宮本信子、夫・伊丹十三監督の言葉で続けられた女優業「あなたはいい女優なんだよ」

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映画『STAND BY ME ドラえもん 2』のび太のおばあちゃん役で出演する宮本信子 クランクイン!

現在公開中のドラえもん50周年記念作品『STAND BY ME ドラえもん 2』でのび太のおばあちゃん役を務める女優の宮本信子。本作の脚本、共同監督として作品に参加している山崎貴監督とは“伊丹組”という共通点で深いつながりがあり、本作出演を「とても素敵なご縁」と表現した。そんな宮本が、最高のパートナー・伊丹十三さんの、監督、そして夫としての思い出を語った。

■“伊丹組”の縁がつないだ『STAND BY ME ドラえもん 2』出演

日本アカデミー賞最優秀監督賞を受賞した『ALWAYS 三丁目の夕日』、『永遠の0』をはじめ、数々の名作を世に送り出してきた山崎監督。映画監督として作品を手掛ける前は、所属する白組で伊丹監督が手掛けた作品のSFXやデジタル合成を担当するなど、本人も「僕は伊丹組で映画を学んだ人間」と公言しており、伊丹監督の妻であった宮本とも浅からぬ縁でつながっている。

宮本も山崎監督から、優しくも芯のあるおばあちゃんという役をオファーされたことに「長く生きているといいことがあるのね」と笑顔を見せ、山崎監督が伊丹監督を慕っていることに「本当にありがたいですね」としみじみ語る。山崎監督の期待通り、劇中では、のび太くんを深い愛で包み込む素敵なおばあちゃんを好演。大人のび太の声を演じた妻夫木聡も、宮本が演じるおばあちゃんの温かさに“ドラ泣き”したことを本作の完成報告会で話している。

1984年に映画『お葬式』で映画監督デビュー(「伊丹十三」名義)した伊丹監督。そこから10本の映画で監督を務めたが、すべての作品に宮本は出演している。「私にとっては本当に大きな出会いでした。10本の映画すべてに出させてくれたんですから。それもいろいろな役をやらせてもらって…。ずっとプレゼントをもらっているような感覚でした」。

伊丹監督との思い出を懐かしそうに語った宮本。中でも印象的だったのが、伊丹監督が手掛けた脚本だと言う。「日本の邦画界がどん底のとき、伊丹十三が彗星(すいせい)のごとく監督として現れたんです。なんといってもすごいのが脚本。どれも素晴らしく面白い。市川崑先生も『伊丹くんの脚本はすごい、誰も書けない』とおっしゃっていましたから」。

■監督、そして夫として女優・宮本信子を支え続けた伊丹十三さん

プライベートでは夫婦、作品に出演しているときは監督と女優という関係性。宮本は、仕事とプライベートはかっちりと分けたいタイプと語っていたが、「なかなか難しい部分はありましたね」と笑う。

現場での伊丹監督はとにかく熱い。「本当についていくのに一生懸命。とても厳しく女優として育てていただきました。私だけではなく伊丹組の俳優さんたちはみなそうでしたが、とにかく監督からOKをもらわなければいけない。決して楽しいことばかりではなかったですが、クランクアップしたときの達成感はほかの現場では味わえないものでしたね」と当時を振り返っていた。

デビュー以来、半世紀以上の年月が流れた。近年でも連続テレビ小説『あまちゃん』や『ひよっこ』などに出演し、お茶の間で人気を博しているが「私は家庭を持っていたこともあり、どっぷりと業界にいるという感覚ではないんです」と語る。実際、結婚、出産後はしばらくのブランクがあった。

「子どもを産むということは、子どもを育てるという責任があると思っていたんです。自分自身のなかで、家庭と仕事の優先順位はしっかり持っていたので、必然的な流れでした。もちろん同世代の人が活躍しているのを見て心に思うこともありましたが、そこでお仕事がなくなっても、それは仕方ないことだと割り切っていましたね」。

揺れることなく自身の思いを貫き通せたのも伊丹監督のおかげだと言う。「私たちの出会いは職場でしたが、いつも伊丹さんは『あなたはいい女優なんだよ』と言ってくれました。その言葉があったから、ぐらぐらせずに済んだんでしょうね」。

宮本の人生に非常に大きな影響を与えてくれた伊丹監督がつないでくれた『STAND BY ME ドラえもん 2』への出演。新型コロナウイルス感染拡大の影響で公開が延期されていたが、11月20日、無事に初日を迎えた。「たくさんの子どもたちと一緒に劇場で観たい」という宮本の思いから、映画公開まで観賞することを封印していたという。「とにかく素敵な世界観を堪能したいし、皆さんにも楽しんでいだだけたら」とメッセージを残してくれた。(写真:高野広美)