社説:辺野古訴訟却下 菅政権は対話へ転換を

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 沖縄県の主張に向き合わない裁判でいいのだろうか。

 米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設を巡り、県の埋め立て承認撤回を国土交通相が取り消す裁決をしたのは違法として、県が裁決の取り消しを求めた訴訟の判決で、那覇地裁は請求を却下した。

 「県の訴えは裁判の対象にならない」との国の主張を認め、国交相の裁決の是非さえ判断しない門前払いだ。口頭弁論は2回だけで、県は専門家の意見書を提出するとして弁論継続を求めていた。県の考えを聞くよりも形式的に法判断した格好だ。

 県は今回の行政事件訴訟法のほか、地方自治法を根拠に国の埋め立て手続きの不当性を裁判に訴えてきた。しかし「地方自治体の自主性・自立性を著しく制約している」との主張は認められず、敗訴が続いている。

 提訴には「予算の無駄遣い」との批判もある。ただ、県にとって埋め立て工事を止める手段は、裁判に訴えるしかないのが実情だ。

 県を突き動かすのは、昨年2月の県民投票で7割超が埋め立てに反対した根強い民意だ。さらに、埋め立て予定海域で「マヨネーズ並み」と言われる軟弱地盤が見つかったことがある。

 防衛省は工期を9年超に延ばすとしたが、軟弱地盤を完全に改良するのは不可能との専門家の見方もある。普天間の移設決定から20年近くたち、さらに解決は長引くことになる。

 政府は普天間の危険性除去を強調し、辺野古移設が「唯一の解決策」と繰り返すが、見通しが立たないのが現実だろう。

 菅義偉政権に代わったのを機に、県と裁判で争うのでなく、真の対話を重ねる方向に転換すべきだ。普天間に関する「負担軽減推進会議」の作業部会が、県の要請で1年2カ月ぶりに開かれた。さらに協議の場を増やしてほしい。

 菅首相は所信表明演説で「沖縄の皆さんの心に寄り添いながら(基地負担軽減の)取り組みを進める」とした。一方で、辺野古移設について「工事を着実に進める」と強調している。

 菅氏が政治の師と仰ぐ故梶山静六元官房長官は、普天間返還合意に尽力し、沖縄の思いを大切にした政治家とも言われる。

 菅氏は在日米軍基地の約7割が集中する沖縄の負担と犠牲を、どこまで理解しているだろうか。強行するのではなく、まず沖縄の民意に反する工事を止めることから、真の対話が始まるはずだ。