「悪い中でもしっかり投げられるように」西武宮川が得たプロ1年目の手応えと課題

西武・宮川哲【写真:荒川祐史】

ドラフト1位投手は今季49試合登板して2勝1敗13ホールド、防御率3.83「大事な場面で投げさせてもらった」

ソフトバンクの4年連続日本一で幕を閉じた20年シーズン。西武は3位に終わったが、1軍で活躍を見せたルーキーもいた。19年のドラフトで入団した選手を紹介しているが、6回目は宮川哲投手だ。

奈良県出身だが、より多くの出場機会を求めて東海大山形高に進学し、外野手と投手を兼任していた。3年夏の山形県大会には投手として出場したが、甲子園の舞台に立つことはできなかった。進学した上武大では、4年時に通算9勝を挙げて最多勝を獲得したが、指名漏れを経験。その後は社会人の東芝へ進み、投球フォームの修正に取り組むなどして課題だった制球力を向上させ、西武からドラフト1位指名を勝ち取った。

即戦力として期待されたが、2月のキャンプ中に右太ももの張りで離脱。しかし、新型コロナウイルスの影響で開幕が6月に遅れたことで、シーズンスタートに間に合った。

「キャンプの時、周りを見たらみんなすごくて、もっとやらなきゃと焦ってしまいました。怪我をしてからは、休むときは休むように心がけています。自粛期間中は、キャッチボールや遠投をやっていました。怪我をしていたので、自分にとっていい時間にしようと思っていました」

ルーキーイヤーは中継ぎとして49試合に登板し、2勝1敗13ホールド、防御率3.83の成績を残した。これまで経験したことがない連投が続いたが、シーズン終盤には疲れることに慣れてきたという。

「投げる場所にこだわりは全くないです。言われたところでしっかり抑えるだけです。連投は最初はしんどかったですが、疲れて、持ち直しての繰り返しで、その疲れに身体が慣れてきたという感じです」

大事な場面での登板は「むしろ燃えますね」、メンタル

重要な場面での登板が多かったが「むしろ燃えますね」と、気持ちの強さを見せた。しかし、打たれてしまった後は、上手く気持ちを切り替えることができなかった。

「大事な場面で投げさせてもらったのでいい経験になりましたし、そういう場面のほうが気持ちも入ります。ただ、先発の方の勝ちを消してしまうのは、すごく嫌です。打たれた日は『打たれたー』みたいになるし、次の日も『あー、昨日打たれたー』と思ってしまうこともあります。まだすぐに切り替えられないです。特別に意識してやっていることはないです。寝たりするくらいですね」

自身の武器でもあるパワーカーブを多く投げ始めたのは社会人の時だ。社会人では、ストレートやカットボールだけでは打者を抑えることができず、投げるようになった。それからは精度を上げることに取り組んできたが、より精度を高めていくことが今後の課題だと話す。

「フォアボールが多く、変化球が甘くなって打たれたりする。まだまだです。キャッチボールからしっかり投球フォームを意識して、制球力を磨きたいと思います。1年間の中で、調子が落ちることもある。悪い中でもしっかり投げられるようにしていきたい。1年間投げきって、任されたところをしっかり抑えられる投手になりたい。それを今後の目標にしています」

その堂々としたマウンドさばきからは想像できないが、人前でしゃべることが苦手だ。「いや、ちょっとあんまり……。無理です」と、うつむくが、来シーズンは更なる飛躍を遂げ、お立ち台でも貫禄ある姿を見せてくれることを期待したい。(篠崎有理枝 / Yurie Shinozaki)

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