アメリカ式 婚姻手続き

 昔と違い現代は国際カップルは当たり前で、海外で働く日本人同士、外国籍同士、あらゆるパターンの夫婦が身近にいる。

 現在は一口に「夫婦」と言っても多様な形が存在するが、ここでは一般的な話に限定する。

 日本では戸籍制度を設けているために結婚=入籍となり、諸々手続きを行うにあたり戸籍謄本というものが必ず登場する。では、海外諸国ではどうだろうか。

アメリカにおける戸籍に代わるもの

 アメリカには戸籍というものが存在しない。戸籍制度を導入している国は世界的にも珍しく、日本と同じく東アジア地域の中国と台湾の二カ国のみだ。多くの国では「国民識別番号」が採用されており、利用目的や機能・名称は国ごとに異なるものの、いわゆる戸籍のような役割を果たしていると言えるだろう。

 アメリカでは、個人を特定する唯一の方法として「Social Security Number(SSN:社会保険番号)」を採用。登録されている事柄は氏名・国籍・出生地・生年月日・住所など。アメリカ国民はもちろん、ビザを取得し入国している外国人就労者や留学生に対しても発行されている。免許証の取得、銀行口座開設などでも必須の番号である。

 筆者も就労目的で渡米した際に、一目散に会社から指示されたのはSSNの取得だった。家族関係が基本の戸籍とは異なり、SNNはあくまで個人の情報のみ。戸籍も住民票も存在しないアメリカでは、一人の人物について紐付いた情報を取得することは簡単ではないと言われることもある。欧米諸国ではシンプル且つ合理的な管理が主流のようだ。

日本式とアメリカ式の結婚

 日本人がアメリカで結婚しようとする場合、日本式とアメリカ式といった選択肢がある。

 日本式は冒頭でも触れた戸籍謄本や婚姻届を取り寄せ準備し、在米日本国大使館へ提出する方法だ。

 アメリカ式の結婚に関する取り決めや手続きは州によって異なる。

 以下、ニューヨークの場合について紹介する。

 はじめに、Marriage License(結婚許可書)を取得する。取得後、牧師や神父等、司式者の資格を持っている人の前で結婚を誓約する。特筆ポイントは、どんなに小さくても式(セレモニー)を行う必要があるという点だ。

 ポピュラーな結婚式として知られているのは市役所で挙げる方法で、司式者を探す必要もなく、2人で現地に出向き申請を行うのみ。挙式の予約は出来ず多少の待ち時間を想定する必要はあるが、料金はたった$25しか掛からない。挙式完了後にCertificate of Marriage(結婚証明書)が貰え、婚姻手続きが完了する。

 もちろん、日本と同じようなチャペルで挙げる結婚式の方法や、セントラルパークや自宅でも可能で、その場合は後日Certificate of Marriage(結婚証明書)が郵送される。

 資格者と証人さえいればどこでも式を挙げることができるため、日本のそういった結婚式・披露宴とは目的が異なる。

 役所仕事にも関わらず、24時間営業の窓口・ウェディングチャペルも至るところにあるネバタ州・ラスベガスは婚姻手続きが簡単なことで有名だ。煩雑さから逃げるように、他州からも多くカップルが訪れるという。

 過去ハリウッドセレブたちが利用したことでも話題になったドライブスルーウェディングも、さすがラスベガス!と言いたくなるユニークな一例だ。

ウィズコロナでオンライン化が促進されるか注目

 戸籍云々はさておき、婚姻届に判を押して役所に提出すれば結婚できる日本。 しかしコロナの影響下、各方面で紙文化・ハンコ文化の在り方を考え直すべき時が来ている。

 婚姻届・離婚届に関して言及すると、戸籍関係のオンラインでの届け出は2004年春から制度上可能となっていたことは予想外だった。現時点で導入している市区町村はない事実を受けると、国の後押しが無いとなかなか踏み込むことは難しいのかもしれない。

 因みに、アメリカ式で紹介したMarriage License(結婚許可書)は事前にオンライン申請が可能で、日本より進んでいる印象だ。

 人々の生活スタイルが多様化していく中で、機密性はもちろんだが利便性や効率性も考慮して、さまざまな手続きのペーパーレス化・オンライン化が進められていくことを期待したい。

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