ロシアンブルーの猫女将がいる京の旅館「うちの福招きねこ〜西日本編」vol23

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リリー。玄関で招き猫の置物と一緒に

JR京都駅から徒歩3分。京都タワー東側の京の旅館通りにある「藤家旅館」は、純和風でアットホームな雰囲気の老舗旅館。女将・内藤津以子さん(56)とともにお客さんを出迎えているロシアンブルーのリリー(メス、9歳)は2代目〝猫女将〟として有名だ。初代のエミリー(メス、11歳半で没)から数えると、ロシアンブルーの猫女将が宿泊客をもてなして20年になるという。内藤さんに初代エミリーの思い出や、リリーの活躍ぶりなどを聞いた。

初代のエミリー。9歳ころ(内藤さん提供)

内藤さん もう20年前になりますが、当時、小学2年生と幼稚園児だった娘たちがホームセンターのペットショップにいたロシアンブルーの愛らしさに一目惚れ。関東のブリーダーさんから譲り受けたのが先代のエミリーでした。ここにやってきたのは生後4カ月くらい。可愛くて、家族みんなエミリーにメロメロになりました。

うちの旅館は1階が家族の部屋で、2階の6部屋が客間です。エミリーが3、4歳になると、自分で階段をのぼっていって、お客さんが宿泊する部屋を巡回するようになりました。気に入った人たちには、添い寝するようにもなり、そんなおもてなしぶりがテレビや雑誌などで報道されて、「ロシアンブルーの猫女将がいる旅館」として知られるようになりました。

エミリーは気に入ったお客さんがいると添い寝をすることもあった(内藤さん提供)

エミリーとは幼かった娘たちの成長と歩を合わせるように家族一緒に暮らしてきましたし、お客さんのアイドルでもあったので、2011年7月、病気で亡くなったときは、家族もファンの方々も、大変悲しみました。しかし一方で、失った悲しみばかりではなく、敬意というか、感謝の念もわいてきたんです。たくさんの思い出をありがとうって。その気持ちをずっと忘れたくなかったのと、「猫に会いたい」というお客さんの期待に応えたいとの思いもあり、しばらく経ったのち、再びロシアンブルーを飼うことに決めました。それがリリーです。生後2カ月のころ、埼玉のブリーダーさんに飛行機に乗せてもらい、伊丹空港までお出迎えに行った時のことが思い出されます。

客間を巡回、接客するのが仕事

生まれ変わってまた私たちのところに来てほしい。そんなひそかな願いもあったんです。でも、外見は似ていますが、リリーはエミリーの生まれ変わりではないようです。というのも性格がまるで逆。おとなしくて品があったエミリーとは違って、リリーは、部屋中を走り回ったり柱を駆け上ったりとやんちゃ娘でした。歳を重ねるにつれ、猫女将としての自覚がでてきたのか、今は落ち着いて接客できるようになりましたね(笑)。

1階では外への飛び出し防止と室内を動き回れるよう、7、8mくらいのリードに繋いでいる

リリーが1歳くらいのころ、30代半ばの男女が泊まられたことがありました。2人はネットで知り合い、お互い猫好きだったため意気投合して遠距離で付き合い始めたんだそうです。その日、男性はプロポーズをするつもりでしたが、なかなか勇気が出ない…。そんなとき、部屋にリリーが入ってきたのがきっかけで場が和み、彼は自分の思いを彼女に伝えることができたそうです。リリーが背中を押してくれたんですね。婚姻届を出すときに、リリーが証人ということで肉球のスタンプが欲しいというので、差し上げたのを覚えています。

和の意匠が施された1階の廊下天井

リリーは、昼間は奥のこたつがある部屋で寝ていることが多いです。夕方になるとエサを食べ、そのあとはリードをつけたまま玄関前でじっと座って、チェックインされるお客さんを出迎えたり、旅館前を通る人たちを観察したりして過ごしています。「あら、リリーちゃん、今日も待っててくれたの、お利口さんね」と通勤帰りに必ずなでてくれるOLさんなどもいて、道ゆく人たちを眺めるのが好きなようです。ほんと、看板女将ですよね。

今年4、5月は営業を自粛し、ずっと閉めてたので、リリーは「えっ、私の仕事は?」と思ってたんじゃないかな。その後は、宿泊者を1日2組に限定するなどして、なんとかやってきましたが、経営は厳しいです。GoToトラベルが始まってから、京都への人出は戻りつつありますが、こんなに海外の方が少ない京都の秋は初めてです。うちもコロナ前は海外からのお客さんが多く、外国の方は先の予約を早く入れられることが多いので、直近で予約される日本の方々はリリーに会いに来たくても、なかなか予約がとれないという状況が続いていたのですが、海外のお客さんが少ない今、「やっと予約がとれた」とリリーに会いにきてくれるファンには、とても感謝です。

女将の内藤さんと猫女将のリリー

宿泊者の方々に「また京都へ遊びに行きたい」と思ってもらえるよう、美味しいお店を紹介したり観光の案内をしたりと、いろいろおもてなしをさせて頂いているんですが、リリーはただそこにいるだけで、あるいは、ひょいっとやってきてゴロンとなるだけで、お客さんの心を鷲掴みにするんです。リリーと接したことが京都の楽しい思い出のワンシーンになっている方もおられるようです。リリー、ずるい!って思うんですけど、猫女将にはかないませんわ(笑)。

襖が少し開いていれば、このように自分で開けることもできる。さすが猫女将

【旅館名】「藤家旅館」
【住所】京都市下京区不明門通七条下ル
【電話】075-351-3894
【HP】https://fujiyaryokan.com

夜は玄関前で道ゆく人を眺めるのが日課
藤家旅館。元々は東本願寺の門徒のための宿坊だったという
誰かこないかにゃー

(まいどなニュース特約・西松 宏)