キーマンが坂本勇人でなかったワケ… 鷹・甲斐拓也が明かした昨年の日本Sからの“繋がり”

ソフトバンク・甲斐拓也【写真:荒川祐史】

甲斐が生かした昨年の日本シリーズ「全く繋がりがないわけではない」

25日にPayPayドームで行われた「SMBC日本シリーズ2020」第4戦。ソフトバンクが巨人を4-1で下して4年連続の日本一を決めた。昨年に続く史上初となる2年連続での4連勝での日本一決定だった。この4試合全てでマスクを被り、投手陣をリードした甲斐拓也捕手がFull-Countの独占インタビューに応じ、巨人打線封じの真実を語った。

ソフトバンクバッテリーがシリーズのキーマンに定めたのはセ・リーグ2冠王の岡本和真だった。そして、その岡本をいかにして封じたかは、前回の記事に書いた通り。ただ、同じ顔合わせだった去年の日本シリーズでは、坂本勇人をキーマンに設定していた。今年はなぜ岡本で、坂本ではなかったのだろうか。

「去年、巨人とは日本シリーズで戦いました。あれから1年は経っていますけど、全く繋がりがないわけではないな、と思っていました」

綿密なプラン、シミュレーション、対策を立てる上で考えたのは、昨年の日本シリーズでの戦いだった。昨年、坂本をキーマンに定めた甲斐は、今年の岡本のように、初戦からインコースを徹底して攻めて、坂本の脳裏に“インコース”を染み込ませた。内角を意識するあまり打撃を崩された坂本は17打席(13打数)でわずか1安打、シリーズ打率.076に終わった。

今年は交流戦もなく、巨人との真剣勝負での対戦は昨年の日本シリーズ以来となる。当然、相手も対策、研究を重ねてくる中で、昨年のことも当然、考慮に入れてくるはず。そうなれば、坂本の脳裏には、まだ昨年の“内角攻め”が残っているのではないだろうか。こう甲斐は考えた。

第1戦で坂本の打席に感じた昨年の“内角攻め”の効果

「去年の繋がりを考えたらそうなるし、見ていきながらやっていこう、と。去年の繋がりも踏まえて、まずは確認作業をしていこうとしました」

こうして臨んだ第1戦。初回に坂本の第1打席を迎えた。初球は外角の156キロでボール。2球目は外角への156キロ、3球目は外を要求したカットボールが中に入り、いずれもファウルとなった。この打席の坂本は外のボールに対して、しっかりと踏み込めてはいなかった。昨年のシリーズが“布石”として残っている、と確認できた瞬間だった。

そうなれば、これをそのまま生かしていけばいい。無理にインコースに突っ込むことはなく、内角を意識させたまま、外角を中心に攻めた。安打こそあれ、得点につながったのは第4戦の初回に許した適時二塁打の1本のみ。4試合で14打数3安打、打率.214。岡本とともに波に乗せることなく、シリーズを戦い終えた。

日本一を成し遂げた後に甲斐はこう話した。「ピッチャーが頑張ったことは間違いない。僕がどうこうじゃなく、ピッチャーが頑張ってくれた結果だと思います」。もちろん、リードに応えた投手陣の働きがあってこそ。甲斐とソフトバンクバッテリーは昨季からの“繋がり”を生かして巨人打線を封じ込めた。(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

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