アラフォーオタク女子ルームシェア、継続の秘訣とお金のこと - 『オタク女子が、4人で暮らしてみたら。』

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老後2000万円問題のニュースを見たり、推しのグッズで手狭になった部屋に気づいたり、ふと現実と直面したときに感じる、「今は楽しくオタク活動をしているけれど、この生活はずっと続けられるものなのか……?」という漠然とした不安。

『オタク女子が、4人で暮らしてみたら。』を出版したフリーライターの藤谷千明さんも、不安を感じたその一人でした。長年暮らしていたパートナーと別れて一人暮らしを始めたとき、淋しさや心配事がふくらみ一人暮らしが向いていないと思ったそう。その結果たどり着いたのが、「同じ不安を抱えたオタク女子4人でルームシェアをする」ということ。

一人暮らしでもなく、家族やパートナーとの暮らしでもなく「趣味の傾向と利害関係が一致した友人となんとな~く暮らす」という選択をした藤谷さん。オタクな友人同士でゆるっと暮らすルームシェア生活やお金のこと、この先の将来について伺いました。

楽しい漫画も祝い事もご飯も分け合える「オタクルームシェア」

――最近、ルームシェアで起きたことを教えてもらえますか?

「先日、漫画『チェンソーマン』の9巻を同居人が買ってきてリビングに置いてたのですが、衝撃の展開に読んだ人から順番にうめき声をあげていました。また、キッチンには大きなオーブンがあるので、同居人のお誕生日には鳥の丸焼き、私がこの書籍を出したときは鯛を焼いてもらいました(笑)。面白いもの、おいしいものをみんなで共有できるのは楽しいですね」

――「オタク同士のルームシェア」と聞いて、楽しそうだなあと憧れを感じたのですが、実際に聞いてもにぎやかそうです。

「常に普段から一緒にいるわけではないのですが、誕生日会などの楽しいイベントが発生したりすると集まります。あと、都内の有名ケーキ屋の大きなケーキを予約してみんなで分けてみたり。おいしい食べ物に目がない人が多いので」

そう語るフリーライターの藤谷千明さんは、2019年1月から約2年、友人4人とルームシェア暮らしを続けている。住まいは東京都内の5LDK、家賃は21万、駅徒歩15分。同居人は全員、30代後半の趣味を楽しむオタク女子だ。この9月にはルームシェア生活を描いたエッセイ『オタク女子が、4人で暮らしてみたら。』を出版した。

――この暮らしを書いた本の反響はいかがですか?

「『自分もやってみたい』『面白いけど無理だろうな』といった、自分に引き寄せた感想を伝えてくれる方が多いですね。『女性のほうが寿命が長いので、将来こういう暮らしをしたい』という声もありました」

――ルームシェアではなく、「同じマンションに住みたい」という感想もあったそうですね。

「プライベート空間を大事にしたい方はそれもありだと思います。ルームシェアはプライベート空間こそ減りますが、共有部分の掃除などは全員でやるので家事コストが減るメリットはありますね。仕事の繁忙期とか、なんだかんだ誰かが掃除洗濯をしてくれるのは助かると同居人とも話してます」

「腐乱死体にはなりたくない、でも2000万円貯められない」で泣いた夜

一緒に暮らすのは別に「好きな異性」や「家族」に限らなくてもいいじゃんか。社会で言う明確な名前のついた関係じゃなくても、ある程度気心の知れた相手と暮らせば「精神的不安の解消」「生活コストの削減」は達成できる可能性が高い。もともとの友人なら「パターン4:再びパートナーを見つけて暮らす」よりも難易度は低いのでは? オッ、この選択肢めっちゃアリですやん! 天才か!?

時刻はすでに深夜1時を回っていたけれど、思いついた興奮のまま、即座にアプリをツイッターからLINEに切り替え、夜泣き(仮)していた友人へこう送信した。

「ねえねえ、オタクルームシェアしない?」
(『オタク女子が、4人で暮らしてみたら。』より抜粋)

――藤谷さんはこれまで10年以上、パートナーの方と暮らされていたとのことですが、ルームシェアを始めようと思い立ったきっかけは何だったのでしょうか?

「急に一人暮らしになったら、将来へのお金の不安や淋しさから『一人で暮らすことに向いてないな……』と思ってしまったんです。嫌なことが続いてメンタルが落ちてきてしまい、現同居人の丸山さん(仮)に一緒に暮らそうと相談したのがきっかけですね。それまでルームシェアをしようと思ったことはなかったです」

――いま同居されている方は、お互い付き合いの長い方ですか?

「頻繁に会うような関係ではなかったけれど、SNSで10年以上付き合いのある方ですね。SNSだけを信じてはいけないですが、趣味に関連した共通の友人がいますし、ライブ参加のために上京した友人を自宅に泊めたり、みんなで趣味を通して遊んでいるうちに、この人は大丈夫だなと信頼できる間柄になっていました」

――赤の他人同士のルームシェアというと、最初はいろいろとルールを決めたり、もめたりしそうですが、「最初にこれだけは決めた」ということはありますか?

「『厳密なルールを決めたらめんどくさくなりそう』という共通認識があったので、義務は増やさないようにして、ルールもがっちりと決めませんでした。共用部分の掃除の管理も、やったやらないで揉めないようにToDoアプリなどを使って回しています。あと、冷蔵庫の中身もドアにマグネットシールを貼って在庫のダブりを防止したり、ツールを活用して互いに生活しやすい環境を作っています。強いて言うなら、お風呂の出入りをこまめに報告することくらいですね」

「とはいえ家に関する収支報告はしっかりしています。家賃の振り込み報告やガスの引き落としなどは、クレジットカードの入出金画面をスクリーンショットして共有しています。お金のことだけは話題が流れないように、それだけのLINEグループを作っています」

――しっかりするところはしっかりしつつ、義務や手間を増やさないようにされているんですね。

「あと決め事ではないのですが、最初に『自分がどういう生活スタイルをしているのか、どの時期が忙しいのか、出張や行きたい舞台が入るか、どんな持病があるか』といった情報を共有しました。他人と暮らしたときに揉めそうなことを、全部洗い出したのはよかったと思います」

円満生活の秘訣は「いじわるしない」

――藤谷さんのようなルームシェア生活は、憧れる一方で「続けるのが難しそう」と考える人も多そうです。継続する秘訣はありますか?

「自分自身でも、今はこの生活が結構うまいこと回ってるなと思います。うまくいく理由はまだはっきりと言語化できてないのですが、端的に言うと『いじわるしない』ことでしょうか。道徳の話になりますね(笑)。みんないい大人なので、何か不愉快なことがあっても口論になったりしないですし」

「家族や寮生活のように自分で選べない人間関係であったり、恋人のように深い関係ではなく、そこそこの距離がある関係だからつい意地悪なことを言っちゃうことがないのかなと思います。当たり前のことなんですけど、意地悪な人が生まれない環境づくりって大事なんだなとわかりました」

生活コストとお金の不安はどう変わった?

――ルームシェアを思い立ったきっかけのひとつに「金銭面の不安」がありましたが、今の生活になって生活費は変わりましたか?

「想像以上にコストダウンはできました。一人暮らし時代は、自宅の他にシェアオフィスも借りていたので、家賃の固定費は半分くらいになりました。今の家は家賃が21万円で、自宅にいる時間の長いフリーランスの2名は6万円、会社に勤める方は部屋の広さに応じて4~5万円と決めています。あと、3人以上だと食べ物などを共同購入できるメリットもあるので、全体的に生活コストは下がっています」

【検証】結局どのくらい節約できたのか
■2018年12月 合計12万1,200円
・家賃(ネット回線費込み):8万5,000円
・シェアオフィス代:2万5,000円
・水道代:2,200円
・ガス・電気代:9,000円

■2019年12月 合計6万8,400円
・家賃:6万円
・水道代:1,800円
・ガス・電気代:5,500円
・ネット回線:1,100円

生活コストのトータルは半減している。うわ~い♪
(『オタク女子が、4人で暮らしてみたら。』より抜粋)

――都内でその家賃は魅力的です。みなさんオタクですが、生活費が下がったことで趣味への出費が増えたりはしていますか?

「それはあるかもしれませんね。今はコロナ禍の影響でライブなどの現場が減っているので、ルームシェアだけが原因だとは一概には言えないですが、生活の基本コストは下げても、趣味にかけるお金は変えたくないと思っています」

――同居するにあたり、書籍では「衛生観念・経済観念・貞操観念」が大事と書かれています。お金のことは友人同士でもなかなか話しにくいことですが、感覚の擦り合わせはどうされましたかは?

「同居前から、年収の差はそこまでないだろうとは感じていました。オタクじゃない人よりもお金は使うけど、借金するほどガチャを回したりとか身を滅ぼすほどでもなく、趣味と生活のバランスが取れている人たちとはお互いに認識していました。ちょっとズレを感じたときは、都度相談するようにしています。でも、そもそも共用費以外の個人的なお金の話は互いにあまり話しませんね」

――生活は一緒でも、お金のことは話されないんですね。

「更新費の積み立てと共用費以外、それぞれ家計は独立していますね。話したとしても、フリーランス同士で持続化給付金の話をする程度です。個人的にiDeCoをしていますけど、投資とか自分が責任を取れないものを勧めようとは思いません。万が一同居人の中に、すごい金額を借金している人がいるとか発覚したら、とりえあえず解決策を相談したあと『エッセイのネタにしていい?』って確認しますね(笑)」

――2年間ルームシェアを続けて、お金に対する不安感の変化はありましたか?

「生活のコストが減って貯金額が右肩上がりになったことで、メンタルが安定して不安感も薄れました。お互い意識して支え合っているわけではなく、もし体調を崩しても誰かしらいるから大丈夫という安心感や、広いリビングとか足が伸ばせるお風呂とか、QOLが上がったことでポジティブなループが生まれていますね。今後問題が起きてネガティブになった場合は、またそのときに考えればいいかなと思っています」

――家計は別で、依存しすぎるわけでもない、友人同士ならではの距離だからこその気軽さや安心感はありそうですね。

「一生つながり続ける家族じゃないからこその良さはありますね。将来入院したり、家族の介護が関わってきたりするとまた話は別ですが、誰かの環境が変わったらメンバーが変わったって良いと考えられる自由さがあります」

快適な生活、この先は?

――これから先の生活など、お互いに将来の話はされますか?

「同居人とは、この調子であと4-5年は暮らしたいねと話してますね。個人的にも、40代はこの生活を回しながら、お金に余裕がある間に60代以降の生活を考えたいと思っています。とはいえ、結婚と違ってこの生活は法律に縛られているわけではなく、また老いも平等に来るわけではないのでずっと続けられるとは思いません。ずっと続くと思うと甘えが出てくるので、ルールはアップデートしながら考えていきたいです」

――最後に、オタク同士のルームシェアに憧れる人へ一言お願いします。

「ハードルはいろいろありそうですが、『ルームシェア、やろう』と誘ってみると乗ってくれる人はいるかもしれません。住まい探しも不動産屋に相談してみると意外と協力してくれます。年齢を重ねると、若いころは躊躇していたようなことでもいい意味での図々しさで乗り切れたりするというか(笑)。実際にこの本を参考にして、アラサー4人でルームシェアを始めた友人もいます。でも起こるトラブルは全然違うそうで、メンバーによって変わるんですね」


「オタクの友人同士で暮らすのって、楽しそうかも」と、オタクなら一度は憧れる生活を実現した藤谷さんのルームシェア暮らしは、他人同士だからこその心地よいゆるさとドライさがある生活でした。

一人暮らしでも実家暮らしでもなくパートナーとの結婚でもない、この先の長い人生の暮らし方として「友人同士のルームシェア」とうい選択肢を取る人が増えてくるかもしれません。