古里へ 感謝のコンサート 地元の卒業生ら企画

美郷南学園の第1期生が企画したコンサート。出演者と企画した生徒らの合唱もあり、会場を盛り上げた

 古里へ恩返しを―。美郷町南郷の「西の正倉院」で22日、美郷南学園の1期生10人が企画したコンサートがあった。9年生(中学3年)だった卒業前の今年3月に開催予定だったが、新型コロナウイルス感染拡大のため延期に。全員町外に進学したが、強い思いで開催にこぎ着けた。
 同町には高校がなく、生徒の多くは中学卒業後、親元を離れて進学する。人口減少が深刻化する中、10人は「自然豊かな町の良さを知ってほしい」「地域を盛り上げたい」と思うように。地元を代表する施設でありながら知名度の低さを感じていた「西の正倉院」を生かせないかと、コンサートを企画した。
 インターネット上で資金を募るクラウドファンディング(CF)を活用し、昨年までに協賛金を調達。3月の本番に向け準備を進めていたが、コロナ禍で延期が決まった。その後も休校となり、学校に通えないまま卒業した。
 実行委代表の門川高1年黒木咲さん(15)は「ショックが大きかった。地域の方やCF支援者の協力を無駄にしたくなかった」と振り返る。各地で高校生活をスタートした後もネットで協議を重ね、11月開催を決定。観客はCFの支援者と南郷在住の計約250人に限定した。
 本番は西の正倉院前庭にステージを設置し、琵琶や篠(しの)笛の奏者、シンガー・ソングライターが出演。暖かな日差しの下、観客が聞き入る姿が見られた。最後には出演者と企画した生徒、希望者の合唱で、会場は笑顔と拍手に包まれた。
 黒木さんは「支えてくれた大人たちに感謝している。やっぱり南郷が好きなので将来は帰ってきたい」と、笑顔で話していた。

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