いながきの駄菓子屋探訪22栃木県佐野市「おおつか商店」ご当地グルメ・いもフライが楽しめる店

全国約250軒の駄菓子屋を旅した「駄菓子屋いながき」店主・宮永篤史が、「昔ながらの駄菓子屋を未来に残したい」という思いで、これまで息子とともに訪れた駄菓子屋を紹介します。今回は栃木県佐野市の「おおつか商店」です。

いもフライを出している駄菓子屋があった

栃木県佐野市のご当地グルメといえば、まず浮かぶのがラーメン。そして、蒸したじゃがいもを串に刺しパン粉をつけて揚げ、ソースをかけていただく「いもフライ」です。いもフライについて事前に調べたところ、市内には取り扱うお店がいくつもあり、値段もだいたい100円以下とのこと。どこか駄菓子的な雰囲気を持っている食べ物に感じたので、これを目当てに現地を訪ねてみることにしました。

駄菓子屋探訪なので、できれば駄菓子屋でいもフライを出しているところを見つけたい。そんな気持ちで訪ね歩くこと数店(※単なる楽しい食べ歩きです)、城北小学校の真正面に建つ「おおつか商店」に入ると、そこがまさしく思い描いていたお店でした。

商品が整然と並ぶ、スッキリとした店内。入って右側が駄菓子売り場になっていて、左側にレジ、その奥が揚げ物の調理場になっています。1本80円のいもフライは注文後から調理してくれるので、揚げたてを食べることができました。しっとりとした食感で甘みのあるじゃがいもに、サクサクの衣。香辛料をしっかりと感じるソースが特徴的で、地元の生産者が作る中濃フルーツソースを使っているとのこと。おいしすぎてあっという間に複数本食べきってしまい、すぐに追加注文をしました(笑)。

時代が変わっていくのを肌で感じる

おおつか商店は平成元年(1989年)に、在宅でできる仕事をしようと自宅を改装して創業。小学校の目の前という立地、実家の食料品店で出していたいもフライがおいしかった思い出から、揚げ物を出す駄菓子屋にしたそうです。以前は同じ学区に複数あった駄菓子屋も、現在はここだけになってしまったとのこと。いもフライは駄菓子屋発祥ではなく戦前のリヤカー屋台から始まった食べ物で、市内に多数あるいもフライを出すお店でも、駄菓子と組み合わせているところは、ほぼないのではないか、と教えてくれました。

「揚げ物って、タネによって温度を変えなきゃいけないから大変なんですよ。例えばいもフライを揚げて、そのままハムカツを揚げると膨らんじゃう。唐揚げをやって、そのままいもフライを揚げると焦げちゃう。さすがにもう歳だから、メニューを少し減らさせてもらって負担を減らしました(笑)。うちは小学校の前にあるから、このあたりも子どもの数が減ったなというのを実感します。昔は土曜日の午前中に学校があって、その午後が一番混んだんですよ。きっと学校で遊ぶ約束をしてから帰ってたんでしょうね。今は家族連れで来る子も多くなりました。客商売をしてると、時代が変わっていくのを肌で感じますよ」

上品で優しい語り口ながらも、言葉の端々から「良いものを提供したい」という職人のプライドを感じさせてくれた店主。シンプルな調理品だけに、素材の選び方や組み合わせ、手間のかけ方がそのまま味に反映されるという難しさがあるそうです。安価でおいいしく、駄菓子屋と相性の良いいもフライは、「もっと全国に広がっても良いのでは?」と思わせる逸品でした。

おおつか商店

住所:栃木県佐野市堀米町1126

電話:0283-23-5928

営業時間:10:00~18:00

定休日:日曜日

[All photos by Atsushi Miyanaga]

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