【大阪都構想住民投票】畠山理仁の現地ルポ! 有権者は選挙の度に試される(4)

10月31日JR大阪駅御堂筋北口での街宣

今回、大阪を訪ねた理由はもう一つある。都構想「反対派」として、告示以前から大阪入りした人物がいたからだ。れいわ新選組の山本太郎代表である。

山本代表は住民投票告示日(10月2日)から大阪入りし、都構想反対の立場で街頭演説を重ねていた。演説場所を事前告知せず、1日5〜6カ所でゲリラ演説をしていたのだ。

住民投票が告示されると、れいわ新選組の支持者と思われる人たちから「ぜひ大阪で山本太郎さんを取材してください!」と私のもとに連絡が来るようになった。

「みんな気軽に勝手なことを言うよな〜」

これが私の正直な気持ちだ。大阪までの交通費はどうするのか。その上、山本代表がどこで演説するのかは事前に告知されない。関係者に聞いても頑なに教えない。もし、大阪まで出かけて空振りだったらどうするのか。そんな危険なギャンブルはできない。そもそも取材は人に言われてするものではない。自分で決める。

そう考えているうちに、11月1日の投開票日が近づいてきた。すると、ようやく山本代表の演説場所が告知された。10月31日の夜、大阪駅御堂筋北口で演説をするという。

ここに行けば確実に取材できる。この情報が最後の決め手となり、私は大阪に向かった。

JR大阪駅御堂筋北口には、れいわ新選組がいつも街頭演説で使っているトラックが置かれていた。ピンク色のワゴンの横には「あかん! 都構想」の文字。偶然通り掛かる人たちも足を止めて聞いている。事前告知があったためか、200人ぐらいは集まっている。

これまでのゲリラ演説の様子はYou Tubeでも公開されていた。都構想反対の演説で、山本代表は大阪維新の会の都構想を「詐欺だ」と厳しく批判していた。
「『大阪の成長を止めるな』って言っていますけど、そんなに大阪は成長したのか」
そう言って、実際の成長がどれほどのものであったのかを聴衆に見せていた。

演説会場に設置したモニターに大阪維新の会のビラを示し「デマやん」「センスなさすぎ」「10年間大阪を衰退させてきた維新の会」と批判していた。

「住民サービスに還元されますというチラシには、いいことだけ書いてある。『水道料金値下げ』『学校給食無償化』『高齢者サービス徹底拡充』。誰がやるの? どうやってやるの? そう思って、よ〜く目を凝らすと、チラシの下に小さな文字が書いてある。拡大します。拡大しても読めない? じゃあ、もっと拡大してようやく見えてくる文字。なんと書いてあるか。『あなたの一票で決まる、特別区長の裁量次第です。』」

つまり、今の住民サービスが維持されるかどうかは、現時点でわからないということだ。そして山本代表は最後にこう付け加えた。

「そもそも住民投票をしていただく前提は、国会答弁にもある通り。『政令指定都市をやめて分割することは、元々の市民にデメリットがあるから住民投票をしてもらおう』という建て付けです。大阪市廃止されたら元に戻せませんよ」

 

山本太郎のもともとの政治的基盤は大阪ではない。その山本が、いったい、なぜ大阪に来るのか。

山本は10月上旬から約3週間にわたり、大阪市内で「あかん! 都構想」と大書した街宣車とともに演説をしてきた。街宣場所を事前告知しないゲリラ演説は1日5〜6カ所になる。

10月31日夜の街頭演説が終わった後、朝日新聞の記者とともに山本に囲み取材をすると、山本はその理由を次のように述べた。

「大阪自体が新自由主義の実験場として解体され続けていることは皆さんもご存知のことじゃないですか。やっぱりこの10年、リーダーシップを発揮して大阪を疲弊させた現実があるんだったら、もう、交代ですよ、交代。大阪はもう別の勢力に変わらなきゃいけない。それを考えるんだったら、当然、私たちも名乗りを上げる権利がある。

大阪はやっぱり第二の都市なんで、そのポテンシャルは十分にある。この10年、大阪を底上げできなかった政治的責任はやっぱり問われるべきであると思っています」

それにしても、大阪維新の会が「詐欺である」という言い方はキツく思える。
「何て言えばいいですか? 他にぴったりくる言葉がないんですよね。マルチ商法とか? なんて言えばいいですかね? ごめんなさい。語彙力がないんで、逆に募集したいです。こういった病魔に対して病名をつけてほしい」

それでも大阪維新の会は選挙で圧倒的に強い。山本は大阪維新の会の強さの理由をどう分析しているのだろうか。

「人々の気持ちをある意味で煽るというか、鼓舞するっていうのがすごく巧みなんだと思います。(大阪維新の会が言う)『大阪の成長を止めるな』って言葉一つをとっても、見たときにすごく僕自身が鼓舞されましたもん。『そうだ! 止めるな!』って心の中で思いましたもん。でも、ちょっと待てよって話なんですけどね」

山本は街頭演説で「大阪は言うほど成長していない」と力説してきた。

「成長を止めるな、っていうほど成長してませんけど? って話です。いろんな都市に負け続けている状態の中で、『大阪の成長を止めるな』って、一体、何の話? そういうところがすごく巧みだなって思います。

(大阪維新の会が強いのは)代わりがいないっていうのが一番。私たちは代わりになりたい。そこはステップバイステップだと思う。彼らの場合はまずメディアに取り上げられる。橋下さんのスタートのときからずっとメディアは追い続けています。一度もメディアから外れたことがない。与党になっていく過程でもやっぱり大注目してクローズアップしてきたわけです。私たちは最終日の取材もテレビカメラは最初のほうだけ撮りに来たけど、もう、囲みになった時点でいない。東西の朝日新聞さんと畠山さんしかいない」

 寂しいでしょ? と私が聞くと、山本は笑って答えた。

「寂しくない(笑)」

この時の囲み取材で、山本代表は大阪で地方議員を作る可能性についても言及した。

 

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