【おんなの目】 野口五郎で待ち合わせ

 先日Aさんとバス停で待ち合わせをした。バスに乗ってB町に行くのだ。

 問題は、待ち合わせ場所だ。バスの到着するその場にいるのか、すぐ横の待合室の中で座って待つのか。二つに一つで簡単のようだが、しっかり打ち合わせをしていないと、二つの場所を行ったりきたりさ迷うことになる。

 バスを待つのは、待ち合室でしょ、と勝手に思い込み、どんと座り新聞なんぞを読んで周囲に目を配っていないと相手を見つけることが遅くなり、連れにいらぬ心配をかける。「まあ、ここに居たの。私は暑いのにバス停で待っていたのよ」と出発寸前のバスに息を切らせて乗り込むはめになる。

 待ち合わせを決めたら私はいつもこう言う。「私は、携帯電話を持ちませんので連絡できません。もし会えなかったら、私を置いてそのまま行ってください。もし、あなたがこられなかったら、私は行きます」

 月一回、A駅で待ち合わせをする友人がいる。その前日、私達はこう言う。「では明日、野口五郎で」。野口五郎の歌に“私鉄沿線”がある。中に次のような歌詞がある。

“改札口で君のこと いつも待ったものでした”。

 私達は改札口で落ち合う。間違いはない。会うと二人で「良かったね無事会えて。野口五郎いいね」と手を繋ぎルンルンで歩き出す。

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