【日本S】4年連続日本一の強さはどこに? 元鷹コーチが解説する影のMVPと巨人に欠けた全力疾走

元鷹コーチが解説する日本シリーズ影のMVPとは【写真:福谷佑介】

1番・周東が日本シリーズ4戦1安打も2番・中村晃が強力バックアップした

「SMBC日本シリーズ2020」第4戦はソフトバンクが4-1で巨人を破り、4連勝で4年連続の日本一に輝いた。昨季までソフトバンクでコーチを務めた飯田哲也氏は、15打数5安打4打点で、第3戦に先制2ランを放ったソフトバンク・中村晃をMVP級の活躍だったと絶賛した。

第3戦で先制2ランを放った中村晃が、第4戦も先制点につながるプレーでチームを勝利に導いた。初回1死から右翼線へ二塁打。続く柳田の先制2ランをお膳立てした。前日には巨人・サンチェスのフォークを右越え本塁打とし、高梨からもスライダーを右前適時打に。この日は直球勝負の巨人バッテリーに対し、鋭い読みで、3球続いた直球を打ち返した。

「このシリーズで、雰囲気を変えたのが中村晃。ベンチもファンも誰もが、ここで打ってくれというところで打つ、頼りになる選手。それが出たのが第3戦のバッティングだった。第4戦でも巨人バッテリーは前日に変化球でやられたイメージが強かったので、この日は直球が多かった。中村晃の頭の中にも『今日は変化球が来ないな』というのはあった気はする」

このシリーズ、1番の周東は4試合でわずか1安打に終わり、自慢の俊足を生かせる場面は少なかった。だが、1、3、4戦で2番に入った中村晃がその穴をカバー。飯田氏は「2番に中村晃がいることで、周東が凡退しても、次の中村晃が返したり、粘って球数を投げさせたりした。周東はこのシリーズで打てなかったが、それが目立たなかったのは中村晃がいたから」と、絶賛した。

巨人打線が対戦歴の少ないソフトバンク投手陣に手こずる中、中村晃は巨人の投手を苦にすることはなかった。飯田氏は「タイミングの取り方が上手い選手で、どんな投手に対しても合わせられる。初対戦でも苦にならない」と解説。「2番に野球を知っている中村晃がいるのは相手バッテリーにとっていやらしさがある。3番柳田、4番グラシアルと続いていく中で、中村晃だけをマークする訳にはいかない」と2番に置くことで打線に厚みが増すメリットを強調した。

ソフトバンクが目立ったプレーは随所にあった、「巨人にはゆっくり走る選手もいた」

ソフトバンクは走塁でも流れを引き寄せた。第2戦では初回1死一塁の場面で栗原が右前打を放ち、一塁走者のグラシアルがヘッドスライディングで三塁まで進塁。続くデスパイネの内野ゴロの間に生還した。第3戦では代打長谷川が二ゴロで一塁にヘッドスライディング。ほかにも、ソフトバンクの選手たちは走者一塁の場面で内野ゴロを放っても、併殺打を避けるために一塁に全力疾走する姿が目立った。

「打ったら走る。ランダウンプレーでも簡単にアウトにならない。次の塁を狙う姿勢を持つ。そういった当たり前のことを普段通りできたのがホークス。巨人にはゆっくり走る選手もいたが、そういうことができないとダメなんだということを感じないといけない」

ソフトバンクの投手陣の強さが際立ったシリーズでもあった。巨人の今シリーズのチーム打率は.132。奪った得点は4試合でわずか4点だった。飯田氏は「巨人の打者は速い直球を狙っても弾き返せなかった。何球か甘いところにもきたが、それを仕留められなかった。初戦で千賀にあれだけいいボールを投げられたら、巨人の打者も(調子が)狂ってしまうし、2戦目以降の先発陣も頑張った」と分析。「逆にホークスの打者は甘い球をしっかり1球で仕留めていた」と、走攻守それぞれの力の差が重なり合い、4勝0敗という一方的な結果につながったと指摘した。

打線が機能し、盤石の投手リレーで4連勝を飾ったソフトバンク。絶対的な強さを誇るチームの中で、それぞれが力を発揮し、その中で中村晃の存在が光った、今年の日本シリーズだった。(Full-Count編集部)

© 株式会社Creative2