耐震等級とは?物件ごとに異なる地震に対する性能を知ろう

地震の被害が多い昨今では、「耐震等級」という言葉を耳にしたことがある方も多いでしょう。安全な家で長く住み続けるためにも、地震に強い家選びが重要です。この記事では、耐震等級の概要や、耐震等級が高い家を建てるためのポイントなどを詳しく解説します。

耐震等級とは

耐震等級は、地震に対する建物の強度を表す指標です。耐震等級は1〜3までに分かれていて、数字が大きいほど耐震性能が高く、地震に対する構造躯体の倒壊や崩壊の可能性を軽減できるとされています。

耐震等級は品確法によって定められています。品確法は「住宅の品質確保の促進等に関する法律」の略称で、住宅性能表示制度や新築住宅の10年保証などについて国土交通省が定めた法律です。建物に関する法律というと、建築基準法を思い浮かべるかもしれませんが、品確法では壁の量や結合部、基礎などについて、より詳細な検討項目があることが特徴です。

建物の耐震性を左右する要素

地震などによる揺れに対する建物の耐震性は、以下の4つの要素によって大きく左右されます。
・建物の重量
・耐力壁の多さ
・耐力壁や耐震金物の配置場所
・床の耐震性能
それぞれ詳しく解説します。

建物の重量

日本の家屋は大きく分けて、鉄筋コンクリート造、鉄骨構造、木造の3種類に分かれます。この3種類では、鉄筋コンクリート造の建物がもっとも自重が大きく、木造が一番小さく軽くなります。地震エネルギーは建物の重量に比例するため、重くなるほど地震による影響を受け揺れやすいことが特徴です。

そのため大きさが同じ3種類の建物があったと仮定すると、鉄筋コンクリート造の建物の揺れが一番大きく、木造がもっとも揺れません。ただし鉄筋コンクリート造の建物は、地震の際の揺れは大きくなりますが、構造的には倒壊しにくいことが特徴です。

耐力壁の多さ

耐力壁(たいりょくかべ)は、建物が横に揺れる力を支える壁のことです。地震では縦揺れと横揺れがありますが、縦揺れは柱が、横揺れは壁が支えます。横揺れに強い建物にするために、通常の壁よりも頑丈に作られたのが耐力壁です。

とくに木造住宅は、鉄筋コンクリート造や鉄骨造と比較すると結合部分が弱いため、耐力壁を適切な量とバランスで配置することが建築基準法で求められています。必要な耐力壁の数は「壁量計算」によって割り出しますが、建物の面積や階数が多いほどたくさん必要になることが特徴です。

耐力壁や耐震金物の配置場所

建物の耐震性能を上げるためには、耐力壁のほかに耐震金物も使用されます。耐震金物とは、木造構造の弱点でもある結合部を補強するための金具です。筋交いと呼ばれる柱と柱の間にななめに入れる部材を、柱としっかり固定する筋交いプレートや、柱と土台、柱と梁(はり)をしっかり固定するホールダウン金物などがあります。

耐力壁や耐震金物は、むやみやたらに数多く入れればいいわけではありません。重力など垂直方面に動く力、地震による縦揺れや横揺れの力などを考慮して、適正な位置に正しく、そしてバランスよく配置することが大切です。

床の耐震性能

建物の耐震性能を高めるためには、耐力壁が要となりますが、床の耐震性能も大切な要素と考えられています。壁と床はつながっているため、耐力壁にかかる揺れをバランスよく受け流す必要があるためです。床に十分な耐力があると、家中の耐力壁に地震力をうまく分散することが期待できます。

もし耐力壁の配置バランスが悪い場合でも、床の耐震構造がしっかりしていれば耐力壁にかかる力をうまく分散してくれます。しかし床の耐震性能が貧弱であれば、耐力壁が耐える前に床が壊れてしまう可能性が考えられ、十分な耐震性能を確保できないため注意が必要です。

耐震等級の区分は3つ

耐震等級は1〜3まで3つに分かれていて、3がもっとも耐震性が高いと前述しました。それぞれどのような基準なのかを詳しく解説します。

耐震等級1

耐震等級1は、建築基準法で定められている新耐震基準を満たすレベルとされています。新耐震基準は、1978年に起きた最大震度5を記録した宮城県沖地震で22名の人的被害が出たことを教訓に、それまでの耐震基準(旧耐震基準)を見直す形で1981年6月から施行されました。

耐震等級1は、数百年に1回しか発生しない程度の震度6〜7程度(阪神・淡路大震災、熊本地震クラスの揺れ)に対しても倒壊・崩壊しない、また数十年に1度程度発生する震度5程度の地震では住宅が損傷しない程度の耐震性があるとされています。耐震等級1は、建築基準法で必ず満たさなければならないと定められている「最低限」の基準です。震度6〜7程度で「倒壊・崩壊」はしない程度とされていますが、「損傷」を受けることについては許容されています。倒壊や崩壊をしなくても、損傷した場合には、補修や建て替えが必要になる可能性があることには留意してください。

耐震等級2

耐震等級2は、耐震等級1の1.25倍の地震に耐えられる強度があるとされています。税金などに優遇措置の多い「長期優良住宅」に認定されるためには、耐震等級2以上でなくてはなりません。学校など災害発生時の避難場所となる公共施設については、耐震等級2以上であることと規定されています。

耐震等級3

耐震等級3は、耐震等級1の1.5倍の耐震強度があるとされています。現在の耐震等級のうちもっとも高いレベルで、災害発生時の復興拠点となる消防署や警察署の多くは耐震等級3で建てられています。ただし耐震等級3であっても、しっかりと構造計算がされているかが重要です。

耐震等級が高い家を建てるためのポイント

地震が多く発生する日本では、耐震等級が高く揺れに強い家づくりをすることが大切です。ここからは耐震等級が高い家を建てるために、押さえておきたいポイントを紹介します。

壁を強化する

建物には、自重や地震の縦揺れなどによる垂直方向からの力、地震の横揺れや台風の強風などによる水平方向からの力がかかります。垂直方向からの力に対しては、壁とともに柱も支える役割を果たしていますが、水平方向からの力に対して大きな役割を果たすのは壁であるため、強化することが重要です。

建物の横揺れを支える壁を耐力壁ということは前述しましたが、耐力壁で代表的なのが筋交いを使った壁です。筋交いは柱や梁(はり)、土台、床で構成された四角い枠の内側に、ななめに渡す補強材のことです。筋交いがなければ、横からの力が加わると、四角は平行四辺形になるなど歪みが生じてしまいます。そのため建築基準法では、木造住宅に対して一定の割合で筋交いを入れることが決められているのです。

鉄筋コンクリート造の場合は、建物を支える耐力壁と非耐力壁が混在していて一見見分けがつきません。しかし耐力壁は鉄筋の量や壁の厚みが異なります。耐力壁は、建物の重心や剛心(強さの中心点)の位置を考慮しながら構造設計を行い、量だけではなくバランスを考えて配置することがもっとも大切です。

床と屋根を強化する

耐震というと、耐力壁ばかりが注目されがちですが、床や屋根も見落とせません。地震の力は重力のあるところに作用しますが、建物のなかでとくに重力があるのは床と屋根です。床と屋根に作用した地震力は、耐力壁を伝って基礎や地盤に流れます。一方、外壁に作用した風などによる圧力は、外壁材や壁下地材を通して柱に作用し、土台や2階の床、屋根などから耐力壁を介して基礎や地盤へ流れます。耐震性能を上げるためには、壁と同様に床と屋根の水平構造を強化することが大切です。

柱と梁の接合部を強化する

柱と梁がつながる部分を接合部といいますが、地震などで大きな力が加わると抜けやすいため、抜けないように構造金物で強化すると耐震性を高められます。接合部については、2006年までは建築基準法でも「釘その他金物で接合」と記載されていただけですが、現在の耐震基準では壁の強度に応じた引き抜け力を計算して、必要とされる金具を施工しなければなりません。

金具には筋交いプレートや羽子板プレートなど、使用箇所に応じていろいろな種類が用意されています。耐震性を高めるというと、耐力壁にばかり注力する傾向がありますが、耐震診断では壁の強さが強いほど、適切に接合されていなければ強さを低く評価するようになっています。

耐震等級について押さえておきたいポイント

新耐震基準法に適合していることが最低基準とされている耐震等級について、押さえておきたいポイントをまとめました。

建物は軽いほうが耐震性がいい

家の耐震性について話すとき、「軽い建物のほうがいい」といわれます。地震によって建物に働く力を地震力といいますが、地震力は「建物の重さ」に「地震層せん断係数(地震力の大きさに関係する係数)」をかけることで計算し、「何トン」といった重さで表されます。「地震層せん断係数」は係数であるため最初から決まっていて、そのため地震力は「建物の重さ」によって変化することが特徴です。重さが重いほど地震力は大きくなり、軽ければ小さくなるため、建物は地震力が小さく、つまり耐震性がよくなります。

建物の重さは、床や天井に大きな違いはありませんが、屋根や外壁は仕上げ材によって大きく異なります。たとえば屋根に瓦を乗せると、コロニアルなどのスレート屋根と比較すると約2倍、外壁に至っては、モルタル壁にするとサイディングの約3倍の重さです。建物の自重を軽くするには、素材選びが重要になります。

耐震等級3だと地震保険料が安くなる

日本は地震が多い国であるため、地震による被害に備えて地震保険の加入を検討する人が多くいます。地震による損害は、地震保険に加入していないとカバーされませんが、地震保険の保険料は、耐震等級が高いほど割引きされる仕組みです。それは耐震等級が高いほど地震による損害を受けにくいと考えられるためで、保険金を支払う可能性が低くなるほど保険料が安くなるのは、ほかの保険と変わりません。耐震等級に基づく割引きは、「耐震等級割引」と呼ばれますが、以下の通りに定められています。

耐震等級割引を受けるためには、「住宅性能評価書」や「耐震性能評価書」など、耐震等級を証明する書類が必要になります。必要となる書類は保険会社によって異なる場合があるので、直接確認するようにしてください。

耐震等級は建築時に選べる

注文住宅で家を建てるときには、ハウスメーカーや工務店があらかじめ耐震等級の基準を設けているケースが多いですが、施主が「耐震等級を上げてほしいと伝えることにはなんの問題もありません。住宅の建築にかけられる予算のなかで、耐震性能を上げることと、住みやすさのどちらを重視するのかは施主の自由です。そのためには、耐震等級についての知識を備えておく必要があります。とくに税の優遇を受けられる長期優良住宅制度などを活用したい場合には、最初に要望をしっかりと伝えるようにしましょう。

耐震等級が不明な家もある

耐震等級が定められたのは2000年のことなので、それ以前に建てられた建物については耐震等級が不明なケースが多くあります。1981年6月1日以降の建築であれば、新耐震基準が定められた後になるため耐震等級1の条件を満たしていると見なせますが、それ以前の住宅となるとどの程度の耐震性能があるのかはわかりません。

耐震等級1の物件も多い

とくにマンションにおいては、耐震等級としては一番低い等級1の物件が多く見られます。これはマンションの多くが鉄筋コンクリート造であり、耐震等級を上げるためには柱を太くしたり壁を厚くしたりする必要があるためです。太い柱や厚い壁は、耐震性能は上がりますが、窓や開口部が少なくなるため採光や通風、間取りが悪くなり、居住性が損なわれてしまう可能性があります。柱を太く、壁を厚くするためには多くの鉄筋やコンクリートが必要になり、材料費がかさむことも、マンションに耐震等級1の物件が多い理由のひとつです。

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