【近大マグロにも5G】近畿大学、NTTグループとスマートキャンパス構築で連携

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近畿大学(大阪府東大阪市)と日本電信電話株式会社(以下、NTT)、NTTドコモ(以下、ドコモ)、西日本電信電話(以下、NTT西日本)、NTTデータの5者は、24日共同で会見を開き、第5世代移動通信システム(5G)などを活用したスマートシティ・スマートキャンパスの連携協定を結んだと発表した。

コロナ禍で大学キャンパスのあり方も大きく変わる中、近畿大学は改革へと舵を切った。NTTグループと共に進みはじめた取り組みの全体像とは?会見で両者が語った内容を見ていきたい。

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左上:NTT 代表取締役副社長 副社長執行役員 澁谷 直樹 氏

右上:近畿大学 学長 細井 美彦 氏

左下:NTTドコモ 常務執行役員 法人ビジネス本部長 坪内 恒治 氏

中下:NTT西日本 代表取締役副社長 ビジネス営業本部長 上原 一郎 氏

右下:NTTデータ 執行役員 社会基盤ソリューション事業本部長 福西 克文 氏

■変わる大学キャンパス。「どう生き残るか」

近畿大学は、大学だけで3万人を超える学生を抱えており、大学院や附属の中学・高校なども含めると5万人を超え、全国でも有数の規模を誇る(数字はいずれも今年5月現在のもの)。さらに、14学部48学科、東大阪をはじめ大阪狭山・奈良・和歌山・広島・福岡、計6つのキャンパスを有している。

また、中期経営計画の中で「世界水準の研究を展開するための研究実施体制等の整備」と掲げている。キャンパスを自動運転・AI・ロボティクスなどの実証実験のフィールドと捉え、スマートシティ・スマートキャンパスの社会実装に向けた最前線とする方針だ。

近畿大学の細井美彦学長は、新型コロナウイルスの感染拡大により「大学のキャンパスの概念が大きく変わる」との見解を示した。社会が激変する中、「未来を見据えてどう生き残るか」を考え、アフターコロナにおいても躍動できるよう、NTTグループ各社との連携に至ったという。

近畿大学 学長 細井 美彦 氏

■5Gを活用して「近大マグロ」事業を支援

NTTグループは、近畿大学との取り組みにおいて、「デジタル×通信」によるスマートシティ・スマートキャンパスの実現を目指すとしている。

持株会社のNTTはグループ全体の戦略策定と、基盤となる研究開発の推進を担う。そして、ドコモは3,500を超えるパートナー

と取り組んできた5G通信の運用実績、NTT西日本は光サービスやWi-Fiの提供実績、NTTデータはデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する各種ソリューションの実績など、それぞれの強みを集約して今回の近大とのプロジェクトに臨む。

※「ドコモ5Gオープンパートナープログラム」の9月30日現在のパートナー数。

NTTグループと近畿大学の取り組みイメージ

連携協定による活動の第一弾として、NTTグループ各社はさまざまな実証実験に着手する。

まずは、5Gを活用した遠隔医療支援の実証実験だ。ドコモ・近畿大学医学部(大阪府狭山市)・くしもと町立病院(和歌山県東牟婁郡串本町)が共同で実施。5Gによる高速・大容量の通信を活用して、近畿大学の専門医が遠隔地の医師をサポートする。遠隔地でも適切な診察が受けられることを目指す取り組みだ。将来的には、災害時でも高度な医療が受けられる体制の確立や、在宅医療への応用を視野に入れている。

さらに、ドコモは近畿大学水産研究所(和歌山県西牟婁郡白浜町)と、完全養殖クロマグロの状態監視の実証実験も行う。2002年に完全養殖を成功させ全国に名が広まった「近大マグロ」の事業に5Gを活用する取り組みだ。具体的には、生け簀内に水中ドローンを配備し、陸上から遠隔操作を実施。5Gエリア化した養殖場の海中を高精細に撮影して、生育状況の確認などに活用する。

また、NTT西日本が中心となり、キャンパス建物内にWi-Fi環境を整備する。これを通じて、教育現場のデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する考えだ。さらに、通信環境の整備に加え、その先では教育コンテンツを充実させることも目指している。オンライン・オンデマンド講義の実施のほか、動画やAR(拡張現実)などを活用したデジタル教材の開発に取り組む方針だ。また、利用データを分析して、個別に最適化された学習指導の支援へと応用することも見据えている。

そのほかにも、NTTデータは大学運営で必要な財務会計システムや事務系システム、さらには学生向けポータルなど、5G時代に対応するシステム基盤構築の支援を開始。書籍や資料のデジタルアーカイブ化などにも取り組む。

■スマートモビリティの活用なども視野に

これら一連の取り組みは、前述の通り「第一弾」と位置付けられている。今後は、まず近畿大学のキャンパスを活用したスマートモビリティやドローンビジネスを推進する「交通」への取り組み。次に、ものづくりの街として知られる東大阪という立地を生かした地元企業や地域社会とのオープンイノベーションを推進する「産業」への取り組み。そして、実証や研究の結果を教育活動にフィードバックして高度なICT技術を活用できる人材を育成する「教育」への取り組み。これらを次のステップとして想定している。さらには、スマートアグリやスポーツ・エンタメなど、取り組み領域の拡大を段階的に行っていく方針だ。

第一弾の取り組みと次のステップ

当記事の掲載画像は、11月24日のオンライン記者会見での発表資料より抜粋

(記事/和田 翔)