河北春秋(11/28):映画やドラマでおなじみの江戸の小石川養生…

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 映画やドラマでおなじみの江戸の小石川養生所は、将軍徳川吉宗の時代に、困窮した病人のために設けられた。吉宗は医療政策に熱心で、庶民ができる治療法を平易に書いた本も作らせ、全国で安く販売した▼吉宗の孫で白河藩主から老中となった松平定信。この人もやはり病気やけがで困窮した庶民の生活の安定を図った。はしかなどの疫病が流行した時には庶民の救済のために、お金を配った。「御救(お すくい)金」と呼ばれている▼近刊の安藤優一郎『江戸幕府の感染症対策』で、著者は「江戸の持続化給付金」と例えている。面倒な条件は付けないで短時日で給付を終えたという。同時代の諸外国に比べると、手厚い社会政策が存在したと言えるかもしれない▼新型コロナによる雇用危機に対応して、政府はきのう、雇用調整助成金の特例措置を来年2月まで延長すると決めた。生活への打撃が著しいひとり親世帯には、臨時特別給付金を年内にもう一度、支給する方向で検討しているという▼小石川養生所は当初は「施薬院」と呼ばれた。奈良時代、光明皇后が病人の救護のために設けた施薬院の名にちなんだ。度重なる感染症の流行とそれを克服してきた歴史だけでなく、ずっと昔でさえ、困窮した人々に支援を惜しまなかった歴史にも目を向けたい。(2020.11.28)