長崎歴文博15周年シンポ アクティブに果敢な挑戦を 「バーチャル総合博物館」提案も

 長崎市立山1丁目の長崎歴史文化博物館(水嶋英治館長)で14日開かれた開館15周年記念講演・シンポジウム。2005年の開館から15年となった同館、長崎県美術館(小坂智子館長)、九州国立博物館(島谷弘幸館長)の館長や、長崎歴文博と県美術館の開館に県職員として関わった藤泉長崎自動車監査役が登壇。講演、パネル討議で、各館の現状や新型コロナウイルス禍を踏まえた館の在り方などについて考えた。

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 パネル討議では、水嶋館長を進行役に、美術館や博物館の運営や今後の展望などについて意見を交わした。要約して紹介する。

 水嶋氏 国、県の文化政策、文化行政における博物館、美術館の位置付けをどのように捉えているか。
 島谷氏 国が非常に関心を持って美術館・博物館に目を向けているというのが現状。昨年、国の文化審議会の中に博物館部会ができた。国が文化行政を観光と併せてやっていこうという施策の一つの柱であると考えている。プレッシャーもあるが、好機を生かして前に進んでいきたい。
 小坂氏 県の総合計画チャレンジ2020に「交流を生み出し活力を取り込む」という戦略がある。県美術館はその拠点施設として、県の文化振興や交流人口の拡大に寄与するという役割がある。文化政策、文化行政に関わることを、県と意見交換しながら進めていくことが大事かなと思う。
 水嶋氏 県美術館・長崎歴文博の当初の構想、計画に対して、開館後の15年間をどのように評価しているか。
 藤氏 細かいデータを基にしているわけではないが、経済をはじめ地域への波及効果もかなりあり、全国の地方の美術館・博物館の中では大変注目されている両館。館運営のマンネリ化やガラパゴス化の可能性もあるので、常に自己反省しながら政策に反映することが大事。企画展、広報など近年は少しおとなしくなってきたなという感じがしている。もっとアクティブに果敢な挑戦があってもいい。
 水嶋氏 資料収集、コレクション形成について。
 小坂氏 収蔵資料があって初めて研究、公開、展示に連環していく。歩みを止めることなく、美術館のよって立つ所としてコレクションを継続的につくり上げていくことがとても大事。
 島谷氏 いくらでも理想は言えるが、あくまで「設置者」と「使命」、その中でコレクションを増やしていかなければならない。新鮮なかたちで新たな資料を発掘し、それを利用者に提供する。県民国民を超えて、グローバルな世界の宝であるという認識でやっていかなければならない。
 水嶋氏 美術館・博物館の未来とは。
 藤氏 日本はデジタル化が一段と進む。新しい政策として、県内の博物館とか美術館、水族館、動物園などを横断的にまとめ上げた長崎ならではの「バーチャル総合博物館」というようなものができるのではないか。県全体で全国、世界に売り込めるし、各施設も注目され生き生きとしてくる。これまで県民市民に親しまれてきた両館が、さらににぎわい、チャレンジする美術館・博物館になっていくことを県民の一人として強く求めていきたい。

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