「子供には無限の可能性」 元ロッテ右腕が野球指導者に伝えたい球速アップへの理解

元ロッテの島孝明さん【写真・編集部】

連載『島孝明のセカンドキャリア―Brand New Days―』第7回

こんにちは、元ロッテの島孝明です。ここ数年の投手の傾向として、ストレートの高速化が顕著に見られます。大谷翔平選手(エンゼルス)の165キロをはじめ、球速アップを憧れとしている野球少年、少女も多いのではないでしょうか。速い球を投げることが全てではないですが、今回は、速い球を投げるためにやっておくべきことなどについて、自分なりの考えをお伝えし、子供や指導者が考えるきっかけになればと思います。

投手において、速い球を投げられることは大きな武器であると考えています。投手と打者との間には、実力だけの勝負が繰り広げられているわけではなく、心理戦の側面もあり、相手投手のストレートが速いという情報が分かれば、それだけで打者から警戒され心理面で優位に立つことができます。

スピードボールを投げるには生まれ持った才能が必要であるように考えられがちですが、才能だけで全てが語られてしまっては、個人の努力は何の意味も持たなくなってしまいます。そうではなく、意志や練習次第で、誰もがスピードボールを投げられる可能性を持っていると私は考えています。自分で自分の能力に限界を決めることなく、スピードボールを投げるという意志を持ち続けて、「どうしたら投げられるようになるのか?」と日々の練習から考える癖をつけておくと良いでしょう。

また、指導者側は、これからの野球界を担う子供たちには無限の可能性で満ち溢れていることを常に念頭に置き、自分には出来るといった「自己効力感」を高めてあげられるようなサポートが大切になってくると思います。それは、子供自らが「もっと上手くなりたい」という向上心を生み出す元となります。

私は高校時代、最速153キロまで球速が上がりましたが、急に出たわけではありません。身体的な面で求められるものを挙げるとすれば、一つは柔軟性であると思います。肩まわりや肘はもちろんのこと、股関節や胸郭、背骨周りといった関節の可動域を広げておくことは、全身の連動性を高め、溜めたパワーを無駄なくボールに伝えることに繋がってくるでしょう。また、筋肉自体の柔らかさも保っておくことで、怪我の防止やパフォーマンスを安定させることに生きてくると考えます。

練習で取り入れていたことは「遠投」、幼少時から水泳もやっていた

身体の柔軟性を高めておくことは、身体の変化に気づきやすくなることから、自己管理能力を高める側面も持ち合わせており、またそれらは年齢を重ねてからも有利に働いてくるため、早期から取り組んでおくと良いでしょう。

これまでは心理的な面や身体面について述べてきましたが、ではそれらを踏まえて具体的にどんな練習方法が良いのでしょうか。私の場合は、遠投を多く取り入れていました。どれだけ遠くに投げられるかといった能力も大事ですが、なるべく低い軌道で投げることを意識してみると更に良いと思います。一方で、遠くに投げようとする意識が強まってくると、上半身の開きが早くなり、ボールもシュート成分が多くなってくるため、身体の開きを抑えつつ遠くに投げるには、自分の身体のどこを意識すると良いのかといった視点から考えることで、更なるパフォーマンスアップに繋がるでしょう。

ここまで目新しいものは特になかったかもしれませんが、こうした基礎的なことをどれだけ当たり前にできるかで差が生まれてくると考えています。また野球だけでなく、身体を使った遊びや様々なスポーツを経験することで、普段とは違った刺激が身体感覚を養ってくれます。私も、水泳やサッカー、スキーなど多岐に渡り色々な経験を重ねてきました。そうして養われた感覚や身体特性は、気づかないうちに自身のプレーの幅を広げることに繋がるはずです。

球を速くする方法に一概にこれといった正解はありませんが、まずはいろいろな経験を通して、身体や技術の土台をしっかりと養っていくこと、それは必ず後の競技生活を豊かなものにしてくれるでしょう。私がこれまで述べてきたことが1人でも多くの人にとって参考となれば幸いです。(島孝明/Takaaki Shima)

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