「新しい受診の仕方」 発熱したらまず電話 コロナ・インフル同時流行に備え 長崎県内医療機関 場所か時間分け患者受け入れ

新型コロナ、インフル同時流行に備えた発熱患者の診療体制

 新型コロナウイルスとインフルエンザの同時流行に備え、長崎県内の医療機関が体制づくりを進めている。感染拡大を防ぐため発熱患者と一般患者の接触を避ける必要があり、診療の場所を分けるか時間を分けるかの方法をとる。県医師会は両者が待合室で混在しないよう事前に電話で相談する「新しい受診の仕方」の周知が課題としている。

 「きょうは多かねぇ」。11月下旬、長崎市内のある医療機関を訪ねると、十数席の待合室に、10人ほど患者が集まっていた。換気用の窓は開いていたが、世間話に花が咲き、マスク姿の高齢者は「密になってきたね」とコロナ感染を気にしていた。発熱者が増える真冬に向け、他の医療機関でも想定される光景だ。

 今のところ、インフルエンザの感染者は例年に比べ激減している。県感染症情報センターによると、11月16日から1週間の患者数は0(前年同期289人)。県の担当者は「(新型コロナの予防で)手洗いやマスク着用などを徹底していることが影響している可能性がある」と話す。ただ、県内のインフルエンザの本格的な流行は例年1月から始まり、ピークを迎えるのは2月初旬から中旬にかけての厳冬期だ。
 県は地域のかかりつけ医などが相談、診療、検査を担う「診療・検査医療機関」の指定を進めている。12月1日現在、県内約1500の医療機関の約2割、291カ所で、300カ所以上に増やす方針だ。
 県医師会によると、指定医療機関は感染防止策として、発熱患者の入り口や診療場所を別にして動線を分けるほか、屋外にテントを張ったり、駐車場の車の中で待機してもらったりして検査する。診療場所や動線を分けられない施設は、発熱患者を昼休みや時間外に診るなどして対応する。
 検査は基本的にインフルとコロナ両方を実施。インフルは数分~10分で結果が判明。コロナは唾液や鼻の粘膜を採取して長崎大学病院や民間検査機関などに送って翌日から数日後には結果が分かる。かかりつけ医などが診療・検査医療機関でなければ、県内八つの2次医療圏に設置しているドライブスルー方式の地域外来・相談検査センターを受診する。
 課題は受診の前に電話で相談する方法の周知だ。患者は直接病院を訪れることが多く、ある医師は「今までフリーアクセスだった。習慣を変えるのは難しい」と心配する。県医師会は県と啓発チラシを作成し、「まずかかりつけ医かコールセンター(受診・相談センター=電0120.409.745)に電話して受診方法を聞き、指定された時間に指定された施設をマスク着用して受診してほしい」と呼び掛けている。

唾液の検体を採取する容器

© 株式会社長崎新聞社