【社会人野球】コロナと戦う医療従事者のため… 日本新薬の快進撃は4強で止まる

準決勝でNTT東日本に惜敗した日本新薬ナイン【写真:鳥越涼芳】

西川が1失点完投も打線の援護なし

2日に東京ドームで行われた第91回都市対抗野球大会準決勝第2試合で、7年連続37回目の出場の日本新薬は、0-1でNTT東日本に惜敗した。守り勝つ「新薬野球」で4強入りを果たしたが、打撃面の課題も浮き彫りになった。

「力の差はなかったと思うが、1球に対する執着心、勝ちたい気持ちは相手の方が上だった」。今年1月に監督に就任し、新指揮官としてチームを率いた松村聡監督は淡々と振り返った。

松村監督はかつて9年間捕手として日本新薬でプレー。現役を引退し、2007年までコーチを務めた後、昨年まで社業に専念し、MR(医薬情報担当者)として医療従事者に接してきた。

それだけに、今年のコロナ禍で「現場の苦労はよくわかる。野球で少しでも元気になれるように、笑顔になれるように、明るい話題を届けられるようにとやってきた」。実際、今大会で勝つたびにSNSを通じ、医療従事者や同僚社員から100件を超える祝福のメッセージが届いたそうで、ベスト4入りを「喜んでもらえたのではないか」と穏やかな笑顔を浮かべた。

現役の野球部員が医師らと直接関わることはないが、同僚社員を通じて話を聞き、過酷な医療現場は常に身近にあった。社員が医師らに会うことができず、薬剤の情報を提供できないジレンマに悩まされた時期もあったという。そんな中で「新薬野球」の躍動は、多くの医療従事者の背中も押したのではないだろうか。

「1つ上のレベルになって、来年戻ってきたい」と松村監督

もっとも、悲願の「黒獅子旗」獲得へ向けて、チームの課題もはっきりした。右の西川大地投手、左の榎田宏樹投手の2枚看板を中心にした守りの野球で勝ち進んだが、打線が振るわなかった。この日も、相手先発の大竹に6回1死までノーヒットに抑えられ、結局、熊谷とのリレーの前に2安打零封負けを喫した。

一方、先発の西川は、127球4安打1失点完投も報われなかった。振り返れば、唯一失点を喫した4回が悔やまれる。1死から丸山の左前打、下川の犠打で得点圏に走者を進められると、続く4番・火ノ浦に四球、5番・笹川に死球と突然制球を乱した。満塁の窮地で桝澤に甘いカットボールを左前適時打された。

「点は取れなかったが、最後まで味方を信じて投げることができたかなと思う」と言う西川だが、「火ノ浦選手にはカーンと長打を打たれそうな、いや~な感じがした。相手に押されたということ。力不足です」と肩を落とした。

松村監督は「課題は(打撃面と)はっきりしている。1つ上のレベルになって、来年戻ってきたい」という。多くの医療従事者もそれを心待ちにするはずだ。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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