【MLB】「投げる可能性は1%以下」 イップス克服し7年ぶりメジャー復帰した奇跡の復活劇

ロッキーズのダニエル・バード【写真:Getty Images】

今季7年ぶりのメジャー復帰したロッキーズのダニエル・バード投手

今シーズン7年ぶりにメジャーの舞台に戻ってきたロッキーズのダニエル・バード投手。一度はイップスに悩まされ引退していた右腕だが今季は23試合に登板し2979日ぶりの白星も手にした。常識では考えられない復帰へのサクセスストーリーを本人は「また投げる可能性は1%以下だと思っていた」と振り返っている。

バードは2006年のドラフト1巡目(全体28位)でレッドソックスに入団。2009年にメジャーデビューを果たすと、2011年には中継ぎとして70試合に登板した。だが、2013年以降、イップスに悩まされてメジャーのマウンドから遠ざかった。

その後もメジャー昇格を目指しカブス、レンジャーズ、パイレーツ、カージナルス、メッツと渡り歩いたが2018年に一旦は現役を引退。指導者としてダイヤモンドバックスのメンタルトレーニング部門のスタッフに就任すると今シーズンに現役復帰を果たしロッキーズとマイナー契約を結び7月にメジャー契約を結んでいた。

奇跡の復活劇を取り上げたのは米スポーツ専門メディア「ジ・アスレチック」だった。バードは「僕がロースター入りするとは誰も予想していなかったと思う」と語り、現役復帰を決断した当初は「また投げる可能性は1%以下だと思っていた。またマウンドに立つ感覚がどのようなものか確かめてみたかった。そして、自分の予想以上だった」と振り返っている。

メンタルコーチとして指導した若手には「まだ投げられます、また挑戦した方がいいですよ。もう1度投げるべきです」と後押しを受けたが「キャッチボールできるからって、メジャーリーグで投げられることにはならないよ。ここに来るまでに僕が経験してきたことを君たちは知らないんだから」と、冗談っぽく言葉を返したバード。だが、そのやり取りを続ける中で、長い間抱えていた不安、葛藤が無くなっていったという。

今季は23試合に登板「いつまでプレーできるか、知りたい気持ちもある」

若くて貪欲な選手たちと日々を過ごす中、挑戦することの大切を思い出させられると、ダイヤモンドバックスを去り今年2月に最後のチャンスとしてスカウトたちの前で投球を披露。視察していたロッキーズのジョン・ウェイルGM補佐の目に留まり契約をつかみ取った。

そして、7月25日(日本時間26日)に敵地で行われたレンジャーズ戦では2646日ぶりのメジャー復帰を果たすと、1回1/3を無失点に封じ白星をマーク。メジャーでの勝利は実に2012年5月29日のタイガース戦以来、2979日ぶりだった。

ジェットコースターのような野球人生を歩むバードは最後にこう締めくくっている。

「いつまでプレーできるか、何ができるか知りたい気持ちもある。でも、誰にとってもいかに限りあるものなのかということもよく分かっている。このレベルでプレーしユニホームを着て、こうした球場でプレーできる人は極めて少ない。以前よりもそれを実感している。楽しもうとすれば、多くのプレシャーから解放される」

一時はストライクが全く入らない程苦しんだ右腕だが、今季は23試合に登板し4勝2敗6セーブ、防御率3.65をマーク。最速100マイル(約161キロ)の剛速球を投げ、抑えにも抜擢されたバードの野球人生はまだまだ続きそうだ。

【動画】イップスを克服してメジャー復帰を果たしたバード 絶望の淵から這い上がった男のボールが100マイルを記録した瞬間

【動画】イップスを克服してメジャー復帰を果たしたバード 絶望の淵から這い上がった男のボールが100マイルを記録した瞬間 signature

(Full-Count編集部)

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