「希望は子ども2人、中高一貫私立、都内住宅」20代パワーカップルの夢は叶う?

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、24歳、会社員の女性。24歳にして世帯年収が1,000万超えという相談者夫婦。しかし、子どもは2人、中高一貫私立、都内住宅、マイカーなど、高水準のライフスタイルを希望しています。相談者の夢は叶うのでしょうか? FPの菅原直子氏がお答えします。

この春に結婚した24歳・同い年の夫婦です。年齢の割にそこそこ収入がある、と思ってしまうせいか貯金額が甘いな、と日々感じております。今回の相談は今後のライフプランに関してです。

夫婦共々30代前半までに子どもが2人欲しいとは思っているのですが、妻である私は都内出身なこともあり進学に関して自分と同じく私立の中高一貫校をイメージしております。夫もこれには特別反対はしていません。ただ、住宅購入の話題になると6,500万くらいまでのローンなら組める、と考えているようです。また、郊外出身で義父が車関係の仕事だったこともあり、やはりマイカー(中古で300万ほどを想定)がいつかは欲しいとも思っているようです。

駐車場代も高い都内でマンションを買い、車を持ち、子ども2人を私立に入れる、できれば趣味の海外旅行も年に1度は行きたい、これら全てを叶えるのはやはり私達の収入では無理なのでしょうか?

ちなみに結婚式と新婚旅行(いつ行けるのかわからないですが)も予定しており、それぞれ持ち出しが100万ずつを想定しております(挙式のみ両親の援助あり)。

また、住宅購入は援助がない想定で、20代のうちにローンを組みたいと考えております。

とはいえ社会人1年目で同棲、今回のコロナ禍でさらに引っ越しをしてしまい現時点での貯金も少ないです。家を買うために、どれくらい貯金すべきか、またいくらまでのローンなら組めるのか、何を諦めるべきか、ご教授いただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

【相談者プロフィール】

・女性、24歳、会社員、既婚

・子どもの人数:なし(将来2人希望)

・同居家族について:夫(24)はマスコミ勤務で年収、月収(額面)はそれぞれ650万、35万、私はIT関係で480万、30万です。夫は30代前半で1,000万円、40代で1,300万円くらいを想定しております。わたしは出産後もフルタイムで働く人も多い職場でその予定ですが、上がっても550万ほどまでだと考えております。

・住居の形態:賃貸

・毎月の世帯の手取り金額:51万円

・年間の世帯の手取りボーナス額:280万円

・毎月の世帯の支出の目安:44万円

【毎月の支出の内訳】

・住居費:17万2,000円

・食費:3万5,000円

・水道光熱費:1万2,000円

・保険料:2,000円(共済のみ)

・通信費:1万円

・お小遣い:13万円(夫7万、妻6万)

・その他:外食・旅行代3〜8万

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:5〜8万円

・ボーナスからの年間貯蓄額:160万円

・現在の貯蓄総額:50万円

・現在の投資総額:0円

・現在の負債総額:1,800万円


菅原:世帯年収が1,000万円を超えてはいるものの、支出もそれなりに多い相談者。今後の希望を叶えていくために、ライフプランを考えようとしています。シミュレーションをしてみて、生涯を通じて預貯金残高がプラスで推移すればいいのですが、マイナスになるようであれば、何かを諦める必要も出てきます。夫婦にとって大切なモノやコトについて、この機会にしっかり考えていきましょう。

家計は額面ではなく、手取り額で管理する

相談者は収入の情報を「額面」で提供してくれました。会社が払ってくれている金額のことですが、相談者はこの金額をそのまま受け取れるわけではありません。相談者が使えるお金のことを「可処分所得」と言い、これは、社会保険料や所得税・住民税を引かれた残りの金額のことです。いわゆる「手取り」額のことですね。家計管理は、この「手取り」を知るところから始まります。

相談者の場合、年収480万円に対する手取り額は約400万円になります。夫は年収650万円に対して手取りは約530万円。2人を合計すると、年収は1130万円で、手取りは930万円です。その差は年間200万円で、1か月あたりでは17万円となります。決して小さな金額ではありません。

家計を額面で管理していると、使える金額が大きく見えてしまいます。本来使える金額よりも17万円も多く使っていいものと思いこんでいたら大変ですよね。家計管理の収入は、必ず「手取り」額で把握するようにしましょう。

希望の優先順位を考える

将来の希望をすべて入れ込んでシミュレーションしてみると、預貯金の推移はグラフの青い線になります。住宅を購入した年に赤字になる以外は、子どもの私立中高から大学の費用を負担している時期も預貯金は右肩上がりなので、大きな問題は無さそうに見えます。

けれど、「現在の負債総額」1800万円の返済をすることになると、話はまったく異なります。

毎月の支出の内訳に、借金の返済は計上されていませんでしたので、1800万円を30年間3%で返済すると仮定して試算してみました。グラフの赤い線が該当します。

預貯金は住宅購入時期から7年間にわたってマイナスで、マイナスを脱却しても預貯金残高が1,000万円に満たない期間が長く続きます。保険は共済だけなので、病気やケガで収入が途絶えるようなことがあれば、預貯金はあっという間に底をついてしまうでしょう。

ローンを組めるから6,500万円の住宅購入を検討するのではなく、すでにある負債をいかに早く返済してしまうかが先決です。通常、借金の金利は預貯金よりも高く設定されているので、預貯金を増やすよりも借金を返済する方が家計に貢献するからです。

借金の返済を第一に考えつつ、その他の希望についての優先順位は夫婦いっしょに考えていきます。

教育費のすり合わせを

相談者と夫は、欲しい子どもの人数は一致していますが、かける教育費についてはどうなのでしょう。夫は「特別」反対はしていないとのことですが、相談者が希望している私立の中高一貫校に必要な教育費を知っても反対しないのでしょうか。小学校や中学校を受験する人はほんの一握りです。費用について情報を持ち合わせていなかったり、イメージできない人は多いものです。いくらかかるのか情報を共有したうえで、それでも夫が私立中高一貫校に反対しないかどうか、具体的に話をしてみることが必要です。

住宅や車、旅行の優先順位も夫婦ですり合わせを

住宅についても同様です。購入ありきではなく、わが家にとって賃貸と購入のどちらがいいのかをまず考えてみましょう。夫婦の仕事に都合のいい場所と、子どもの将来の中高一貫校への通学に便利のいい場所が同じとは限りません。購入するにしても、家族の都合とローン返済期間の兼ね合いで、購入時期の検討をすることになるでしょう。

車や海外旅行の優先度は、住宅や子どもの教育費と比べて高いですか? それとも低いのでしょうか? 結婚式をあげたら、住宅購入が難しくなるということであれば、結婚式はあきらめますか? 夢や希望は、かなえられるものなら、すべて実現したいものです。ただ、それらの多くは出せるお金の範囲で実行することになります。収入を超える支出はできないのが大原則ですから、絶対にお金を出すものと、お金が足りないならあきらめるものとの区別をつけなくてはならないのです。

夫婦それぞれの希望が異なる場合、どちらもかなえられる収入があれば、両方手に入れる選択は可能です。けれど、ひとつだけを選択しなくてはならないものもあります。子どもの学校などですね。夫婦で折り合いをつけながら、選んでいきましょう。

社内で産後の就労事情をリサーチして今から対策を

なお、相談者は出産後もフルタイムの仕事を続けるお考えです。職場は産後もフルタイムで働く人が多いとのことなので、先輩たちの実情をぜひ聞いてみてください。妊娠・出産は病気ではないものの、体調が思わしくない時期があるなどで思うように働けないこともあります。また、子どもの体調や保育園に入れないなどの事情によっては仕事の継続が難しくなることもあります。まわりの援助を受けたり、社会資源を上手に利用したりして仕事と子育ての両立を夫婦ではかってくださいね。

その上で、いったん仕事から離れる選択をする場合には、当然収入が減るのですから、減った収入に見合う暮らし向きを立てられるよう、収入がいくら減ったら支出の何をどのように減らすのかということも、夫婦で話しておくといいでしょう。

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