【ドラッグストア協会】厚労副大臣に文書提出/OTC薬販売ルールの見直し要望に対し問題点を指摘

【2020.11.27配信】日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)は、規制改革推進会議に提出されているOTC薬販売ルールの見直し要望に対し、問題点の指摘を文書で提出した。厚生労働副大臣の山本博司氏に提出した。日本フランチャイズチェーン協会が提出した要望内容では、医薬品の保管・陳列・情報提供が実地で一体的に行われず、安全性が担保できないなど、4つの問題点を指摘している。

生活者に何のメリットがあるのか

日本フランチャイズチェーン協会は10月21日、内閣府規制改革推進会議医療・介護ワーキング・グループに対して、コンビニエンスストアでの一般用医薬品の販売に関して規制緩和を求める要望書を提出していた。

こうした要望に対し、JACDSは主に4つの問題点を指摘した。

1つ目は、要望内容では医薬品の保管・管理が無資格者によって行われることで、安全性が担保されないという点。
安全性を確保するためには、販売時の情報提供だけでなく、保管からリスク区分別の陳列までを有資格者(薬剤師または登録販売者)が同一の店舗で実地に行う必要性を指摘。要望では、医薬品を受け渡す店舗に医薬品があらかじめ保管・陳列されているにも関わらず、有資格者がいない状況が想定される。
現在、医薬品のネット販売のルールも整備されているが、ネット販売においても、保管・リスク区分陳列、販売時の情報提供までを同一の店舗、または責任体系の中で一体的に行うよう定められている。安全・安心のために議論の末、定められたルールを遵守していくことが重要との考えだ。

2つ目が、安全性を犠牲にするだけのニーズがないという指摘だ。
すでにドラッグストアの店舗数は2万店を超え、深夜まで医薬品を販売している店舗も多く、このほかに約6万軒の薬局がある。さらにはネット販売も制度化されており、こうした状況下において、安全性を犠牲にしてまで要望を認める理由がないのではないかと指摘している。

3つ目は、販売時だけでなく、突発的な問い合わせにも迅速に対応することが生活者に安心を提供していることにつながっているのであり、営業時間中の一定の時間を医薬品販売に充てることを定めた「2分の1ルール」は必要最低限のものという指摘だ。

4つ目は、登録販売者不足問題は企業努力の問題ではないかということ。
要望の前提は、「登録販売者の確保が困難」というものだが、すでに登録販売者は累計で30万人合格しており、毎年2万人が合格している。このうちドラッグストア業界に勤務する人が約10万人。実務に従事していない潜在資格者は大勢いるはずだという指摘だ。
現在、ドラッグストアにおいても、登録販売者の確保に関し、採用努力や給与等の待遇面の整備、研修への投資などを行っており、登録販売者確保問題は個別企業の努力で解消できる問題だとした。

JACDSでは、こうした問題点の指摘を5枚つづりの文書にまとめ、11月25日に厚生労働副大臣の山本博司氏に提出した。

取材に応じたJACDS事務総長の田中浩幸氏は、「今回の見直し要望は、生活者、お客さまの視点から見て、どのようなメリットを提供するのだろうか。利便性については、現状、すでに約8万軒の医薬品販売の拠点がある。安全性をリスクにさらしてまで求めるようなニーズがあるとは思えない。生活者視点ではなく、供給側目線の規制改革要望ではないかと指摘せざるを得ない」と話す。
さらに、規制改革の方向性について、「国民のためになるのかの視点を欠いてはいけないのではないか」と指摘する。
「われわれもスイッチOTC医薬品の推進など、規制改革を要望している。しかし、スイッチOTC医薬品の促進は、生活者からみた利便性の向上という面でも大きな意味を持っている。その面でも、今回のOTC薬販売ルールの見直し要望では、生活者の視点を見出すことができない」(同)

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JACDSが指摘するように、現状はネット販売においても管理・陳列と情報提供(販売)は、一体的に実地で行われている。
管理と販売が切り離された場合、誰が責任を負うのかが不明瞭になる可能性があるだろう。このあたりの危惧は11月25日の規制改革推進会議で厚労省が提出した資料の「今後の考え方」の中でも、「店舗販売業の責任の所在を明確にする」という表現で触れられている点になる。
今後の具体的な緩和にあたっては、このあたりの責任の所在が論点の一つにもなりそうだ。

ただし、より大きな観点でみると、仮に今回の要望通りに規制が緩和された場合、30万人の薬剤師、加えて30万人の登録販売者の雇用が揺らぐ可能性もあり、養成に関わってきた産業への影響も含めると、国内の経済活動にデメリットの面が大きいのではないか。また、何よりも、長い時間をかけて関係者が議論し、安心・安全を担保するために構築してきたルールを、一部の産業の要望だけをもって緩和するのは、あるべき方向性ではないことは明らかだ。若年層で濫用の恐れのある医薬品の依存の拡大が懸念される中、今は適正販売により力を注ぐタイミングでもある。
JACDSも今回の文書の中で、25例にわたる現場での適正使用や受診勧奨につながった事例を報告している。登録販売者の活躍の事例を会員企業から収集し、特に実地での意義が発揮されたものを選んだものとなっている。

規制改革推進会議には、こうした全体像をみた議論を期待したい。

一方、JACDSでもオンライン活用自体を否定しているものではなく、前述した一体的な管理が行われている店舗が、顧客に対しオンラインを活用したサービスを拡大していくことは可能性としてあるだろう。

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