囲にはフェンスやガードレールなどを設置してある。事故が起きた現場近くにもガードレールが設けられていた。周辺には「魚釣り禁止」や「立ち入り禁止」の看板も掲げてあった。
 地域住民によると、ブラックバスが釣れるらしく、以前から釣り人がたびたび目撃されていた。親子連れや自転車で乗り付ける中高生の姿もあったという。
 地元の80代男性は「釣りをしに来る人は多い。囲いがあるのに、どこからか中に入っていた」と明かす。60代女性は「事故は本当にかわいそう。でも、忘れたころに、また釣りをしに来る人がいるのでは」と懸念する。自治会関係者は事故後、県にはフェンスの新設を求めたという。「事故が起きなければいいと思ってはいたが…。今後も見かけたら注意をしないといけない」と話した。
 県長崎振興局によると、中尾ダムに人は常駐しておらず、平日は県が委託する業者が巡回。ダムの安全管理が目的だが、釣り人を見かけた場合は注意しているという。県も釣り人が多く訪れていることを把握しており、今回の事故を受け、現場付近などに「釣り禁止」と書いた張り紙をした。今後は看板の数を増やし、あらためて注意喚起する。
 ダムは、そもそも立ち入りを禁止しており、転落を想定していない。コンクリートで保護された部分も多く、落ちてしまった場合は「はい上がることは難しい」(同振興局)。同振興局河川課は「事故を踏まえ、今まで以上に注意喚起したい。事故防止のため、警察への相談も含め、やれることはやりたい」としている。


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