コロナ時代の歯科治療 デジタルのクラウン治療1回の来院で治療を完了(後編)

デジタルのクラウン治療 1回の来院で治療を完了

Q. クラウン治療の新デジタル技術とは?

A.

当院ではこの10月、クラウン(人口歯冠)治療専用のデジタル機器を導入しました。Dentsply Sirona社製の「CEREC」という機械(写真)で、これによって歯型の3Dスキャンから、最終クラウンの作成・装着まで、一連の作業を全てクリニック内で、一度の来院で行うことができるようになりました。

従来のクラウン治療のプロセスは、①「印象剤」という粘土状の材料を歯列に押し付け歯型を取る。②それを専用ラボに送りクラウン作成を依頼。③出来上がりを待つ間、患者には仮のクラウンを被せて臨時対応。④最終クラウンがラボから送付されてきたら、患者に再度来院してもらい装着——というものでした。①〜④まで、最低でも2回の通院で、治療終了まで10日はかかりました。

それが、「CEREC」の導入により、①〜④を一度の来院で完了することができるようになりました。

「CEREC」という、クラウン治療専用のデジタル・スキャン・システム。これでクラウン治療が1回の来院で完了できるようになった

Q. どうやって治療期間を10日から1日に短縮するのでしょうか?

A.

まず、①の歯型を取るプロセスを省くことができます。「印象剤」という粘土状の材料を使って歯型を取る、患者さんによっては不快になるプロセスの代わりに、「CEREC」では小さなハンドピースを使って歯列/歯をスキャンします。これは、前編で紹介したデジタル・インプレッション・システムと同じです。印象剤を使って取る歯型よりも、スキャンしてコンピューター処理した3D画像情報の方が、ずっと精密であることは言うまでもありません。印象剤を使った歯型は、場合によっては取り直ししなければなりませんが、デジタルスキャナーでは撮り直しのリスクもありません。

スキャンにかかる時間は数分で、その画像はコンピューターに瞬時に取り込まれます。コンピューターが処理した情報(3D画像)に基づき、その場で私が最終クラウンを作成します。歯科医である私が歯科技師も兼任するわけです。クラウンを作る材料は、ラボと同じクオリティーです。患者さんにはその間、1時間ほど待ってもらいますが、従来のように10日後にもう一度来院する必要がなくなるので、ずっと効率的です。

このように、デジタル・インプレッション技術と、さらにその先を行くクラウン作成機能を持つ「CEREC」の導入で、治療時間を劇的に短縮し、通院回数を減らします。患者さんと歯科医師のコンタクトも少なくて済むので、パンデミックが収束しない今の時代には、感染予防の役割も担います。

Q. クリア・アライナーでの歯列矯正にも、デジタル・インプレッション技術は有効ですか?

A.

有効です。治療開始までの時間を短縮できることが最大の利点でしょう。クリア・アライナーで最も一般的なインビザラインを例にとると、治療開始には、まず歯型を取り歯列模型を作成し、それをアライン社に郵送しなければなりません。デジタル・インプレッション技術を使えば、歯型を取る代わりに、スキャンした歯列画像をアライン社にオンラインで送付するだけです。歯型と模型作成、郵送にかかる時間が省略され、治療開始を約10日間早めることが可能です。

そして、前編でも説明しましたが、治療完了後の整った歯列予想図を、治療前にコンピューターのモニター上で確認することができるのも、デジタル・インプレッション技術の大きなアドバンテージです。日々の我慢、メンテが必要な歯列矯正をやり遂げるためのモチベーションも保ちます。

トリスタン・ルー先生 (Tristan Lue, DDS)

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歯科医師(DDS=Doctor of Dental Surgery)。 ニューヨーク大学歯科大学卒業。 虫歯治療、根管治療(ルートキャナル)、クラウン、ブリッジ、親知らず抜歯などの一般歯科から、インプラントや歯列矯正(インビザライン、ブレース)、ホワイトニングまで手掛ける。 患者は子供から高齢者まで。 パンデミックでクリニック閉鎖中も、痛みが激しい急患に対応。 患者に寄り添う治療に定評がある。

トリスタン歯科 Tristan Lue, DDS 70 W. 36th St., Suite 10A (bet. 5th & 6th Aves.) TEL: 646-866-7773 日本人スタッフ勤務 drtristanlue.com

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