コロナ禍で「スーパー台風」が発生したフィリピン 緊急援助活動を開始

台風による土石流で土砂に埋もれた家屋 © MSF

台風による土石流で土砂に埋もれた家屋 © MSF

11月1日、2020年最強の台風の一つがフィリピンを襲った。台風19号「コーニー」の勢力は上陸直前に、台風の中で最大級、日本で「スーパー台風」と呼ばれる強度となった。

国境なき医師団(MSF)は調査チームを被災地に派遣。緊急援助活動を開始した。しかし、そこには新たな危機が迫っていた——。 

傷跡が残る中、新たな台風が

台風19号は、マニラの南東約300kmに位置するビコール地域を中心に広範囲に被害をもたらした。その10日後、さらなる災難が地域を襲った。11月11日と12日に、台風22号「ユリシーズ」が上陸したのだ。

「調査や援助の作業を中断して、台風22号の通過を待たなければなりませんでした」とフィリピンでMSFの活動責任者を務めるジャン=リュック・アングラードは話す。

2つの台風を受け、低地の町は激しい土石流によって破壊された。

「いくつかの村では、自分たちの村が土石流に襲われたのは生まれて初めてだと地元の人は話しています。調査中に大きな岩の上を歩いていたところ、そこはかつて家があった場所だと言われ、ショックを受けました」と、アルバイ州でMSFの緊急対応チームリーダーを務めるレイ・アニセテ医師は言う。

アルバイ州のほとんどの町で破壊が見られたが、早めの避難指示によって、人命の損失は最小限に抑えられた。11月下旬時点で、2つの避難所に1037人が避難している。地域や家の損壊度によっては、長期の避難が余儀なくされると考えられる。  

被災地で医療ニーズの調査を行うMSFスタッフ © MSF

被災地で医療ニーズの調査を行うMSFスタッフ © MSF

コロナ禍の緊急援助とは

MSFは緊急援助物資の配布をアルバイ州の2つの避難所で開始した。飲み水を入れるための貯水容器と、洗えるマスク2枚、手指消毒剤、フェイスシールド1人1枚を含む新型コロナウイルス予防キットで構成されている。また、新型コロナウイルスの感染予防研修に加えて、避難所スタッフ用の個人用防護具の提供も計画している。

また、大きな被害を受けたサンミゲルでは、医療援助を必要とする人を見つけ出し、診察や診療を行うアウトリーチ活動を実施。さらに、約2500世帯の飲み水確保のため、浄水剤と貯水容器の配布を開始した。

アルバイ州で感染予防・制御策を担う看護師アレン・ボルハはこう話す。「新型コロナウイルスは3月以降、フィリピンの人びとの生活に深刻な影響を与えてきました。避難所では特に衛生状態をよくし、人との距離を保つことが流行を防ぐために重要です。医療従事者と避難者は、感染予防で重要な役割を担っています」 

大きな被害を受けたサンミゲル島でのアウトリーチ活動 © MSF

大きな被害を受けたサンミゲル島でのアウトリーチ活動 © MSF

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