「成功体験を積めば、子供は自分の言葉で語れるようになる」Tomoshi Bito株式会社・廣瀬智之氏インタビュー

25歳の若い社長は、自社が提供している学校教育プログラムについて語る途中で、「従来の教育は画一的な側面があり、時代にそぐわなくなってしまっているのかなと思う」と本音を漏らした。彼と同じことを感じている人間は少なくないだろう。自分が違和感を持ったことや社会で起きている問題について、私たちは主体的に行動を起こすことができているだろうか?新しい時代は待ってくれない。それにTomoshi Bitoはどう挑むのか?選挙ドットコムがTomoshi Bito株式会社代表・廣瀬氏にインタビューを行った。

ジャーナリストになりたかった。でも問題解決には遠回りすぎた

選挙ドットコム編集部 横尾(以下、横尾):早速ですが、現在Tomoshi Bito株式会社で力を入れている事業について教えていただけますか。

Tomoshi Bito株式会社代表 廣瀬智之氏(以下、廣瀬氏):現在特に力を入れている事業は2つあります。1つはシチズンシップ教育パッケージ。もう1つは社会派インフルエンサーの事務所事業。お笑いで言うところの吉本興業のようなことをやっています。

横尾:面白い事業ですね。それに至るまでの経緯はどのようなものだったのですか?

廣瀬氏:私はフォトジャーナリストになりたかったのですが、ジャーナリズムを学べば学ぶほど、「伝えることは大事だけれど、ただ伝えるだけでは問題の解決には遠すぎる」と思ったんです。世の中の社会問題を解決する市民側の土壌作りに関わりたいと思い、起業を決めました。

NPOに課題解決方法をプレゼン!?成功体験を積んでいく教育

横尾:Tomoshi Bitoの事業の1つ、シチズンシップ教育について教えてください。

廣瀬氏:はい。これは全体で20時間前後の学校の授業のプログラムで、子供たちが社会問題と直接の接点を持ち、成功体験を積むことを大事にしながら内容を作成しています

少し具体的に話しますね。普段から社会問題を解決しているNPOや企業から課題解決のためのミッションをもらいます。いくつかあるミッションの中から子供たちに解決したいものを選んでいただき、解決に向けたプロジェクトを実施してもらいます。プランニングも、フィールドワークも子供が自分で行います。最後はミッションを出したNPOや企業に直接課題解決のための方法をプレゼンする、という内容です。

横尾:充実していますね。過程でもたくさんの成功体験が得られそうです。

廣瀬氏:成功体験を私はとても大事にしているんです。最初はピンと来ていなかった様子の子が、終盤に「君は今どんなプロジェクトをしているの?」と聞くと、一生懸命自分の言葉で説明してくれるようになったりするんですよ。答えのない問題に自分なりに答えを出していく探究学習、これが教育の本質だと思っています。

横尾:子供の変化が見られるのは提供側としても嬉しいですね。

廣瀬氏:それが私の成功体験にもなるっていう(笑)。従来の教育は画一的な側面があったと思います。元々高度経済成長を支えるような、とにかく労働の力になる人が求められていた時代もあるので、当時は適切だったと思うのですが、それが時代にそぐわなくなってしまっているのかなと思います。先生が答えのある問いを教えてくれるだけでは、なかなか主体性を育むのは難しいと考えています。社会問題に関心がある人は少なくないのに、それを自分が変えられると思っている人が少なすぎる。その世代に育てられた子供が大人になっていきなり問題解決できるようになると思いますか?難しいですよね。なので、冒頭でも言いましたが、私たちは問題解決できる市民の土壌作りとして学校教育を行っています。

今頑張っている社会派インフルエンサーを支えることが、後の発信者を生むんです

横尾:社会派インフルエンサー事務所事業とはどのようなものでしょうか?

廣瀬氏:こちらはお笑いでいうところの吉本興業のような、社会派インフルエンサー・クリエイターが所属する事務所事業で、名前は「RICE(ライス)」と言います。所属している方は200名前後です。
教育パッケージ事業は土壌作りですが、もちろん今この瞬間へのアプローチも大切ですし、話すのがタブーだとか話しづらいと言われている今社会派の発信をしてくれている方が活動していく場を作らないと、発信者が後に続かないですよね。インフルエンサーの方々に影響されて発言するから自分でもその問題について考えるし、知りに行くし、当事者意識が持てる……という行動の回路が必ずありますから。

これからの時代は「答えのない問題にどう向き合うか」

横尾:廣瀬さんは、10年後の日本はどうなっていてほしいと思いますか?

廣瀬氏:若者が社会を動かす力は大きくなっていそうだな、と思います。これからの時代は「答えのない問題にどう向き合うか?」という方向によりシフトしていくと思うので、柔軟な意識を持った若い世代が活躍するのではと。新型コロナウイルスによる半強制的な従来の社会の様々な問題の見直しも良い機会だったのではないかと思います。

これは私の願望も込みですが、「無理をしなくていい社会」になってほしいです。おかしかったことをこの機会に振り返って、本当に豊かになるためにはどうしたらいいか考えて、見直していく社会。私はその一助になりたいし、その中でもインパクトを出せる存在でありたいですね。

廣瀬智之氏プロフィール
1995年生まれ。滋賀県出身。立命館大学卒。高校生の時、学校の授業で国際協力を学び、途上国の力になりたいとカンボジアに渡航。その後報道写真家を志し、東南アジアやアフリカ、大洋州の国々を取材。発信に取り組む中で、日本の社会・政治への参加意識が低いことを知り、「情報を受け取り、行動をする人」を増やす必要があると気付く。その後社会起業家志望に転向。ボーダレス・ジャパンの起業家採用を受け、新卒入社1年目でTomoshi Bitoを起業。ニュースアプリ「どっち?」「Social Post」の運営を経て、現教育事業を立ち上げる。 

(構成・執筆協力 ひがしみすず @misuzu_higashi)

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