55歳パート主婦です。今から扶養を外れて働くメリットありますか?

今年も早いもので年末調整の書類提出を終えて、来年2021年の働き方についてどうしようかと頭を巡らす方もいるのではないでしょうか。特に扶養内に収入を抑えて働く主婦にとっては悩ましい時期でもあります。


「扶養内で働く」を優先したいAさんに勤務時間を増やす打診が

私は、日頃から相談専門のファイナンシャルプランナーとして活動をしています。その中でもパートで働く主婦の方から扶養と働き方について相談される機会がよくあります。

先日、コールセンターでパート勤務をされているAさんから相談をいただきました。Aさんは現在55歳、夫の扶養内で働くことを最重視されていました。ところがコロナ禍で子育て中の同僚ママさんたちが出勤できなくなり、勤務先から勤務時間を増やして欲しいとの打診があったそうです。

ちなみに勤務先では、年収が106万円になると勤務先の社会保険に加入することになるため、夫の扶養を外れることになります。Aさんは夫と話し合い、勤務先へはなんとか今年はこのまま扶養内で働くことを了承してもらいました。

しかし、最近になって、改めて来年からの勤務時間について再考して欲しいと言われてしまったのです。このような状況から、どうするのが家計全体からみてベストか早急に相談したいと連絡がありました。

扶養内にこだわる理由は「損をしたくない」

はじめに家族のことなどを伺いながら雑談を進めていくうちに状況がつかめてきました。Aさんの夫は3つ年上の58歳会社員、定年は60歳、65歳までは雇用継続制度で働ける環境にあります。

夫が会社員のうちは扶養内で働くことで、Aさん自身で国民年金や健康保険の保険料を払うことなく加入できます。しかし、年収106万円に到達するとその恩恵を受けられなくなり、手取り収入が減ることになるので損だと感じる、と。たしかにAさんがおっしゃる通りです。

例えば年収106万円になるとAさんが自分で負担する年間の社会保険料は約15万8000円(東京都・協会けんぽ保険料で計算)、その他に税金もかかります。ざっと計算するだけでも手取りの目減りは16万円以上にもなります。

あと5年間、扶養でいられるのか?

2020年11月現在、年収106万円で扶養を外れるのは原則として正社員500人超の企業で働く場合になります。企業規模については、順次改定されて2024年10月には正社員50人超まで範囲が狭められることが決まっています。

ということは、Aさんが扶養内にこだわるのであれば、50人以下の企業にパート先を変えることも一つの解決策と言えます。そうすれば年収130万円までは扶養内で働けるというおまけもついてきます。

しかし、今の職場は居心地がよくて人間関係にもストレスがないので、職場を変えるのは最終手段にしたいとのことでした。確かに職場の居心地も働く上では重要ポイントですから、他の方法も考える必要があります。

出発点に戻り確認したことは「扶養でいられる期間」についてです。58歳の夫は定年まであと2年、その後雇用継続になるとのことですが63歳まで確実に働かれるのでしょうか?

というのもAさんは、60歳まで国民年金に加入する必要があり、つまり、それには夫があと5年厚生年金に加入していることが前提となります。具体的には夫が63歳まで会社員であればAさんは被扶養者として保険料の負担なく国民年金に加入できるのです。

夫の雇用継続は1年ごとの契約ということですから、仮に63歳前に退職をすればAさん自身で保険料を支払うことになります。夫にいつまで働くか確認すると、わからないとのことでした。

夫の先輩たちをみていると65歳前に契約更新をしないで辞めてしまったケースも少なからずあるので、その時になってみないとわからないというのです。

「損して得とる」の考え方もできるかも?

たしかにAさんの夫にしてみれば、数年先のことなんか確約できない、という思いもあるのでしょう。新型コロナ禍で働き方も含めて社会が激変するのを目のあたりにするとこれからどうなっていくか不透明と感じるのはごく自然なことです。

夫が何歳まで働くかにやきもきするくらいであれば、Aさんが今の職場で働き続けた場合の損得勘定を考えてみればよいのです。

まずは社会保険料の負担についてです。年収106万円で約15.8万円(年間)の支払いと前述しましたが、夫が会社を辞めた場合には否応なく負担することになります。

仮に年収105万円で勤務先の社会保険に加入せずに国民年金と国民健康保険の保険料を支払うと約25万4000円(年間、令和2年度・東京都での試算)になるのですから、勤務先で加入しておけば年間約10万円の負担減と考えることもできます。

さらに、勤務先の健康保険には所得補償として利用できる傷病手当金もあります。これは国民健康保険にはない補償です。また、厚生年金に加入することで老後の厚生年金受給額を増やすことも可能です。年収106万円で65歳まで10年間働いた場合には年間約5万8000円のプラス効果があります。

女性の平均寿命87歳まで受け取った場合には約127万6000円ですからそれなりの金額になります。Aさんが確実に扶養でいられる期間は夫が60歳までの2年間と考えると、来年から扶養を外れて勤務先の社会保険に加入したとしても損ではないかもしれません。

逆に厚生年金の受給額アップなどプラス面があることは将来の得でもあるからです。ここまででAさんの気持ちはほぼ固まったようです。

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