【藤井康雄連載コラム】二軍コーチ復帰後、伸び悩んでいたT―岡田を指導すると…

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2010年には本塁打王に輝いたT-岡田

【藤井康雄「勇者の魂」(26)】僕は4年間、二軍の打撃コーチを務めましたが、教え方が頭打ちになり、選手を育てることができませんでした。自分の経験で結果が出た打ち方を、誰に対しても教えてきていた。結局、コーチを外されて2007年からスカウトに転身するんですけど、やめて初めて教え方の間違いに気づいたんです。コンディショニングトレーナーの廣戸聡一さんの書いた「キミは松井か、イチローか。」という本を読み、人は身体特性が4つのタイプに分かれるという「4スタンス理論」を知りました。これを学んで行こうと思ったんです。

要は僕には「自分からボールに攻めていけ」という感覚はわからなくても「ボールを呼び込め」はわかる。選手時代にコーチから感覚の部分で教えられてきた違いがあって、そこには合う、合わないがある。爪先重心の前軸で力を出すのがAタイプ、後ろ足のかかとで力を出すのがBタイプ、それから体の回転で打つパラレルタイプ、胸を開かずに移動で打つクロスタイプ。大きくその4つに分かれ、打者だけの話ではなく、人は私生活からそのように動いているんです。

体を動かすとき、どこから動き始めるか。たとえばコップの水を飲むとき、Aタイプはヒジを動かさずに手首を動かして飲むけど、Bタイプは手首じゃなくてヒジを動かして飲むとか、すべての動きがタイプによって分かれている。当然、どれが正解かではなく、合う合わないの話。野球でいうとAなのにBのトレーニングを一生懸命やるのは合理的でないし、ケガのもとになる。自分が持っている力の100%が出ない。僕はコーチとしてそれをしてあげられていなかったんですね。

思えば4年間でどれだけの選手をつぶしたんだろうと…。ちゃんと分かって教えていれば、本来持っている力を100%出せていたかもしれない。一軍でレギュラーを取れるくらいの力を出せたかもしれない。それを出させてあげられないまま、クビになった選手もいたでしょう。僕が「ボールを呼び込んで体の移動で打つ」タイプだったので、そればかりを選手に教えていたということです。それで打てると思っていた。合う選手も中にはいたかもしれないけど、4分の3は失敗でしょ。それから2年間、勉強し、廣戸さんのセミナーに行って話を聞いて交流するようになりました。

2年後の09年、僕は二軍打撃コーチに復帰。その時、伸び悩んでいた4年目の岡田貴弘(T―岡田)がいたんです。あいつは僕と同じ移動しながら打つタイプ。なのに体が後ろで回転して、いい当たりが全部一塁側にファウルになっている。原因は回転するから。膝を使って体を開かないようにする練習を一緒にずっとやっていきました。それで二軍で結果が出て翌年、一軍で本塁打王になったんですよ。理論は間違っていなかったな、と確信しました。

☆ふじい・やすお 1962年7月7日、広島県福山市出身。泉州高(現近大泉州)から社会人・プリンスホテルを経て、86年のドラフト4位で阪急に入団。長距離砲としてブルーサンダー打線の一角を担った。オリックスでも95、96年の連覇に貢献。勝負強い打撃が持ち味で、通算満塁本塁打(14本)は歴代3位。代打満塁本塁打(4本)は日本記録。2002年に引退後はオリックス二軍打撃コーチ、11年からソフトバンクで一軍打撃コーチを務め、18年にオリックスに一軍打撃コーチとして復帰。今年から総合建設業「共栄組」に籍を置き、JSPORTSの解説、神戸中央リトルシニア、関西創価で指導している。