新型コロナ 冬の流行期に向け投資妙味ある検査・試薬関連の有望銘柄3社

10月2日、厚生労働省から「新型コロナウイルス感染症病原体検査の指針」(以下、新型コロナ感染症検査ガイドライン)が発表され、今後の検査体制と検査方法の方向性が示されました。

冬の流行拡大に備えた検査体制強化を目指す内容で、今後は検査センターと試薬メーカーの役割が増す見通しです。当経済研究所では国内の新型コロナウイルスに関する遺伝子検査は12月に86万検査(直近ピークの8月は73万検査)に達するとみています。


検査体制はどう変わるか?

このガイドラインにより、検査の流れは従来の行政主導から各医療機関主導へと変更される見通しです。従来は保健所に設置された「帰国者・接触者電話相談センター」を介して患者と医療機関をつなげる仕組みでしたが、今後は患者が直接かかりつけ医など地域の医療機関に問い合わせる仕組みに変更されます。

検査の流れが変更となったことにより、国内の診療・検査は従来の大病院集中型から各自治体指定の「診療・検査医療機関(仮称)」への地域分散型に移行する見通しです。発熱患者はまずはかかりつけ医など地域の身近な医療機関に電話相談し、相談する医療機関に迷う場合は「受診・相談センター」に相談することになります。

新型コロナウイルス感染症検査では、発生当初は地方衛生研究所・保健所が大部分を担っていましたが、7月時点では検査センターの取り扱いシェアが50%以上まで高まっています。検査センターでは、様々な医療機関から大量の検体を預かり、効率的な処理が可能となるため、今後も高水準で推移する見通しです。

地域の診療所で検査が可能に

また、新型コロナ感染症検査ガイドラインにより、今後は地域の診療所が集荷する検体量が増加し、自前で検査できない診療所から検査センターへの依頼が増加することが見込まれます。こうした中で売上高の約半分が診療所向けとなっているビー・エム・エルのサービス拡大につながると考えております。

さらに、今後は全体の検査の中で医療機関での取り扱いシェアが拡大するとみています。地域の診療所のなかでも濃厚接触者を含む発熱患者を積極的に受け入れる医療機関に関しては、自前の検査装置・試薬を導入することが予想されます。

当経済研究所では、医療現場での新型コロナウイルス感染症検査の増加が見込まれる中で栄研化学のLAMP法による遺伝子検査装置・試薬の販売増を予想しています。抗原検査は1時間あたりの処理能力が高い一方で、感度の面では遺伝子検査のほうが優れているため、遺伝子検査が第1選択肢になるとみています。

遺伝子検査ではベックマン・コールターやロシュ・ダイアグノスティックスが大量処理に向いていますが、LAMP法は装置の価格が低く、まとめて処理できる点で中規模以上の病院向けにバランスの良い構成となっています。

新型コロナウイルス関連での収益貢献が期待される3社に投資妙味

こうしたなかで当経済研究所では、新型コロナウイルス関連での売上高構成比が比較的高い、H.U.グループホールディングス(4544)と栄研化学(4549)、ビー・エム・エル(4694)の3社に注目しています。3社の同売上高構成比がそれぞれ10%強と推定しています。

H.U.グループホールディングスに関しては、受託臨床検査事業におけるPCR検査受託と空港検疫所における包括的な検査サポート、臨床検査薬事業における国内外での抗原検査薬・装置(迅速キットと高感度検査システム)の販売増が見込まれます。

栄研化学に関してはLAMP法の新型コロナウイルス検査システムを中心とした遺伝子検査装置・試薬の販売増が主に収益に寄与すると考えています。

ビー・エム・エルに関しては全国各地での医療機関のほか、同社が得意とする診療所を中心とした新型コロナウイルス感染症検査が全体の収益を押し上げるとみています。

<文:企業調査部 吉田正夫>

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