スケルトンリフォームとは?メリット・デメリットから費用や注意点など徹底解説

リフォームにはいろいろな方法がありますが、近年「スケルトンリフォーム」という手法の人気が高まりつつあります。スケルトンリフォームとはどういったリフォーム方法なのか? メリットやデメリット、費用、注意点などを解説していきます。

スケルトンリフォーム(リノベーション)とは

スケルトンリフォームとは、住居の内装・設備など、目に見えるすべてのものを解体して建物の骨組み(躯体)のみを残して行うリフォームです。骨格のみを残したスケルトン状態で行う、大掛かりな工事となります。一戸建てなら柱と梁の木組みの状態まで、マンションならコンクリート躯体の状態まで解体し、新たにリフォームをしていきます。

一般的にフルリフォームというとスケルトンリフォームのことを指すことがほとんどです。元の躯体を活かすために補強をして、ライフスタイルに合った間取りや設備へと変更できる、自由度の高いリフォームとなります。

スケルトンリフォームとリノベーションの違い

スケルトンリフォームと同じような使われ方をする言葉に「リノベーション」があります。両者の分け方に明確な決まりはないものの、たいていは規模が大きく、付加価値をもたらす工事がリノベーションと呼ばれます。

二世帯住宅にしたり、バリアフリー化したりといった工事はリノベーションに含まれる傾向にあります。躯体のみを残して行うような大掛かりな工事となる場合は、結果としてスケルトンリフォームという形になります。スケルトンリフォームは大掛かりなフルリノベーションのひとつの方法であると考えておくといいでしょう。

スケルトンリフォームができない建物もある

間取りの変更や新たな価値を付加できることからスケルトンリフォームは非常に魅力的な手法です。ただし、建物によってはスケルトンリフォームができないケースもあります。日本における木造住宅の70%は在来工法(木造軸組構法)で作られているといわれています。近年増えつつあるツーバイフォー方式(木造枠組壁工法)の場合は、スケルトンリフォームが難しくなります。

柱や梁で骨組みを作る在来工法と違って、ツーバイフォー方式は床・壁・屋根の面でできたボックスを組み合わせた工法となります。ボックスを壊して間取りや機能を変更するのは困難です。二世帯住宅にしたり、階段の位置を変更したりといった大掛かりな工事は行えません。スケルトンリフォームを検討される場合は、自宅がどのような工法で建築された建物なのかを確認しておきましょう。

スケルトンリフォームの種類

スケルトンリフォームにはいくつかの種類があります。実際にどういったものがあるのか、戸建てやマンションではどのような手法が採用されるのかなどを紹介していきます。

内部のみのスケルトンリフォーム

内部のみのスケルトンリフォームは、外壁を残し、建物内部の天井・壁・床をすべて解体して骨格状態にまでするリフォームです。内壁のみとはいえ、耐震補強や間取り変更といった大掛かりなリフォームが可能です。マンションで行うスケルトンリフォームは、内部のみのスケルトンリフォームになります。マンションは専有部分の工事しか認められていないため、共有部分にあたる外壁は解体できません。

外部のスケルトンリフォーム

外壁を解体してリフォームする方法は、外部スケルトンリフォームと呼ばれます。室内の間取り変更や機能・価値の付加は予定していないものの、外周部に断熱材を入れたいときや外断熱にしたいといったケース、または外壁の損傷が激しいため総取り替えしたいといったケースで採用されることがあります。

内部と外部を含めたスケルトンリフォーム

内側と外側、すべてを解体して完全にスケルトン状態にして行うものを内外部スケルトンリフォームと呼びます。スケルトンリフォームのなかでもとくに大掛かりな方法で、老朽化した外壁の刷新や、躯体の老巧化・腐食している部分の取り替え、完全分離型二世帯住宅へのリフォームなど、建物そのものを大きく作り変える方法となります。

間取り変更の自由度が高く、断熱材も十分に取り入れることができ、さらに基礎補強を加えることで新築と同じレベルでリフォームすることが可能です。フルリノベーションということばがぴったりなスケルトンリフォームといえるでしょう。

スケルトンリフォームをするメリット

スケルトンリフォームをすることで、住む人にとって心地いい空間が手に入ります。どのようなメリットがあるのかを詳しく見ていきましょう。

間取りの変更ができる

スケルトンリフォームの大きなメリットは間取り変更ができる点です。出産によって家族が増えたり、子どもが独立して夫婦だけの暮らしになったり、親を呼び寄せて二世帯になったりなど、暮らしの状況はさまざまなタイミングで変化するものです。それぞれのライフステージに合った最適な住居にしたいと考えた場合、スケルトンリフォームによる間取り変更が有効となるでしょう。家族の人数や世帯数、年齢などに応じて快適な暮らしをイメージできる間取り変更が行えます。

給排水管や配線を自分好みに変更できる

スケルトンリフォームなら、給水管や配線を自分好みに変更できます。住居のなかでも早く老巧化するのが給水管や配線です。建物そのものはまだ住めるのに、水回りが故障したり、電気がつきにくくなったりといったトラブルは少なくありません。スケルトンリフォームなら給水管や配線の修繕・交換が可能です。全室無線LANにする、水回りの位置を変更するといったリフォームも行えます。

水回りの設備の位置が変えられる

スケルトンリフォームには間取りを変更できるメリットがあります。部屋をつなげたり形を変えたりなどはもちろん、水回りの設備の位置を変更することも可能です。スケルトンリフォームならば給水管や配線の位置を変更できるため、キッチンはもちろん、トイレや浴室などの場所も自由に変えられます。トイレの増設にも対応可能です。

耐震性を上げられる

スケルトンリフォームなら、建物すべての躯体の状態を確認したうえで最適な耐震補強をすることができます。部分的な耐震補強はスケルトン状態にしなくても行えます。しかし、補強した以外の部分が老巧化している場合もあるため、部分的なリフォームでは見逃してしまう可能性があるでしょう。とくに古い木造住宅では耐震基準を満たしていないケースもあります。部分的な補強だけでは心もとないかもしれません。スケルトンリフォームなら建物に必要な補強はもちろん、最新の耐震補強を施すことができるため、より高いレベルで耐震性をアップさせられます。

断熱材を追加して断熱対策ができる

古い住居の場合は外周に断熱材が入っていないことが少なくありません。内外部スケルトンリフォームをすることで断熱材を追加し、夏は涼しく冬は暖かい家に作り変えられます。建物全体を見て足りない部分に断熱材を追加したら、暮らしが快適になることでしょう。

劣化やカビやすい箇所がわかる

スケルトン状態にすると建物の隠れていた部分があらわになります。壁や床、屋根で隠れていた構造部分を確認でき、重要な場所に劣化やカビが発生していた場合も即座に発見することが可能です。こういった劣化・腐食等は住んでいるだけではなかなか気が付きにくく、部分的なリフォームでも発見しにくいものです。スケルトンリフォームなら、発見と同時に劣化部分の補修・補強を行えます。住居の寿命を延ばし、快適な空間を長く維持できるでしょう。

再建築不可物件を新築同様の住み心地にできる

相続などで手に入れた土地付き物件を快適な住居にするため建て替えを検討している方もいるでしょう。古い物件の場合、特定の条件を満たせないと再建築不可となることがあるため注意してください。具体的には、「幅4m以上の道路に2m以上接した土地」であることを満たせない建物は再建築ができません。

スケルトンリフォームは、あくまでもリフォームのため、再建築とはみなされません。それでいて、内装や設備を一新し、新築と同等レベルの快適な住まいを手に入れることが可能です。また、住みたい地域の新築一戸建てに手が出ない場合も、再建築不可物件をスケルトンリフォームすることで比較的安価に住まいを購入できる可能性があります。事実、近年こうしたパターンでスケルトンリフォームをする方も多く、人気の手法となっています。

スケルトンリフォームのデメリット

スケルトンリフォームには、メリットだけでなくデメリットも存在します。ここでは、覚えておきたい注意点などをご紹介します。

新築と完全に同じ状態にできるわけではない

スケルトンリフォームは躯体のみを残して外部も内部も新しくリフォームできるため、新築同等のレベルにまで快適な空間を生み出せます。しかし、それはあくまでも建物のみの話で、地盤調査や改良などはできないため強度的に新築よりも劣る可能性があります。地盤改良をするのであれば、費用は建て替えとそれほど変わらないかもしれません。また、そもそも地盤全体を改良することは難しく、基礎の補強や建物の耐震補強などといった対処しかできない点も、新築とは違う点といえます。

新築の購入や建て替えよりもコストが高くなる可能性がある

スケルトンリフォームは新築と違い「解体」という作業工程があります。そのため一般的に工期は長くなる傾向にあり、人件費もそれだけかかってきます。建物全体をスケルトン状態にする内外部スケルトンリフォームだと、新築・建て替えよりもコストが高くなってしまう可能性も。また、工期が長くなればなるほど仮住まい用の賃貸費用も必要になります。コスト面も踏まえてどのレベルまでスケルトンリフォームするのか検討していきましょう。

想定外の補強が発生することがある

実際のところ、建物は解体してスケルトンにしてみないと躯体の状態はわかりません。解体の際に壁や屋根に隠れていた重要な柱が腐食していたのを発見した場合、補強・補修が必要になります。また、設計図通りに建築されていないことがわかった場合、大掛かりな補強が必要になることもあります。想定外の補強が入れば工期も長引き、費用もかさんでしまいます。壊すまで何があるかわからないところは、スケルトンリフォームの難しいところです。

スケルトンリフォームに必要な費用の相場

スケルトンリフォームは建物の種類や求めているレベルなどによって必要な費用が変わってきます。ここでは一般的な戸建て・マンションそれぞれのスケルトンリフォームにかかる費用相場を紹介していきます。

戸建てのスケルトンリフォームの費用

戸建てにおけるスケルトンリフォームの相場は坪単価で17万~49万円とされています。価格差があるのは、築年数の違いによってリフォームに必要な作業量が変わってくるためです。築年数の古い建物であれば耐震補強をしっかり行う必要があります。築浅であっても断熱材を大幅に追加したい場合は費用が高くなります。いずれにせよ、スケルトンリフォームは高額の費用がかかります。耐震改修・断熱リフォーム・間取りの変更といった、スケルトン状態にしなければできないことを優先して工事計画を立てましょう。

マンションのスケルトンリフォームの費用

マンションの場合は内部スケルトンリフォームのみとなり、平米単価15万~25万円が費用相場となっています。戸建てと違って耐震補強などの工事はないため、ほかの部分に費用をかけられます。思い切った間取り変更も楽しめるかもしれません。浴室やトイレ、キッチンなどは坪数ではなく設備に費用がかかるという点も覚えておきましょう。

スケルトンリフォームの費用を抑えるためのポイント

優先したい設備を決めてリフォーム会社に相談しよう

スケルトンリフォームは部分的なリフォームと比べると費用が高くなる傾向にあります。それだけに自由度が高く、より快適な暮らしを実現できるリフォームであるともいえます。ここでは、少しでもスケルトンリフォームの費用を抑えるために覚えておきたいポイントを紹介します。

求める設備の優先順位を決める

スケルトンリフォームの費用をなるべく抑えるには求める設備の優先順位を決めおきましょう。断熱性を高めたい、できれば間取りも変えてみたい、余裕があれば窓の位置も……といったように優先させる順番を決めて、リフォーム業者に相談しプランニングしてみてください。

たとえば、キッチンの場合、システムキッチンとアイランド型のオーダーメイドキッチンでは本体価格と工事費をあわせて数百万円の差が出ます。どうしてもオーダーメイドキッチンにしたいというのであればそれを最優先にし、ほかの部分は余裕ができたら工事を行います。

浴室の場合、壁や床に使用する部材や浴槽のグレードを下げることで費用にかなりの差が出ます。浴室に新たな機能を付け足したい場合は、部材を安く抑えるなどの工夫をするといいでしょう。

物件によっては定額制のプランを利用するとお得になる

そこまで費用はかけられないもののスケルトンリフォームで快適で新鮮な住居を手にしたいという場合は、定額制プランを活用してみましょう。設定価格は業者ごとに違いますが、15万円/㎡程度が一般的といわれています。大掛かりな間取り変更や選べる設備、使える部材などの自由度は低いものの、予算の範囲内で好きなようにリフォームを楽しめるというメリットもあります。費用を抑えたい場合はぜひ検討してみてください。

補助金・減税制度を活用する

スケルトンリフォームでは、条件を満たすことで国や自治体のさまざまな補助金制度を利用できます。高齢者がいる家庭での介護・バリアフリー工事であれば、介護保険が適用される可能性があります。工事費用は20万円が上限となります。自己負担額が1~3割のため、最大で18万円まで補助金を受け取るのが可能です。また、リフォームにより固定資産税や所得税の軽減も可能なため、ぜひ補助金制度や減額制度に詳しい業者に相談してみましょう。

複数の業者で相見積もりをとる

スケルトンリフォームをはじめとしたリフォームを検討している方は、複数業者で相見積もりをとるようにしましょう。複数業者から見積もりをもらうことで費用の安い業者を探すことができます。担当者と接するなかで信頼関係が築けるか見極められるのもメリットです。信頼できる業者を選ぶためにも相見積もりをとることをおすすめします。

リフォームローンの利用を検討する

トータルの費用を抑えることはできませんが、リフォームローンを利用すれば一度にまとめて支払うお金を少なくすることができます。まとまった資金がない場合などは検討してみましょう。業者によっては提携している金融機関の紹介はもちろん、資金計画のアドバイスや相談に乗ってくれるところもあります。資金繰りに悩んだら、リフォームローンも含めて相談してみてください。

スケルトンリフォームをするために必要な工期の目安

スケルトンリフォームの工事期間中は仮住まいを用意しなければなりません。どれくらい期間がかかるのか気になる方も多いでしょう。ここではスケルトンリフォームに必要な工期の目安をまとめていきます。

内部のみの場合

一般的な戸建てで内部のみのスケルトンリフォームであれば3カ月程度が工期の目安です。リフォーム業者との打ち合わせや準備期間を含めると半年前後で行うことができるでしょう。

内部・外部両方の場合

内部・外部両方のスケルトンリフォームであれば4~5カ月かかります。解体作業はもちろん、その後のリフォーム作業も内部のみと比べて時間がかかるためです。こちらもリフォーム業者との打ち合わせおよび準備期間が必要となります。トータルでは半年~1年弱を工期の目安にしておくといいでしょう。

スケルトンリフォームを行う際の注意点

トラブルを防ぐためにもリノベーション前に近隣住民への挨拶は必須

スケルトンリフォームを行う際は、覚えておきたい注意点がいくつかあります。以下の点を確認したうえで工事計画を立てましょう。

施工業者は慎重に選ぶ

スケルトンリフォームは部分リフォームよりも大規模なものです。本当に快適な生活空間になるのか、リフォームによって建物の寿命が縮んでしまわないか、費用は本当に妥当なのか、など心配になる面も多いはず。住居をまるごと変化させるため、リフォーム会社は信頼できるところを慎重に選ぶようにしましょう。

まずは希望するリフォーム内容と同様の施工実績がある業者をピックアップします。掲載されている写真などを確認し納得できそうな数社を絞っていってください。地域で長く活動している施工会社もおすすめです。地域密着型であれば近くに実際にリフォームを手掛けた物件があるため、実際の施工例を確認することも可能です。リピーターや口コミなどのチェックもしてみましょう。

また、顧客の希望になるべく添ったプランを提案してくれる業者を選ぶのもポイントです。プロとはいえ、意見を押し付けてくるような業者とは大きな買い物をするのも不安が残ります。不具合対応や定期診断などの保証やアフターサービスも重視して施工業者を選んでみてください。

構造によって施工ができない場合も

スケルトンリフォームは、建物の構造によって施工できない可能性があります。前述の通り、ツーバイフォー工法の物件はスケルトン状態にできません。リフォームする場合、大幅な間取り変更などはほぼ不可能です。部分的な補強などにとどまってしまうことになります。事前にご自宅の構造について確認しておきましょう。

住みながらの施工は難しいため、仮住まい先が必要

スケルトンリフォームは、住みながらの施工はほぼ不可能です。工事期間中は、仮住まいをおさえておく必要があります。もちろん賃貸費用もかかるため、事前に資金計画に入れておくようにしましょう。

騒音が発生しやすいため、近隣のトラブルにも配慮が必要

スケルトンリフォームでは解体作業が入るため、工事中にかなりの騒音が発生することが予想されます。マンションなどの集合住宅であれば管理組合を通してリフォームを行う旨を全住民に伝えられるようにしましょう。戸建てであっても、できれば隣の物件に住む方などには工事をすることを伝えておき、必要があれば粗品なども渡すといいでしょう。

一戸建ての場合は申請が必要になることも

中古物件を購入してそのままスケルトンリフォームをするという場合、金融機関によっては確認申請が必要となるケースがあります。不備があるとローンが組めない場合があるため、間違いのないように申請しましょう。また、増築となる場合は申請が必要になるケースがほとんどです。業者に確認しつつ申請の準備をしておきましょう。

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