1人1台パソコン「GIGAスクール構想」 端末配備を前に教員研修

真新しい端末を前に研修を受ける教員ら=諫早市、たらみ公民館

 小中学校の児童生徒に1人1台のパソコン端末を整備する国の「GIGAスクール構想」導入に向け、長崎県内自治体で準備が本格化している。県内での端末配備は年明け以降になる予定で、各市町教委は担当教員向けのパソコン研修会を始めた。ただ、現物が配備されていない状態で手探りの研修には不安と焦りの声もある。県教育センターは先進校への視察を重ね、効果的な運用方法を研修計画に反映させていく方針だ。

◆まず慣れる

 諫早市教委は20日、多良見町で、市立小中学校の情報通信技術(ICT)担当教員約40人を対象にしたパソコン研修会を実施。参加者の前には先行導入された真新しい端末が並んだ。
 一人一人に合わせた教育や創造性を育む学びなどにつなげる同構想では当初、2023年度までに全国の小中学校にパソコン端末の配備やインターネット環境を整える計画だった。しかし、新型コロナウイルスの影響で休校が相次ぎ、政府は急きょ目標を大幅に前倒し。本年度中に端末整備を完了できるように関連予算を追加計上した。
 同市は本年度中に児童生徒用に約1万2千台の端末を一気に導入する。来年度からの本格スタートを前に担当教員に慣れてもらおうと、システム開発会社が提供するサポートプログラムを活用。このほか、各校で2、3人のICT担当教員を育成し、担当教員を通じて全教員へ活用法を周知、指導していく方針だ。
 研修会に参加した市立真城中のICT担当、納富真司教諭(42)は「しっかり研修を積んで、生徒が楽しく学べる環境をつくっていきたい」と意気込んだ。一方、市教委担当者は「全ての教員が使いこなすには時間もかかる。急ピッチだが、端末配備を待ってはいられない」と焦りを隠さない。他の市町教委も同様のサポートプログラムの導入や、民間のICT支援員配置など、それぞれが現場教員の研修やサポート体制の構築を進めている。

◆道具の一つ

 10月下旬、県教育センターの担当者4人が、佐賀県武雄市の県立武雄青陵中を視察。同校は11年度に国のフューチャースクール推進校に選ばれ、いち早く「1人1台」の環境を整えた。視察ではパソコン端末を使った英語の授業を見学。生徒は端末を手に校内に隠された宝探しに挑戦し、会話や指示は英語を使うのがルール。校内を探索する生徒に向けて、教室にいる生徒は、覚えている単語を必死でつなぎながら、ヒントや指示を伝えた。
 授業後の意見交換で担当教諭は「パソコンはあくまでツール。宝探しといった遊びを加えることで、生徒が自発的に英語で話すようになった」と狙いを語る。他にも英語の発音を確認したり、数学で図形問題を立体的に表示したりする際に活用しているという。
 同校の香田信校長は「ただ生徒にパソコンを触れさせるのではなく、なぜパソコンを使うのかという意図をきちんと伝えることが大切。有効なツールだが、情報モラルの教育も今以上に必要になってくる」と指摘した。

パソコン端末を手に校内で「宝探し」をする生徒=佐賀県、武雄青陵中

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