「鬼滅の刃」と「Go To」効果で景況感が大幅改善!7~9月期の実質GDP成長率も大幅な伸びに

2020年7~9月期の実質GDP成長率は前期比年率+21.4%(第1次速報値)と、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で前期比年率▲28.8%と大幅なマイナスになった4~6月期の反動もあり、大幅な伸び率になりました。現行統計(2011年基準)で遡れる1980年4~6月期以降で最大の伸び率になりました。

7~9月期の名目GDP季節調整値は531.1兆円で、4~6月期の504.6兆円からは戻したものの、直近ピークだった2019年7~9月期の557.8兆円と比べると依然26.7兆円低い水準です。

11月10日に発表された10月の景気ウォッチャー調査では、現状判断DIが54.5と景気判断の分岐点である50を上回りました。「良くなった」という回答が多かったことを意味します。


「GO TO」が、2014年1月以来の現状判断DIの背景

現状判断DIの景気判断の分岐点である50超は2018年1月の50.1以来で、54.5というレベルは2014年1月の55.7以来のものです。明るい数字が出たと言えるでしょう。緊急事態宣言が発動されていた4月調査で現状判断DIが7.9と統計開始以来の最低を記録していた状況と比べれば、様変わりです。

景気ウォッチャー調査では4月調査の飲食関連の現状判断DIで▲3.1と初のマイナスという前代未聞の事態が生じました。しかし、10月調査では60.4へと大きく持ち直しました。サービス関連は58.2です。

持ち直しの主因は「GO TO キャンペーン」だと思われます。国土交通省によると、7月の「GO TO トラベル」事業開始から10月末までの宿泊者は速報値で延べ3,976万人。東京発着旅行が追加された10月の宿泊者数は延べ1,458万人で、9月の1,012万人の1.4倍になったということです。

一方、首都圏や北海道など、新型コロナウイルスの感染が再拡大している地域では、「GO TO トラベル」への警戒感が広がっています。

しかし、自殺者数は10月速報値で2,153人、前年同月比+39.9%と、4カ月連続の増加になりました。今年は年間で11年ぶりに前年比増加に転じそうです。もちろん新型コロナウイルス感染症防止対策は大切ですが、コロナのために仕事・生活が立ちいかなくなり経済的理由で自殺に追い込まれる人を減らす対応もしっかり行われなければならないでしょう。

新型コロナウイルスの感染対策をしっかりとりながら、経済を回していくことが肝要な局面だと思われます。

新型コロナウイルス関連・現状判断DIが初の50超に

景気ウォッチャー調査で「GO TOトラベルキャンペーン」の現状判断DIをつくると、9月は66.2(回答者71人)でしたが、10月は70.3(回答者132人)へと上昇しています。「GO TO キャンペーン」全体だと9月は67.1(回答者82人)、10月は68.0(回答者260人)となっています。

ただし、「GO TO キャンペーン」の10月の先行き判断DIは57.6(回答者236人)と50超ですが、感染拡大の兆しが感じられたのか、「GO TO キャンペーン」先行き判断DIは地域別では北海道のみが45.6(回答者17人)と50割れです。今後の動向を注視する必要があるでしょう。

コントレイルら揃うジャパンカップでの売上増期待

身近なデータは、景気水準はまだ低いながら改善傾向続いていることを示唆しています。

JRA(中央競馬会)の今年の売得金・年初からの累計金額の前年比は2月29日から10月4日まで無観客レースとなり、ネット(ごく一部が電話)でしか馬券が購入できなくなったため、5月3日の週までの累計では▲6.2%まで悪化しました。しかし、そこから改善し、11月15日の週までの累計前年比は+2.5%の増加となりました。

コントレイルが史上3頭目の無敗3冠を達成した菊花賞の売得金は前年比+30.4%と大きく伸びました。コントレイルに、市場初の無敗牝馬3冠を達成したデアリングダクト、そして史上初の芝GI8冠を達成したアーモンドアイが揃って参加するファン注目の11月29日ジャパンカップでの売上増も期待されるところです。年間のJRA売得金は9年連続前年比増加が見えてきました。

『鬼滅の刃』の映画大ヒット、コラボ商品など消費に寄与

『鬼滅の刃』が大ブームとなっていることも景気のプラス要因と言えるでしょう。週刊少年ジャンプに今年5月まで連載されていた作品で、時代は大正時代の設定。鬼に家族を殺された少年・竈門炭治郎が、鬼にされた妹を人間に戻すべく、鍛錬し、鬼殺隊として仲間とともに鬼と戦うストーリーです。登場人物の背景もしっかりと描かれています。

昨年放送されたテレビアニメの第一部が人気を集め、主題歌の「紅蓮華」もヒットしました。コロナ禍でステイホーム中に子供たちが読んでいた『鬼滅の刃』を、大人も読んだ家庭も多かったと思われます。

コミックは22巻まで現在出ていますがが、20巻程度だと最初から読むのに適当な長さだったことも、幅広い年代層のファンを作った一因でしょう。

『鬼滅の刃』を原作としたアニメの第一部の続編にあたる、映画「『鬼滅の刃』無限列車編」が10月16日に劇場公開され25日までの10日間の興行収入は107.5億円になりました。公開10日間での100億円突破は、史上最速です。

公開31日目の11月15日までで233.5億円になり、映画の興行収入歴代第5位につけています。映画は原作の7巻と8巻にあたるので、まだまだ続編を作ることができそうです。

新型コロナウイルスの影響で第三次産業活動指数の映画館の前年同月比は5月に▲98.7%まで落ち込み、最新データの9月分でも▲44.9%の2ケタ減少です。しかし『鬼滅の刃』で映画館は息を吹き返したようで、12月14日発表の10月分データが待たれるところです。

関連の子供向け玩具・ゲームだけでなく、コラボ商品が、食品、飲食店、コンビニ、公共交通機関、郵便会社など様々な業界から相次いで販売されています。コラボ商品だけでなく、主人公が着ている羽織と同じ、市松模様の反物などの関連商品が売れているという話もあります。

新型コロナウイルスの感染拡大で低迷する消費の押し上げに寄与していると言えるでしょう。

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