2020年はヤリスやフィット、しかも年の瀬に日産から新型ノートが登場とくれば、今年は国産コンパクトの当たり年であった。しかも後発なだけに新型ノートは先進安全装備にしても、電動化にしてもライバルよりかなりリードしているという。一体新型ノートはどれほど進化したのか? さらに買いグレードも教えます!>>
新型ノートはe-POWERのみで勝負だ
2012年にデビューした日産 新型ノートは、2016年のマイナーチェンジを機にシリーズ式ハイブリッドのe-POWERモデルを追加。すると人気は一気に爆発。2017〜19年において国産コンパクトカー販売台数NO.1の座につくなど、日産のドル箱的存在になっていた。
そんなノートが8年ぶりにフルモデルチェンジ。なんと、純ガソリン車を廃止し、自慢の電動車=e-POWERのみの展開という勝負に出たのである。そんな新型ノートに、日産のグランドライブというショートテストコースで短時間ながら、初試乗することができた。
全長は縮小も、犠牲はなし! ほど良いサイズに
新型ノートでまず注目したいのは、ボディサイズ。先代の全長4100×全幅1695×全高1525mm、ホイールベース2600mmに対して、新型は全長4045×全幅1695×全高1505mm、ホイールベース2580mmと、全長で55mm、ホイールベースで20mm短くなっている。
実は、新型ノートはルノー・ルーテシアとプラットフォームを共用するのだが、ひと回り小型化されたのは、ルノーとの大人の事情……ではない。
開発陣によれば、先代ノートは全長が長すぎて見え、運転がしにくそうな印象をユーザーに与えていた反省があり、今回、思い切ってリヤオーバーハングを中心に、あえてコンパクト化したのだという。
もちろん、それでも居住性、荷室の容量、使い勝手には十分に配慮した、ということである。
結果、メイングレードであるXの16インチタイヤ装着車でクラス最良となる最小回転半径4・9mを実現。いい意味でのダウンサイジングと言えそうだ。
室内はキックスより上? 見た目だけでも買いの一台
2021年にも投入される予定のクロスオーバーピュアEVのアリアにも通じる、新型ノートのエクステリアデザインもヒットの予感、むんむんである。
スタイリッシュさ、質感の高さ、そこはかとなく流行りのクロスオーバー感ある下半身、そして見せかけだけではないフロントバンパー左右の空力スリット、Xグレード用の標準16インチエアロフルホイールカバー(スチールホイールである)のカッコ良さなど、パッと見の商品力の高さは文句なし。
後席は狭くなった! だが必要十分なスペース
インテリアにしても、こう言ってはなんだが、キックスとは別物のデザイン性、質感の高さがあり、収納面でも一切手抜きなし。新しさと使い勝手の良さを見事に両立している印象だ。
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ちなみに全長、ホイールベースの短縮の影響をほぼ唯一受けているのは後席部分で、そのニースペースは、身長172cmの筆者のドライビングポジション(シートリフターは最下端)背後に座って、ニースペースは先代が広々すぎる約270mmだったものが、新型は約200mmに減少(頭上方向はほぼ変わらない120mm)。室内長で見れば-35mmのはずなのに、いったいどうして!? だが、その理由は前席のシート位置にある。
先代に対して上下方向のリフター量が増え(30mmから70mmに)、筆者が好む最下端位置がより低くなり、後席に座った筆者の膝頭から水平に伸ばしたニースペースを計測した場合、後傾したシートバックのより高い位置で計ることになってしまうからだと推測できる。
新型ノートの名誉のために言っておくと、ニースペース約200mmは、コンパクトカーとして十分に余裕ある数値と言っていい(アクア160mm、マツダ2 105mm、ヤリスクロス115mm、キックス155mm)。
また、新型の後席は1段階のリクライニング機構を新設定。先代同様、足が引けないのは降車性で不利だが、大人4人が無理なくドライブを楽しめる室内空間であることは間違いない。
全長、ホイールベース短縮の影響をほぼ受けていないラゲッジスペースは奥行約660mm、幅1025mmと、先代の奥行約670mm、幅955mmに対して、幅方向を拡大。コンパクト化されてもラゲッジの使い勝手(容量)はむしろ向上しているのである。
心臓部の進化で高効率化!ワンペダルも超自然に
もちろん、e-POWERも進化。第二世代となり、発電用の1.2リッターエンジンに組み合わされるフロントモーターにかかわるユニットは40%の小型化、30%の軽量化を達成。バッテリー容量1.5kWhは先代と変わらないものの、EM47と呼ばれるモーター(先代はEM57)は116ps/2900rpm〜28.6kg-m/0-2900rpmとなり、先代に対して出力で約6%、トルクで約10%向上している。
さらに、バッテリー残量に余裕がある場合、極力、発電をしない(エンジンを始動させない)制御も新たに採用されている。
減速が“フツー”に! 苦手だった人もコレなら文句なし
e:POWERモデルの、充電不要の電動車であることとともに、e-POWERモデルの大きな特徴として挙げられるのが、ワンペダル走行だ
つまり、ブレーキを踏まずに、アクセルオフでブレーキングに匹敵する減速力が得られるアレである。
ただし、これまでのワンペダルによる減速Gは、好みが分かれたとも言える。そう、ギューっとした制動感、減速感によって体が前後に振られるのに違和感があり、クルマ酔いしやすく感じた人もいたはずである。
が、新型は、「SPORT」「ECO」「NORMAL」の3種類のドライブモードとなり、その特に力強い加速力が得られる「SPORT」と、デェフォルトの「ECO」モードに、Dレンジ、Bレンジを組み合わせることで得られるワンペダルによる減速Gを、より自然に制御。
また、SPORTとECOモードにクリープを設定し、駐車場などでの速度調整のしやすさ、走りやすさも実現しているのだ。
コーナー手前の減速も! プロパイロットもナビ連携で超絶進化
新型ノートのXグレードのみにOP設定されているプロパイロットの進化も目覚ましい。
スカイラインではプロパイロット2.0として、高精度3Dマップと7個のカメラ、ソナーを採用することで、ナビ案内中、ACC(アダプティブクルーズコントロール)の弱点でもあるカーブ、料金所前での自動速度制御を実現していた。だが、新型ノートのプロパイロットは1.5バージョンと言えるもので、3Dマップは使っていないものの、GPS、地図データとカメラ&レーダーによって、高速道路上でのカーブ手前減速制御(制限速度まで下げるイメージ)、標識の読み取りによる速度制御を”廉価に”可能にしているのだから画期的である。
電動パーキングブレーキやブレーキオートホールド機能に加え、高速道路上での渋滞追従機能も進化。これまでは停止後、3秒で追従走行がカットされてしまったのだが、新型は追従再開機能が30秒まで延長。プロパイロットの基本的な使い勝手(ACC)もより実用的になっているのである。
EVっぽさマシマシ! 気になるエンジン音はほぼなし
さて、そんな新型ノートのXグレードを走らせれば、まずは、当たり前だが、8年分の進化は明白。言ってみれば、2世代分、新しい。
先代はe-POWERをもってしても、基本設計の古さが乗り心地や操縦安定性、エンジン、静粛性などで目立ち、e-POWER頼りのコンパクトカー!? でもあったのだ。
あくまで路面のいいテストコースだけの走行であり、厳密な乗り心地の評価に関してはリアルワールドの試乗を待ってとなるが、ボディ剛性30%UPのルノー共用次世代コンパクトカー向けプラットフォームがもたらす、新型の乗り心地のしっかり感、スムーズライド、フラット感は確認できた。
ステアリングの舵の効き、カーブでの安定感もなかなかだ(前席背もたれのサポート性は今一歩だったが)。
出足はもちろん、モーター走行だ。そこからも、EV走行を一段と粘り強く行ってくれる。さらにエンジンが始動し、発電している間の静かさも、大きく進化した部分。登坂路、山道を模したコースでアクセルペダルを深く踏み込むような場面でも、エンジンの高周波ノイズが抑えられ、終始、電動車らしい静かな走行が味わえたのである。
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積極的にワンペダルしたくなる仕様に
気になるe-POWERのワンペダル走行に関しては、様々なモードを試したが、特に約60km/h以下での日常域のワンペダルによる減速感が文句なくスムーズに、滑らかになっていた(そうした制御に変更)。
実は、個人的にワンペダルによる減速感が好きではなく、e-POWER車に乗っても、ワンペダルによる減速G制御がないノーマルモードで走ることも多かったのだが、新型ノートのワンペダルなら、ドライバー自身だけでなく、同乗者でも、減速Gに大きな違和感を覚えずに済むはずだ。
買いはXグレード一択! それ以外見ちゃダメ!
最後に、新型ノートのグレード構成だが、ズバリ、一般ユーザーは、WLTCモード燃費28・4km/LのXグレード以外は忘れていい!
そもそも、これからの時代のクルマに不可欠となる”つながる”日産コネクトナビ、プロパイロット、SOSコールはXグレードにしかオプション設定されていない。
もっとも廉価なSはズバリ、法人向け(レンタカー含む)。装備が簡素なのにSより高い価格設定の、WLTCモード燃費29・5km/LのFは、燃費向上のために重量のかさむ装備をそぎ落とした燃費スペシャルグレードだ。すでに述べたように日産コネクトナビ、プロパイロット、SOSコールは選べず(S、Fグレードともに自動ブレーキなどの基本的な安全装備は付く)、一般ユーザー向けとは言い難い。
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余計なお世話としては、Xグレードを買っても、オプションのアルミホイールを選ばず、標準のガンメタ色16インチフルホイールカバーのままで乗るべきだ。
そのほうがタイヤ&ホイールが大きくスタイリッシュに見え、デザイン的にも新型ノートにマッチし、カッコいいと、個人的には思えるからである。
いずれにしても、このクラスでもっとも電動車としてのキャラクターが強く、それでいて、日産コネクトナビ、プロパイロット、アラウンドビューモニターなどコミコミで、200万円台で手に入るのだから、大ヒットすること間違いなしだろう。
【筆者:青山 尚暉/撮影:茂呂 幸正】