形変え披露や交流 コロナ禍、長崎県内催し趣向凝らす 間隔空けて浮立 島民限定で運動会

運動会の日に、時間を短縮し長坂浮立を披露する児童。マウスシールドを着用し、例年より間隔を空けた=佐世保市江迎町

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、長崎県内各地の秋の催しは様変わりした。中止に追い込まれた伝統芸能が多い中、発表の形を変えて演じる場を確保した浮立がある。また保護者だけなど観覧を制限した運動会が相次ぐ中、楽しみにしている地域のお年寄りを迎えた離島もある。感染防止策を講じながら趣向を凝らした地域の姿を追った。

 「イヤサカサイサイ」。15日、佐世保市江迎支所前で、着物などに身を包んだ4~6年生ら計80人の掛け声や笛、太鼓の音が響いた。
 同市の無形民俗文化財「長坂浮立」。例年、市立江迎小の秋の学習発表会「江小まつり」で演じてきたが、今年はコロナ禍でまつりは中止。代替案として運動会の日の午後に披露することが決まった。
 感染防止のため児童らは間隔を空け、マウスシールドを装着。参加する住民の数を絞り、時間も短縮した。それでも無病息災などを願う児童らの掛け声が発せられると、沿道の観衆から惜しみない拍手が送られた。
 児童のまとめ役を務めた6年の大石秀磨君(11)は、短い準備期間で披露できたことを喜びつつ「江小まつりがないのは、やはり寂しい。来年は後輩たちが頑張ってくれるはず」。指導した長坂浮立保存会の松永信義会長は「例年と形は違っても、伝統を絶やさなかったことが何より重い」としみじみ語った。
 離島をはじめ児童生徒が少ない地域では、運動会が住民参加の催しとして楽しみにされている。
 本年度末で閉校予定の新上五島町立浜ノ浦小(全校児童13人)では例年、住民も競技に参加するが、今年は観覧だけ。「密」にならないよう観覧用のテントを三つから七つに増やした。対馬市最南端にある同市立豆酘(つつ)小(全校児童数28人)と豆酘中(全校生徒数23人)は合同の運動会に。午前中の3時間で切り上げ、観覧者は「島内在住の家族」とした。
 人口約300人の五島市久賀島では、市立久賀小中のグラウンドに、児童生徒12人やお年寄りなど島民100人以上の歓声が響いた。
 市久賀島出張所などによると、市内で感染が拡大していないことを条件に、学校や住民組織が開催に向けた話し合いを進めた。例年は島出身者が全国から参加する一大イベント。今回は市内在住者に限り、マスク着用や消毒、検温を徹底。「密」を避けるため、むかで競走や綱引きなどは取りやめた。
 久賀島に暮らす民生委員、小島満さん(67)は「島全域から人が集まるイベントは他になく、少人数で学校生活を送る子どもたちにとっても非常に大きな思い出になる。島民から『やって良かった』との声を聞き、うれしかった」と喜んだ。

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