<いまを生きる 長崎コロナ禍>子ども食堂 在り方模索 ネットワーク発足、連携へ消えない感染不安 

 

 新型コロナウイルスの感染が全国で再拡大する中、長崎県佐世保市内の子ども食堂が運営の在り方を模索している。11月には市内と近郊の11の子ども食堂でつくるネットワークが発足。「顔の見える距離」にある子ども食堂が協力することで、食を通じた支援を地域でさらに広げたい考えだ。

 11月20日午後。テーブルにずらりと並んだ容器に、牛肉のしょうが焼きやカブの煮物などが手際良く詰め込まれていった。市内の子育て支援団体「親子いこいの広場もくもく」が毎月開く「もくもく食堂」。オープン前の持ち帰り弁当作りが佳境を迎えていた。
 もくもく食堂は、多くの親子連れに頼りにされているが、新型コロナの影響で3月から6月まで開催を休止した。再開後は感染対策として予約制にし、参加人数をそれまでの半分の約30人に制限。代わりに会場で提供する食事を詰めた弁当を用意している。
 弁当を利用するのはもくもく食堂に訪れたことがなかった母親がほとんど。仕事で来ることができないシングルマザーもいるが、中には表情や話し方が気になる人も。「弁当を配ったりして触れ合う場があれば『ここで食べない』と声を掛けられるし、何かあったときに話せる関係を築けるはず。弁当と対面の両方を大事にしたい」と数山有里代表は話す。
 以前のような形での再開に踏み切れない子ども食堂もある。「吉井地区地域食堂『えんち』」では毎月、手作りの食事をバイキング形式で振る舞ってきた。だが、毎回子どもから大人まで100人程度が参加するため春先に2カ月休止。5月以降は弁当の配布に切り替えた。
 多世代で食事を共にすることで、中学生が日ごろのことを話し高齢者が耳を傾けるような場面もあった。「良いなと感じていた触れ合いがリスクになるだなんて…」と男澤不二美代表は悔しさをにじませる。一方で、子どもからの「おばちゃん、いつ始める?」の言葉に励まされた。
 男澤代表は高齢のボランティアと一緒に弁当を作っているが、冬を迎えた今、感染への不安は消えない。それでも、できる限り活動を続けたいと考えている。「『あのとき子ども食堂があって助かったな』と思ってもらえたら」
 各地の子ども食堂が手探りで活動を続ける中、数山代表は11月に「させぼ子ども食堂ネットワーク」を立ち上げた。コロナ禍を機にさまざまな課題や困り事について、連携して解決策を探るのが狙いだ。
 今後、定期的に交流会などを開き、情報や食材の共有を進める予定。感染拡大以降、子ども食堂に対し地域住民から寄付の申し出などもあり、ネットワークが窓口の役割を担うことも検討する。数山代表は「子どもだけでなく、親や高齢者などさまざまな人に居場所がいる。子ども食堂が役割を果たせるようにしたい」と話した。

持ち帰り弁当を作る「親子いこいの広場もくもく」のスタッフら=佐世保市谷郷町、SDA佐世保キリスト教会

© 株式会社長崎新聞社