<南風>クイナの保護活動 パート1

 国内最大級の亜熱帯照葉樹林が広がる国頭、大宜味、東3村にまたがるエリアが2016年9月15日全国33番目の国立公園として環境省より指定を受けた。そこには世界でここにしか生息しないヤンバルクイナやノグチゲラ、ヤンバルテナガコガネなど4500種を超えるといわれる貴重な動植物が息づく。

 近年安田区においても里山の荒廃と自然環境の変化が要因と思われる現象として、ヤンバルクイナが集落の中でも頻繁に見られるようになってきた。私の家にも塀を飛び越えてきたりして、ペットの犬にかみつかれはしないかと気をもんだこともあった。区では屋敷周辺は各自で定期的に草を刈りハブ対策を行ってきたが、ヤンバルクイナの存在で区民から安心して草刈りができないとの苦情が出たりもした。朝夕はヤンバルクイナの鳴き声がうるさいくらい聞こえ、区民にはそれが当たり前に日常生活の一部となっていた。

 ヤンバルクイナは1981年に新種として発見され、全長約30センチの「飛べない鳥」で、85年の調査で約1800羽が生息していると推定されたが、マングースや野生化した飼い猫等に捕食されるなどして生息数が激減した。一時期は700羽まで激減し絶滅が危ぶまれた。その一番の要因はマングースである。1910年、ハブ対策でインドから本島南部に持ち込まれたマングースが90年代にはヤンバルクイナ生息地域にまで侵入してきたという。

 安田区では絶滅を防ごうと、2002年、当時の伊計忠区長の強力なリーダーシップの下で、ヤンバルクイナの保護を軸とした自然保護活動をすることで地域活性化につなげようとの機運が高まった。「自然との共生と地域資源の保護と活用」をテーマとして、決して順風満帆ではなかった安田区の地道な粘り強い活動が始まった。

(比嘉明男、県パークゴルフ協会連合会長 日本郵便沖縄支社長)

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