トランプ米政権の新型ウイルス顧問アトラス医師が辞任 マスク着用に否定的

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トランプ米政権の新型コロナウイルス対策顧問だったスコット・アトラス医師が11月30日、辞任した。アトラス医師はマスク着用などの感染予防策に否定的で、感染症対策の専門家たちから批判されていた。

就任4カ月で辞任することになったアトラス医師は、国民に奉仕する機会を与えてくれたとドナルド・トランプ大統領に感謝した上で、「自分は常に政治的配慮や影響とは無関係に、最新の科学や証拠に頼ってきた」と述べた。

放射線科医のアトラス医師は、スタンフォード大学の保守派フーヴァー研究所の上級研究員。8月に政府の新型ウイルス対策タスクフォースに参加した。そこではマスク着用の有効性に疑義を唱えたほか、ロックダウンに反対し、集団免疫の有効性を主張し続けたため、感染症の専門家たちから厳しく批判された。

10月には、ミシガン州が感染抑制のため行動制限を追加した際、住民に「立ち上がれ」とツイートしたため、論争を巻き起こした。この数週間前には、感染対策に反対する武装グループが同州のグレッチェン・ウィトマー州知事の誘拐を企てた疑いで逮捕されたばかりだった。

アメリカ有数の感染症の専門家で米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)所長のアンソニー・ファウチ博士や、疾病対策センター(CDC)は、アトラス医師がトランプ大統領に、感染拡大について誤った情報や助言を与えていると批判していた。

スタンフォード大学の関係者も、アトラス医師は新型ウイルスとその感染症COVID-19について、医学的知見と異なる考えを広めていると批判。同医師の辞任を「遅すぎたくらいだ」と歓迎し、「うそや誤情報に科学と真実が勝った」と強調した。

米フォックス・ニュースによると、アトラス医師はそもそも130日間の契約で政権に参加。この契約期間が今週中に満了するため、今回の辞任に至ったという。

フォックスが伝えた辞表で、アトラス医師は自分が「パンデミックおよび構造的な政策そのものの両方によって、特に労働者や貧困層に与える打撃を軽減しようと」大統領に助言してきたと書いている。

アトラス医師はさらに、「科学的真実につながる自由な発想の交換」に触れ、「科学と科学論争を守ることが今ほど喫緊の課題だった時代は、ほかに思いつかない」とも述べた。

その上で医師は、バイデン次期政権の新型ウイルス対策チームが「世論の割れたこの厳しい時代に、国を導いていく」にあたり、応援しているとエールを送った。

ジョー・バイデン次期大統領はパンデミック対策について、トランプ氏と明確に異なる姿勢を打ち出している。国民にマスク着用を求め、「科学という岩盤」をもとに政策を決定していくと約束している。

アメリカではこれまでに累計1300万人以上の感染が確認されており、26万6000人以上がCOVID-19で亡くなっている。

11月29日の時点で、11月に新たに確認された感染者は400万人を超え、10月から倍増した。

伝統的に家族が集まる11月26日の感謝祭では、多くの専門家が国民に自宅に留まり、帰省したり大勢で集まったりしないよう呼びかけたものの、国内移動は大幅に減少せず、数百万人が移動した。このためファウチ博士は、感染者の「急増に次ぐ急増」が懸念されると警告している。

一方で、米ファイザーや米モデルナはそれぞれ開発したワクチンの使用許可を申請しており、早ければ12月中にも部分的な供給が始まると期待されている。CDCは今週中にも予防接種実施に関する諮問委員会(ACIP)で、ワクチン供給の具体策を協議し始める見通しで、ファウチ博士は「トンネルの向こうの光が見えてきた」と歓迎した。

(英語記事 Covid: Dr Scott Atlas - Trump's controversial coronavirus adviser - resigns