忘年会の存亡は

 なにかと「平成最後の○○」と言われたおととし、時計会社大手が一風変わったアンケートをした。「あなたにとって○○の程よい時間は?」。平成元(1989)年と平成の終わりに、仕事を持つ人に同じ質問をして、意識の変化を探っている▲「社内会議の程よい時間」も「1カ月の程よい残業時間」も、平成の最初から最後にかけて減少した。際立つのは、仕事のお付き合いでの「程よい飲食・飲酒の時間」で、元年は平均2時間20分、おととしはそれより40分も減っている▲調査から2年後のことし、飲酒を伴う懇親会、大人数や長時間の会食を警戒するよう政府が呼び掛ける事態になった。東京商工リサーチが今月、企業1万社に聞いたところ、88%が忘年会や新年会を「開かない予定」と答えたという。今や飲食の「程よい時間」は探りようもない▲近年の別の調査では、忘年会に「参加したくない」層は4割に上る。気疲れするらしい。職場の懇親会はこのところ、あまり好まれなくなっている▲そこへ新型コロナの波が来た。この1年の苦労をひととき忘れ、慰め合う「年忘れ」の場が消えて、飲食店は稼ぎ時に試練が続く▲近年、疎まれがちな忘年会は今年を境に消えていくのか、いずれ元に戻るのか。いささか大げさだが、いま存亡の分かれ道にある。(徹)

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