盤石!人口減少エリア主戦場なのに成長続けるヨークベニマルの強さの正体!

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業界5位の売上規模コロナ特需で業績は好調

食品スーパー(SM)業界に少しでも関わりのある人なら、「東北の雄」「SMのお手本的企業」と聞けば、多くの人がヨークベニマル(福島県/真船幸夫社長)のことを思い浮かべるのではないだろうか。

2020年11月現在、ヨークベニマルは福島、宮城、山形、栃木、茨城の5県に234店舗(実質稼働は232店舗)を展開する。20年2月期の営業収益は4468億円。SM国内最大手のライフコーポレーション(大阪府/岩崎高治社長)、関東SM連合のユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス(東京都/藤田元宏社長)、昨年の経営統合で売上規模が急拡大したマックスバリュ西日本(広島県/平尾健一社長)、北海道~東北のSM連邦アークス(北海道/横山清社長)に続いて業界第5位のポジションにある。

業績は堅調だ(図表❶)。営業利益は19年2月期に減益となり、ピークだった18年2月期の水準には戻っていないものの、営業収益は安定的に成長しており、20年2月期決算では増収・営業増益を達成。21年2月期に入ってからは、多くのSM企業と同様に“コロナ特需”が追い風となり、既存店売上高は20年2月以降、9カ月連続で前年実績を上回っている(図表❷)。10月に発表された21年2月期上半期決算でも増収・大幅営業増益を果たし、通期では営業収益4700億円(対前期比5.2%増)、営業利益160億円(同22.1%増)と、営業収益・営業利益ともに過去最高を更新する見通しだ。

セブン&アイグループのSM戦略のカギを握る!

1973年にイトーヨーカ堂(東京都/三枝富博社長)と業務提携し、社名を紅丸商事から現社名に変更して以来、ヨークベニマルはセブン&アイ・ホールディングス(東京都/井阪隆一社長:以下、セブン&アイ)グループに属してきた。2006年には、セブン&アイ誕生に合わせ、完全子会社となった。いまやセブン&アイグループの看板ブランドとなっている「セブンプレミアム」は、ヨークベニマル現会長の大髙善興氏の発言がきっかけとなりプロジェクトがスタートしたのは業界内では有名な話だ。

1973年にイトーヨーカ堂と業務提携し、社名を紅丸商事から現社名に変更して以来、ヨークベニマルはセブン&アイ・ホールディングスグループに属してきた。

ヨークベニマルは、セブン&アイグループが現在推し進める首都圏SM戦略のカギを握るともいわれている。20年6月に誕生したセブン&アイのSM事業会社、ヨーク(東京都)の社長を務める大竹正人氏は、ヨークベニマル出身。現在、ヨークが既存店からの転換を進めている新屋号「ヨークフーズ」の店舗では、ヨークベニマル総菜部門の開発・運営を担うライフフーズ(福島県/松崎久美社長)のアウトパック総菜を導入するなど、“ベニマル流”の取り組みが随所に見られる。

ヨークベニマルは、セブン&アイグループの「食」にかかわる戦略の中心的役割を担っているといっていい。

小売チェーンの“王道”

なぜヨークベニマルの店は強いといわれるのだろうか。

ヨークベニマルの店舗は、売場面積600~750坪ほどの標準化されたフォーマットで、店舗年齢によって多少の違いはあるものの、似たようなつくりの店が多い。都市部でみられるような、派手な売場演出が凝らされた店はほとんどない。

価格政策はどうだろうか。ヨークベニマルの店頭に並ぶ商品は、たしかに値ごろ感はあるものの、ほかの競合店と比べて極端に安いわけではない。大髙会長も折に触れて「価格競争にはついていかない」と発言しており、安さを前面に打ち出す戦略には消極的だ。

では、ヨークベニマルの強さは一体どこにあるのか。その1つが、地域の味を重視する姿勢だ。売場が標準化されているため、ひと目見ただけではわかりづらいが、ヨークベニマルの店舗では地域で好まれていると思われる商品が売場の随所に差し込まれている。今やSMでは一般的となった地場野菜コーナーも圧巻の品揃えだ。

「現場力」の高さにも注目したい。本特集の調査にあたって、何度もヨークベニマルの店舗に足を運んだが、どの店も開店時から売場には商品が整然と並んでおり、催事の切り替えも迅速に行われていた。こうした従業員のオペレーション精度の高さが現場力であり、優れた教育体制があることがうかがえる。

ヨークベニマルの強さを語るうえでは、総菜も欠かせない。100%子会社のライフフーズが運営する総菜売場・インストアベーカリーは、お客のニーズに応える魅力的な商品を揃えており、かつ利益の源泉にもなっている。

価格政策についても、安売り志向ではないものの、売れ筋は抜け目なく価格訴求する絶妙な価格政策がとられていることが本誌の独自調査で明らかになっている。

このようにヨークベニマルの強さを支えているのは、奇策ではなく、小売チェーンの“王道”ともいえる数々の取り組みであることが、本特集の調査から見えてきた。野越え山越えはるばるお店においで下さるお客さまに誠実の限りを尽くせ──。

ヨークベニマルでは、企業理念である「野越え山越え」の精神が現場レベルまで落とし込まれている。「店に来ていただいたお客さまに1つでも多くの商品を買ってもらう」という発想に基づいた店づくり、売場づくりこそ、ヨークベニマルが人口減少が急速に進む東北地方を主戦場としながらも成長を続けられる要因といっていい。

肥沃なマーケットを求めて“南下政策”が進行中!?

さて、これまではルーラルなエリアでのドミナント構築に力を入れてきたヨークベニマルだが、近年は茨城や栃木などの北関東エリア、仙台市の中心部など、人口が密集するエリアに進出する動きを見せている。

ヨークベニマルはここ数年、年間7~10店舗のペースでコンスタントに出店してきたが、21年2月期は新規出店よりも既存店の活性化に力を入れる方針を打ち出しており、新規出店は5店舗にとどまる見通しだ。

21年2月期に新規出店した店舗を見ると、3月に「日立滑川店」(茨城県日立市)、11月には福島県郡山市の中心街に「郡山島店」をオープンしている。来年初頭には「つくばさくらの杜店」(茨城県つくば市)の出店を計画しており、栃木県宇都宮市内に新たな都市型小型店を出店するという噂もある。これらはいずれもヨークベニマルの既存商圏と比較すると人口が多いエリアへの出店であり、同社が肥沃なマーケットを求めて“南下”している様子がうかがえる。

本特集でもレポートしているが、遡ること2年前、ヨークベニマルは標準の約半分となる売場面積約300坪の小型フォーマットの実験店を仙台市街からほど近い場所に出店している。小型フォーマットはヨークベニマルの“南下政策”のカギとなるか。布石はすでに打たれている。

本特集では、「店・売場づくり」「価格政策」「商品」とさまざまな角度からヨークベニマルの強さの秘密に迫っている。ヨークベニマルの強さを研究し、学ぶことで、年を追うごとに人口減少・少子高齢化が顕著になる日本で、「地域でお客の支持を獲得し続けるために何をすべきか」という難問の答えが浮かび上がってくるはずだ。

ヨークベニマル会社概要

※店舗数は2020年11月現在、休業中の2店舗含む

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