神戸山口組藤田若頭補佐に逆転無罪判決 東京高裁が被害者側の虚偽証言を指摘

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「主文、原判決を破棄する。被告人は無罪」

その瞬間、法廷内の張り詰めた空気が一変した。組員が法廷の外に走り、メモを取る取材記者らも手を止めた。証言台の前に立つ神戸山口組・藤田恭道若頭補佐(二代目英組組長=大阪西淀川)だけが、真っすぐに裁判長を見つめていた。

11月18日、東京高裁で下された逆転無罪の判決は、驚きをもって業界内に広まった。この裁判は、脱退を申し出た英組のA幹部に対し、藤田若頭補佐が電話で脅迫的な文言を発したとして、暴力行為等処罰法違反の罪に問われたものだった。一貫して無罪を主張したが、今年3月の一審判決では、懲役1年2月の実刑判決が言い渡されていた。

争点は、藤田若頭補佐がA元幹部に対し、「破門にしたるわ。その代わり、きっちりケジメ付けたるからな」や「どこに逃げても追い込んだるからな」などと言って、脅したか否かで、通話記録はあるが、録音などはされていなかった。そのため、A元幹部らの証言を含む証拠によって有罪判決が下されたが、二審の東京高裁はその評価をバッサリ切り捨てたのだ。

当時、A元組員は携帯をスピーカーフォンにして藤田若頭補佐と通話していたとし、そばにいた内妻も脅迫の内容を聞いたと証言。

しかし、警察官によって作成された2人の調書にはスピーカーフォンの使用について記載がなく、内妻も「携帯から被告人の怒鳴っている感じの声が漏れ聞こえたが、何を言ったのかまでは分からなかった」と供述。その後、検察官に対しては「スピーカーフォンにして、被告人が怒鳴り声で『けじめを付ける』とか『追い込んだる』とか言うのを聞いた」と供述。東京高裁は、この供述の変遷が不自然であり、信用できないと指摘したのだ。

裁判長に向かって「ありがとうございました」と一礼

「核心部分の脅迫文言に関わる事情について、A元組員と内妻が口裏を合わせてまで、虚偽の供述をした疑いが濃厚であり、これ自体が、脅迫されたという被害申告も虚偽であるとの疑念を抱かせる」と続け、脅迫文言があったとは認定できないとした。

さらに、藤田若頭補佐は音信不通になったA元幹部に、〈逃げ回って何が生まれるんや。辞めるならワシに断り入れに来るのが筋やろ。きちんと話だけしなければ事が片付かんやろ〉とのメッセージを送信しており、A元幹部が言うタイミングで脅していたのならば、そぐわない内容だと指摘。

むしろ、問題となった通話の際、電話に出なかったことを叱責し、A元幹部から「破門にでも何でも好きにしてください」と言われて電話を切られ、連絡がつかなくなったという藤田若頭補佐の証言に整合するとしたのである。

「一審判決では、暴行したとか監禁したとかならまだしも、筋を通すために電話で組員を唸り飛ばしただけでも、罪になるんやと驚いたもんや。せやけど、今のご時世はあかんのやろな。事件自体が虚偽の申告やないかと、裁判所が疑ったにしても、ヤクザの裁判で逆転無罪が出るんは異例のことやで」(関西の組織関係者)

藤田若頭補佐は、判決文が読み上げられる長い間、背筋を伸ばし、頷きながら耳を傾けていた。最後に、「ありがとうございました」と裁判長に向かって頭を下げ、退廷。法廷の外に出た際、ようやく笑みがこぼれ、離れた場所には涙を拭う親族の姿もあった――。