【社会人野球】都市対抗で実現の“兄弟対決” 日本通運の弟が適時打も「勝たないと意味がない」

日本通運・稲垣誠也とHonda熊本・稲垣翔太(奥)【写真:鳥越涼芳】

今大会初のタイブレーク突入、まさかの結末

23日に行われた第91回都市対抗野球第5日目は、第1試合で日本通運とHonda熊本が対戦。今大会初のタイブレークの末、日本通運は5-6xでサヨナラ負けを喫した。この試合、日本通運の「3番・三塁」稲垣誠也とHonda熊本の「3番・遊撃」稲垣翔太の兄弟対決が実現。弟・誠也が9回、10回と勝ち越し点を挙げたが、まさかのサヨナラ負け。兄との対戦を楽しむも悔しい敗戦となった。

2点リードで迎えた延長10回、2死満塁と勝利目前までこぎつけた日本通運に、まさかの結末が待っていた。Honda熊本の5番・和田が打ち上げた打球はフラフラと上がり、三塁を守っていた稲垣と深い位置で守っていた左翼・大谷の間にポトリ。2ストライクでスタートを切っていた3人の走者が全員生還し、逆転サヨナラ負けを喫した。

同点の9回2死一、二塁から内角直球を左に運ぶ適時打を放って一時勝ち越しとなる貴重な打点を叩き出した。延長10回、1死満塁、打者選択制のタイブレークで再び打席が回ってくると「監督、スタッフの方は自分を選択してくれた」と意気に感じ、冷静に押し出し四球を選び、再び勝ち越しに成功していた。

試合は2点を守りきれず敗戦となり「本当に考えられないです」「タイムリーを打ったことは自分にとって価値がある。でも負けたので。勝たないと意味がない」と悔しさを噛みしめていた。

適時打の打球は、2歳上の兄・翔太の横を抜けて、左前へ。兄の影響で野球を始め、追いかけるように入学した明豊高では1年夏からベンチ入り。兄とともに甲子園の土も踏んだ。中部学院大で開花した打撃は日本通運に入ってからも健在で、入社1年目からレギュラーとして活躍してきた。兄について聞かれると「小さいころから主力の選手で、ずっと憧れ。大舞台でも活躍していて、尊敬できる兄です」と力強く話していた。

初戦でいきなり顔を合わせることが決まり、2018年の都市対抗以来2年ぶりの兄弟対決が実現した。抽選会で対戦が決まってからは「家族みんなのテンションが上ががった。『楽しもう』とやりとりしました」とグラウンドでの再会を待ちわびてきたが、予期せぬ幕切れに稲垣の表情は晴れることはなかった。

今大会が初めてのドーム采配となった日本通運の澤村幸明監督は「私自身はそんなに緊張感なく普段通りの入りができた。この大舞台でどれだけ結果を出すか、難しいところだと感じた」と敗戦を受け止めていた。稲垣兄弟の前回対戦は日本通運が4-2で勝利していたが、今回は惜しくも敗れてしまった。(安藤かなみ / Kanami Ando)

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