「共に戦い 栄光を」 V長崎・手倉森監督 長崎県民にメッセージ 逆転昇格へ

選手たちを鼓舞するV長崎の手倉森監督。逆転昇格に向けて、県民の強力な後押しを求めている=諫早市、トランスコスモススタジアム長崎

 サッカーJ2のV・ファーレン長崎が、現在3位でJ1昇格争いの佳境を迎えている。前節の結果により、昇格圏の上位2チームに手が届く位置まで接近。25日の試合結果次第で2位に浮上する可能性も出てきた。こうした中、チームを率いる手倉森誠監督(53)から長崎新聞に「長崎の人たちに伝えたいことがある」と取材依頼が寄せられた。残り7試合。指揮官から長崎県民へのメッセージをつづる。

 必要な負けだった

 2試合前の琉球戦。5度目の5連戦で今季初の5連勝が懸かっていました。その前の岡山戦で5-0と大勝していたこともあって「いけいけムードでやろう」と送り出しましたが、それが仇(あだ)になって土をつけられてしまいました。サポーターを落胆させてしまいました。
 だけど、そのおかげで「最後の最後まで厳しく戦う覚悟を持たなければいけない」と踏ん切りがつきました。目の前で起こることにしっかり対応すること、積み上げてきたものを信じて手も気も抜かずプレーすること。凡事徹底を突き詰めたからこそ、次の千葉戦で難しい試合をものにできました(1-0)。昇格争いの瀬戸際にいる中、これからもこういう手堅い戦い方が大事になると確認できた意味では、琉球戦は必要な負けだった。巻き返す余地は、まだあります。

 カギを握る最終節

 追い掛ける立場の自分たちは1試合も落としたくない状況。必然的に、今季最多の「4連勝」を超える結果が求められます。残り7戦の対戦カードを見てみると、1巡目に敗れたり引き分けた相手が多いんですが、そこはプラスに捉えています。手を焼いた相手の方が気が引き締まって、いい準備につながる。
 注目してほしいのは、最終節に首位徳島と2位福岡の直接対決を控えている点です。V長崎はたとえ最終節までに順位を上げられなくても、勝ち点差1まで縮められていれば何かを起こせる。すべて用意された何かがあるのではないかなと感じています。自分たちが勝つことだけに集中していれば最後の最後、ひっくり返せると信じてやるだけです。
 「歴史は繰り返される」じゃないけれど、V長崎が初めてJ1昇格を決めた2017年は最後に10勝3分けの“まくり昇格”という形だった。もう一度、しびれるシチュエーションに持っていきたいですね。

 今こそ「一体感」を

 11年、私が仙台を率いていた際に東日本大震災が起きてしまいました。生活もままならず本当に危機的な状況でした。その中でサッカーで地域の希望の光になりたいと思ったとき、周りもそれを望んでくれた。だからこそ、代表選手もいないチームがJ1で優勝争いをするまで躍進しました(最終的に4位、翌年2位)。V長崎が初昇格したときも、一丸になって逆境を力に変える強さがありました。
 何が言いたいかというと、地域の後押しがあるかないかはものすごく重要な問題なんです。もしかしたら、V長崎は残り7試合も苦しんでもがくような場面があるかもしれない。それでも、最後の最後までしっかりと戦い抜いて最終的にJ1に上がりたいと思っている。県民、サポーターもどうか「太いメンタル」を持ってほしいんです。一緒に戦い、苦しみ抜いた先に栄光を勝ち取って、そして絆を強められたらうれしい。
 改めて、今年のV長崎の強さを言い表すならば「一体感」です。コロナ禍でサッカーをやらせてもらっている感謝の気持ち、苦境でも戦い続けるたくましさ。そのような中に身を置いて活動してくれるグループです。だからこそ、最後に神様はほほ笑んでくれると確信しています。一体感を持つチームが、クラブと地域を一体にさせてくれるはず。長崎に大きなクリスマスプレゼントを届けてみせます。
 残り7試合、熱い応援をよろしくお願いします。

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