楽天・松井の抑え復帰の裏に早くも“ドラ1早川効果” 石井監督が見据える投手再編

楽天・早川隆久(左)と松井裕樹【写真提供:楽天野球団】

エース則本昂も「来季普通にこの世界でやれる」と見る大物新人

今季4位に沈み、石井一久GMが来季監督を兼ねることになった楽天。ドラフト会議で最速155キロ左腕の早大・早川隆久投手を4球団競合の末に引き当てたことをきっかけに、今季先発に転向していた松井裕樹投手のリリーフ復帰が決まるなど、課題の投手陣の再編が進んでいる。「日本一」を目標に掲げたチーム作りが始まっている。

10月26日のドラフト会議で早川を手中にした効果は、実に大きい。「新人には、期待はしても当てにしてはいけない」というのがプロ野球界ではよく言われるが、担当の沖原スカウトは「プレッシャーをかけるわけではないが、私は即戦力で1年目から10勝するとずっと言ってきた」と興奮を隠せない。エースで選手会長の則本昂も「大学ナンバーワン投手。何か聞かれれば全力で答えたいが、クレバーな選手なので、指導されなくてもやれると思う。来季普通にこの世界でやれるだろうし、ライバルだと思っている」と見ている。

しかも早川に続き、ドラフト2位で法大の156キロ右腕・高田孝一投手、3位でENEOSの150キロ左腕・藤井聖投手、4位で亜大の150キロ右腕・内間拓馬投手を次々と指名。即戦力投手4人の獲得に成功した。

これを受けて、11月16日にスタートした秋季練習中、石井監督が松井に抑え復帰を打診。松井も「僕もそのつもりでした」と応じた。早川が希少な「左の先発」として機能するなら、松井も後顧の憂いなく抑えに専念できるというものだろう。

リーグトップのチーム打率.258の反面、リーグ5位の防御率4.19

楽天は今季、打線がリーグトップのチーム打率.258、総得点557を誇り、王者ソフトバンクをも上回った。課題は、チーム防御率がリーグ5位の4.19に低迷した投手陣とハッキリしている。とりわけ、「後ろ(抑え)のピッチャーから構築していくのがセオリー」と明言している石井監督にとって、クローザーの人選は肝要だった。

今季開幕当初に抑えを務めた森原は、不振で7月下旬に降格。ブセニッツがセットアッパーから配転されてチーム最多の18セーブを挙げたが、不動の守護神を擁したソフトバンク、ロッテ、西武との差は明らかだった。最多セーブのタイトルを獲得した昨年を含め30セーブ以上を4度マークしている松井なら、実績から言って申し分ない。

一方、先発ローテは右の則本昂、涌井、石橋、左の松井、弓削、塩見というバランス抜群の陣容で今季開幕を迎えた。チームも8月下旬まで首位争いを展開したが、その後失速しズルズル後退。結局クライマックスシリーズ進出圏内の2位ロッテにわずか2.5ゲーム差とはいえ、Bクラスの4位に終わった。3連勝スタートだった則本昂は5勝7敗。松井も先発で結果が出ず、10月からはリリーフに回った。

もっとも、涌井は11勝4敗で史上初の3球団での最多勝獲得を達成し、腰の張りで出遅れた岸も10・11月度の「大樹生命月間MVP賞」に輝くなど上げ潮で、今季トータル7勝0敗、防御率3.21。この上、則本昂が復調し、早川らルーキーの奮闘があれば、ソフトバンクにも決して引けをとらない陣容になりそうだ。

26日に始まった契約更改では、報道陣から来季の目標を聞かれた選手が、「日本一」と口にしたり、色紙に書き込んだりするシーンが目立っている。松井は「日本シリーズをテレビで見て、あそこで投げて優勝の瞬間マウンドに立っていたいと感じた」と語り、牧田は「まだなったことがないので」と照れ笑いした。石井監督が就任会見で「2013年の日本一の景色を、もう1度東北の皆さんに見せることが僕の使命」と掲げたことに呼応したかのようだ。それも、あながち夢物語とは言えない雰囲気が漂い始めた。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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