2020年前半に地球を離れたミニムーン「2020 CD3」が天然の天体であることを確認

ハワイ・マウナケア山の「ジェミニ北望遠鏡」が撮影した「2020 CD3」(中央)。高速で移動する2020 CD3の動きに合わせて望遠鏡を動かしつつ三色のフィルターを切り替えながら撮影したため、背景の星々はカラフルな点線として写っている(Credit: International Gemini Observatory/NOIRLab/NSF/AURA/G. Fedorets)

クイーンズ大学ベルファストのGrigori Fedorets氏らの研究グループは、2020年春に地球を離れていった「ミニムーン(英:minimoon)」こと小惑星「2020 CD3」の観測データを分析したところ、2020 CD3がスペースデブリ(宇宙ゴミ)のような人工物ではなく天然の天体であることを示す結果が得られたとする研究成果を発表しました。

もともとミニムーンは地球の公転軌道に近い軌道を描きながら太陽を公転している小惑星で、地球に接近したことで一時的に地球を周回するようになったと考えられています。最初に見つかったミニムーンは小惑星「2006 RH120」で、発見された2006年9月から翌2007年6月まで地球を周回していたといいます。

ただし、ミニムーンと同じような軌道を描く天体のなかには、地球から打ち上げられた後に重力を振り切っていったロケットの一部のように、人類の活動に由来するものもあります。たとえば2002年9月に見つかった「J002E3」は、発見後の観測と分析によって「アポロ12号」を打ち上げた「サターンV」ロケットの一部(第3段のS-IVB)だとされています。

また、2020年9月に発見された小惑星「2020 SO」は2020年11月から2021年5月頃にかけて一時的に地球を周回するとみられていますが、過去にさかのぼって軌道を分析した結果から、1966年9月に実施されたNASAの月探査機「サーベイヤー2号」の打ち上げに用いられた「アトラス・セントール」ロケットの一部(セントール上段ステージ)である可能性が指摘されています。

Fedorets氏らはアメリカのローウェル天文台にある口径4.3mの「ローウェルディスカバリー望遠鏡」(旧称ディスカバリーチャンネル望遠鏡)を使い、2020年5月中旬まで2020 CD3の追跡観測を実施。観測データを分析した結果、2020 CD3はS型もしくはV型の小惑星であり、人工物ではないとしています。研究内容をまとめた論文は11月23日付でThe Astronomical Journalに掲載されています。

発表によると、2020 CD3の直径は1~1.5mで、このサイズの小惑星としては予想よりも長い約3分の周期で自転していることがわかったといいます。arXivで公開されている同論文のプレプリントによると、2020 CD3は少なくとも2017年9月15日以降地球を11周したとみられており、地球への最接近は2019年4月4日で、地心距離(※)約1万3000kmまで近づいたと推定されています。

※…地球の中心から天体の中心(この場合は火星の中心)までの距離

また発表では、地球に比較的近くて探査しやすい天体であるミニムーンは、その起源や小惑星・彗星との関連性を理解する上での科学的な価値があるだけでなく、将来は資源採掘を目的とした商業的な価値も重視されるようになるだろうとしています。Fedorets氏は、2023年の運用開始を目指してチリのセロ・パチョンで建設が進められているヴェラ・ルービン天文台での観測が始まることで、多数のミニムーンが見つかることが期待されるとコメントしています。

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Image Credit: International Gemini Observatory/NOIRLab/NSF/AURA/G. Fedorets
Source: ローウェル天文台
文/松村武宏

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