社説:関西広域連合 10年節目に新たな展開を

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 2010年、全国初の府県境を越える特別地方公共団体となった関西広域連合が来月、発足後10年の節目を迎える。

 ドクターヘリの共同運航などの事業で成果を上げているが、期待された国からの権限と財源の移譲は進んでいない。

 節目に当たって現行の体制を見直すとともに、今後の新たな方向性を打ち出すことも求められそうだ。

 関西広域連合が設立されたのは、経済をはじめとする多くの分野で、関西の地盤沈下が顕著になってきたからである。

 長らく国の中心地として、歴史や文化、産業基盤に恵まれながら、東京一極集中の進展によって、国内での相対的地位は低下し続けている。

 流れを変えるには、地方分権を進め、多極分散型の社会に転換する必要がある。

 そこで、広域的な課題の解決に取り組むだけでなく、国出先機関の権限の受け皿となることを目指した。

 発足時のこうした問題意識については、これからも持ち続けるべきだろう。

 同連合には、京都府、滋賀県など近畿6府県と鳥取、徳島両県、京都市など4政令指定都市が構成団体として参加する。首長が協議する「連合委員会」と、地方議員による「連合議会」を備えている。

 この体制の下で、11年3月に起きた東日本大震災では、参加する府県ごとに担当の被災県を決めておく「カウンターパート方式」を採用。きめ細かな支援を行い、存在感を示した。

 ドクターヘリの共同運航は、府県の事業を同連合に順次、移していった。現在は7機が配備され、救命効果の高い30分以内に救急医療を提供できるようになった、と評価されている。

 受け持つ広域事務は、防災、医療、観光、産業振興、環境保全など7分野に及ぶ。

 さらに内容が充実するよう、努めてほしい。

 一方、国の事務、権限の移譲については、トップの連合長を務める井戸敏三兵庫県知事でさえ、「道半ば」と認めるほど、成果に乏しい。

 昨年、こうした現状を分析した有識者の検討会からは、どのように分権を進め、関西の利益につなげるかを示す構想や、その実現に向けた政策を立案できる事務局が必要だ、との声が上がった。

 指摘を踏まえて、新たな方向性を模索していくことが、大事ではないか。

 新型コロナウイルスの感染拡大で、過密の弊害が広く認識されるようになった。東京一極集中を改めようという機運が生じている。これを、関西の復権につなげたい。

 10年の節目を機に、同連合が採択した「関西新時代宣言」では、ポストコロナの時代にふさわしい社会づくりを進めなければならないと唱えたうえで、「国土の双眼構造」の構築を実現する、とした。

 大災害や疫病が発生した際、首都機能を代替できる態勢を関西に整えようというわけだ。

 宣言にとどまらず、具体的な戦略を備え、今後の新たな展開としてもらいたい。