【日本S】鷹ムーア、圧巻の無安打投球も驚きなし? 工藤監督も認める剛腕「難しいだろう、と」

ソフトバンクのマット・ムーア【写真:藤浦一都】

「左であこまで力のあるボールを投げる投手はそうはいない」

■ソフトバンク 4-0 巨人(日本シリーズ・24日・PayPayドーム)

ソフトバンクが3連勝で4年連続の日本一に王手をかけた。24日に本拠地PayPayドームで行われた「SMBC日本シリーズ2020」第3戦。3回に中村晃の2ランで3試合連続で先制すると、先発のムーアが7回まで巨人打線を無安打に封じる圧巻の投球。守護神の森が9回2死から安打を許して史上2度目の継投ノーヒットノーランこそ逃したが、完勝で4連覇にあと1勝とした。

助っ人左腕の投球は圧巻の一言だった。初回、先頭の吉川尚の遊ゴロを牧原が悪送球。ボールは一塁カメラマン席へと飛び込み、いきなり無死二塁のピンチを背負った。だが、続く松原のバントは捕手の甲斐が出足よく捌き、三塁への進塁を阻止(記録は捕ゴロ)。ムーアが坂本を空振り三振、岡本を遊ゴロに打ち取って、流れが変わりかねないピンチを無失点で凌いだ。

この窮地を乗り越えるとムーアは波に乗った。2回はウィーラーに四球を与えたものの、亀井を二ゴロ併殺打に。2つの四球、自身のエラーなどで走者こそ背負ったものの、1本の安打も許さないまま、7回を投げ切った。最速は154キロ。強烈な真っ直ぐに鋭く曲がるカーブ、チェンジアップを交えて巨人打線を完璧にねじ伏せた。

7回無安打無失点。日本シリーズ史上初となるノーヒットノーランは、93球で降板したため、達成はならなかったが、強烈なインパクトを残す投球だった。ただ、実際のところ、この好投は、日頃からソフトバンクを見ている者にとっては、さほど驚きではなかった。

この日の試合前、工藤公康監督は「バッターの手元で強いボールを投げる投手。左であこまで力のあるボールを投げる投手はそうはいないと思う」と語っていた。ムーアは左腕でありながら、150キロ台半ばの真っ直ぐを投げる。

「彼のストレートってホームベースで速いので、なかなか難しいだろうと思っていた」

1戦目に先発した千賀や2戦目の石川と遜色ない、いやそれ以上かもしれない“強いストレート”を投げる。それほどの投手が今のセ・リーグにいるだろうか。ムーアが巨人打線を抑え込むことはある程度、予想の範囲内だった。

このシリーズで、巨人の選手たちはソフトバンクの投手陣が投げる150キロ超の力強い真っ直ぐに完全に力負けしていた。そこにチームでも屈指のムーアが先発。この日も無安打こそ逃れたが、わずか1安打。この3試合で計10安打しか打てておらず、シリーズのチーム打率はわずか.112となっている。

試合後、工藤監督は「今日は良かったなと思います。彼のストレートってホームベースで速いので、なかなか難しいだろうと思っていた。いい時のムーアだったら、と思っていたので、その通りのピッチングをしてくれた。凄かった、素晴らしいというより凄かった」と目を細める。なかなか難しいだろう――。まさに、その思惑の通りだった。

3連勝で4年連続日本一へと王手をかけたソフトバンク。一気に頂点へと駆け上がるか。第4戦は昨季も日本一を決めた試合で先発したベテランの和田毅が先発マウンドに上がる。(Full-Count編集部)

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