今井絵理子さん長男、難聴乗り越えプロレスデビューへ 夢は世界王座

田村代表とトレーニングに励む今井礼夢さん=川崎市多摩区のヒートアップ道場

 生まれつき耳が聞こえない先天性難聴の今井礼夢(らいむ)さん(16)=東京都国分寺市=が来月、プロレスラーとしてデビューする。川崎市多摩区のプロレス団体「ヒートアップ」でプロテストに合格。今は初戦に向けハードトレーニングを重ねながら、「強くて優しいプロレスラーになりたい」と目を輝かせる。夢は世界の舞台でチャンピオンベルト獲得だ。

 「遠慮してはダメ」「気持ちでぶつかれ」

 熱気が満ちた道場に、体がマットにたたきつけられる音と指導の声が響く。リングでスパーリングに励む礼夢さんに、同団体の田村和宏代表(40)が手ぶりを交えて指導をする。

 礼夢さんが入門したのは3年前。母で女性ボーカルグループ「SPEED」の元メンバー今井絵理子さん(37)=自民党参院議員=と田村代表が障害者支援で共鳴し、交流を始めたのがきっかけだった。田村代表の姉がダウン症で、同団体は障害者支援や青少年育成などに力を入れてきた。

 礼夢さんは今春、都立ろう学校の中等部を卒業。高等部に進む道もあったが、「トレーニングに集中したい」とプロレス一本に絞った。これまで1週間に2~3日だったトレーニングは土・日曜を除くほぼ毎日に増やし、練習を積み重ねてきたという。

 プロテストは、スクワット500回、腕立て伏せと腹筋各50回を3セット、縄跳び5分間─などハードメニュー。10月初旬のテストは縄跳びがクリアできなかったが、毎日特訓して同30日に合格を勝ち取った。

 道場への入門者は多いが過酷な練習で退会するケースがほとんどで、プロテストまでこぎ着ける人はわずかという。一緒にデビュー戦を迎える川上真吾さん(34)は「十分な練習量をこなして上手」とたたえ、田村代表も「聴覚障害があるとは思えないぐらいコミュニケーション能力がある」と笑顔を見せる。

 12月7日に新百合トウェンティワンホール(麻生区)で開かれるデビュー戦は、田村代表とのシングルマッチだ。礼夢さんが尊敬するのは米国のプロレス団体・WWEに所属する戸澤陽(あきら)選手といい、「将来は米国でも試合をしてベルトを取りたい」と意欲を見せている。

© 株式会社神奈川新聞社